「目撃者」なき異例の祭典 何が「レガシー」となるのか

西日本スポーツ

【コラム】

 現地で取材した過去2大会とは違い、テレビで見た夏の五輪は違和感ばかりだった。「復興五輪」を掲げた東京大会で、全競技に先駆けて実施されたソフトボール。福島の人たちの笑顔をスタンドで見ることはできなかった。サッカー女子日本代表が初戦に臨んだ札幌も無観客。選手や関係者と国民を遮断する「バブル方式」で運営される異様な五輪がスタートした。

 5年前のリオデジャネイロ大会。経験したことのない熱狂を体感した。サッカー男子決勝で、ブラジルが初の優勝を決めた瞬間だった。サッカー大国の威信を誇示した金メダル。鳴りやまない凱歌(がいか)に、国民は自国開催の五輪の成功を確信したことだろうと感じた。

 2012年ロンドン大会の開会式では、ヘリコプターから降下する演出でエリザベス女王が登場。悲鳴のような大歓声が、祭典の序曲に聞こえた。陸上男子100メートルではウサイン・ボルトが五輪新で2連覇を達成。「目撃者」となった観衆の高揚感に満ちあふれた顔は忘れることができない。

 1964年に続く東京大会は緊急事態宣言の真っただ中で開かれる。無観客はやむを得ない。ただ、祭典を語り継ぐべき国民の顔が見えない五輪は残念でならない。有望選手を発掘・育成する「福岡県タレント発掘事業」からは修了生が初めて出場するが、観戦予定だった小中学生の現役生が会場に足を運べなくなったと聞いて心が痛んだ。

 招致の時から再三使われた「レガシー(遺産)」という言葉はすっかり耳にしなくなった。バドミントン、卓球、陸上、柔道…。2013年に開催地が東京に決まって以来、日本は地道に競技力を高めてきた。大会の記憶が泡のように消えてしまわないためにも、選手たちの躍動が「レガシー」となることを信じている。(運動部デスク・向吉三郎)

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