「私は社会のお荷物では」パラマラソン金の道下美里、視力低下の絶望から救った転機

西日本スポーツ 林 原弘

 東京パラリンピックは最終日の5日、陸上のマラソンが行われ、視覚障害T12の女子では、世界記録保持者で2016年リオデジャネイロ大会銀メダルの道下美里(44)=三井住友海上、福岡県太宰府市在住=が3時間0分50秒で制し、初の金メダルに輝いた。

 「みっちゃん」と親しまれる道下は絵に描いたような「いいひと」だ。明るく気さくで笑顔を絶やさない。その気配りは表彰式で金メダルをもらうと、まず前半の伴走を担当した青山由佳さんの首に掛けたシーンでもうかがえる。記者としても、その明るさに何度も元気をもらえた。

 そんな道下にも精神的に落ち込んだ時期があった。山口県下関市の小学4年時に遺伝性の膠様(こうよう)滴状角膜ジストロフィーを右目に発症。その後視力を失った。健常者と一緒に学んでいたが短大卒業後、左目も同じ病にかかり、光を認識できる程度になった。調理師の道を断念。現実を受け入れられず、周囲に「私は社会のお荷物では」とこぼす時期もあったという。見かねた家族に山口県立盲学校(現県立下関南総合支援学校)入りを勧められた。

 26歳で入学した同校で、ダイエットをしようと中学時代にやっていた陸上を再開。中距離をやっていたが、長距離を走った後に脈の回復が早いことに気づいた体育教師にフルマラソン出場を勧められた。実際に出場するといきなり3時間半ほどで走った。ここでマラソンランナーとしての人生が大きく動きだした。

 夫の孝幸さん(44)からは「石橋をたたいて渡るタイプ」と言われるという。「結果が出ると楽しくなるんですよ」と道下は語る。結果を出し続ける身長144センチのランナーが、歴史に名を残した。(林 原弘)

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