時間変更、変わらぬ猛暑 沿道の「密」と大声…「マラソン札幌開催」とは何だったのか

西日本スポーツ 長浜 幸治

 夏季五輪の最後を飾る種目として恒例の男子マラソンは8日に札幌市で行われる。マラソン、競歩は暑さへの懸念から、2019年10月に会場が東京から札幌に変更される決定がなされたが、皮肉にも札幌は記録的な暑さに見舞われた。札幌での取材を振り返る。

 4日、福岡から北海道に入った。新千歳空港から札幌市内に向かう電車が大雨で運行見合わせとなり、急きょタクシーに乗り込んだ。「あしたから本番なのにね」。男性運転手はそうぼやきつつ、言葉を続けた。「今年の暑さは異常。こんなことなら東京でやっても一緒だったんじゃない」

 同日の地元紙には「道内猛暑日12日連続」の見出し。観測史上最長記録を更新したという。札幌市も15日連続で真夏日を観測。毎日、宿泊していたホテルから徒歩10分ほどの競技会場に歩いただけで、ハンカチは汗でぐっしょりとなった。

 国際オリンピック委員会(IOC)が主導し、マラソン、競歩の開催地を変更したのは1年延期が決まる前のことだった。20年の大会開催まで1年を切ったタイミングでの異例の対応は現場に困惑をもたらした。「正直、一選手としてはショック。せっかく練習や準備をしてきたのに、と感じた選手は少なくないと思っている」。レース前にオンライン取材に応じた競歩のある選手は言葉を選びながらも本音を明かした。

 競技が始まると選手たちはやはり暑さに苦しめられた。6日午前5時半から始まった男子50キロ競歩で6位入賞した川野将虎(旭化成)は、気温30度を超えたレース終盤にコース内で倒れ込んだ。「暑さで内臓をやられた」。7日の女子マラソンは暑さを考慮し、前日の6日夜に開始時刻を1時間前倒しすることが決まった。2週間前から競技に合わせて午前2時に起床していた一山麻緒(ワコール)は、就寝間際に情報を聞かされ、「目が覚めた。がっつり寝たというより、浅い眠りだった」と明かした。

 1年延期してもコロナが収束しないままで五輪は開催。観戦自粛が呼びかけられたが、懸念された「密」も生まれてしまった。「立ち止まらないでください。自宅での観戦をお願いします」。大会スタッフが何度も観戦自粛を呼びかけたが、沿道には観客が密集。まん延防止等重点措置地域の北海道は4日、2カ月ぶりとなる300人台の感染者が確認されていたが、大声での歓声も聞かれた。

 なかばIOCの「独断」で決まった開催地変更。その意義を最後まで感じることはできなかった。「アスリートファースト」を声高に掲げていた五輪で、主役であるべき選手の思いは酌まれたのか。誰のための五輪なのかを自問自答した。(長浜幸治)

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