「好きで始めた柔道が本当に嫌いになった」大野将平、暗闇で一筋の光を探した道のり

西日本スポーツ

 ◆東京オリンピック(五輪)柔道男子73キロ級 決勝(26日、東京・日本武道館)

 畳を下りると、ようやく大野の表情が少し緩んだ。「リオデジャネイロ五輪を終えて苦しくて、つらい日々を凝縮したようなそんな一日の闘いでした」。5試合を制しての2連覇。来年2月に30歳となる男はリオ五輪よりも強くなったことを証明した。

 かねて口にする「勝負に絶対はないが、絶対には近づける」との思いを体現した。6月の世界選手権覇者、シャフダトゥアシビリとの決勝は9分26秒の死闘だった。接近戦を狙う相手に真っ向勝負。延長で先に指導2を受けたものの内股、大外刈りで攻めた。最後は支え釣り込み足で技ありを奪い、力と意地で勝った。

 勝負を終え、日本武道館の天井をじっと見つめた。「私も29歳。ベテランと呼ばれるところまできた。聖地の日本武道館で試合ができることは少なくなっていることは理解している。この景色を目に焼きつけておこうと」

 泰然自若とした印象の大野だが、リオ五輪を圧倒的な内容で制すると待っていたのは連覇への重圧だった。「誰かのまねをできるレベルの話ではない。真っ暗なところで一筋の光を見つけるために歩んだ」。苦しかった。「好きで始めた柔道がリオ以降は本当に嫌いになった。何のために稽古をしているんだろう」

 もがきながらも懸命に前を向いた。メンタル面で重要視したのは心理学で研究されている「防衛的悲観主義」だった。物事を悪い方向に考え入念に準備をする考えだ。6月に男子日本代表の金丸雄介コーチから紹介され、天理大の先輩で五輪3連覇の野村忠宏氏からも「不安や怖さを抱えて闘うのは悪いことではない」と聞き、焦らず調整できるようになった。あえてマイナスに考えることで冷静に課題と向き合えた。

 コロナ禍で1年延期となった晴れ舞台で再びつかんだ栄冠。「(開催に)賛否両論があることは理解している。ですが、われわれアスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば光栄に思う」。自身と向き合い続けた希代の柔道家は胸を張った。「まだ私の柔道人生が続いていく。今後も自分を倒す稽古を継続してやっていく」と男女混合団体に向けて意気込んだ。(末継智章)

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