「航平を甘やかすなよ」 内村航平の恩師がコーチに残した最後のメッセージ

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 団体総合、個人総合、種目別の決勝進出を懸けた男子予選の種目別鉄棒に臨んだ内村航平(ジョイカル)は落下が響いて13・866点にとどまり、8位までの決勝進出を逃した。

 内村の専属コーチを務める佐藤寛朗氏の手元には1個のUSBメモリーがある。中身は高校時代の内村と佐藤コーチの練習風景を収めた動画。東京・朝日生命クラブで2人を指導し、2018年7月に51歳で亡くなった小林隆コーチに手渡された。懸垂やジャンプ、あん馬を使ったトレーニング姿が写っている。

 小林コーチは胃がんを患い、大阪で闘病生活を送っていた。亡くなる直前、1人で見舞いに訪れた佐藤コーチにUSBを渡し、伝えた。「航平を甘やかすなよ」。それが最後に託されたメッセージとなった。内村の1学年下の佐藤コーチは「年下の僕が甘やかすと、朝のきついトレーニングもやらなくなってしまう。『年齢を重ねても、トレーニングが大事だぞ』という意味と思う。2人にとってすごく大切なもの」と受け止めた。

 海外で指導者経験を積んだ小林コーチの指導や表現は独特だった。例えば、鉄棒。基本技の車輪は「お玉のように」と教えられた。「大きく、すくうように」というイメージだ。高校時代の2人は理解しきれず、「何言ってるんだ」と話していたが、内村の美しく雄大な演技の根幹をなす。

 手渡された動画を参考にしながら、2人は基礎練習のメニューを組み立てた。当時の練習を洗い出して取捨選択や改良を加えた。「(高校生当時は)『きつい』しかなかった。でも、世界で戦える技術としてベースになっている。ありがたいなという気持ち」。4個目の金メダルに届かなかったが、五輪切符をつかみとった教え子たちの挑戦を天国の恩師はたたえているはずだ。(伊藤瀬里加)

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