森の復帰にかける強い思い 担当記者が注目した「場所」は

西日本スポーツ 長浜 幸治

〈鷹番が見た〉

 ソフトバンクの森唯斗投手(29)が反転攻勢のキーマンになる!! 21日はZOZOマリンでの全体練習に参加し、キャッチボールなどで調整。20日の楽天戦は2点リードの9回に登板し、1点を失いながらもチームを12日ぶりの勝利に導き、自身も144日ぶりのセーブを挙げた。工藤監督も全幅の信頼を置く守護神にとって今季は試練の連続だった。約4カ月にわたる苦しい入院、リハビリ生活で見せてきた森の素顔とは-。

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 5月28日の左肘手術から約1カ月間の入院を経て、森が筑後のファーム施設で練習を再開した直後の7月10日だった。左肘に残った生々しい手術痕に思わずシャッターを切ると、ファインダー越しに笑みを浮かべる森と目が合った。「肘、撮ったでしょー」。こちらの考えを見透かした観察眼に驚かされたのと同時に、苦しいリハビリの中でも明るさを忘れない姿勢が印象的だった。

 プロ入りから7年連続で50試合以上に登板してきた鉄腕を襲ったのは「左肘関節の化膿(かのう)性滑液包炎」だった。聞きなじみのない診断名に、森も最初は「あまり実感がわかなかった」と困惑した。今も詳しい原因は分からず、再発の可能性は残るという。

 今後もいつ訪れるか分からない痛みへの恐怖と向き合いながら、プロ野球生活を送っていかなければならない。それでも表情に暗さはみじんもない。「また(症状が)出たらしょうがない。誰でもなり得るんで。落ち込んだ? 全然。すぐに前は向けた」。9回のマウンドに立ち続ける男の強さを垣間見た。

 「一日でも早くチームのために投げたい」。その思いは行動にも表れた。8月21日に実戦復帰した右腕は、8月31日、9月1日に香川で予定されていた3軍戦での連投テストを直訴した。「行かせてください」。同期間に2軍戦がなく、長距離移動もいとわない「おとこ気」だった。試合はチームメートの新型コロナ感染で中止になったものの、筑後で2日続けてシート打撃に登板。「最短復帰」への道を進み続けた。

 数字にこだわりのない守護神が唯一目標に掲げていた「50試合以上登板」も今季で途切れることが決まった。それでも自らを「マグロ」に例える右腕は前だけを見据えている。「何点差でも全部投げるつもりでいるし、いけと言われたら本当に何点差でもいく。連投して駄目だと言われたら、直談判しにいく」。苦難に目を背けず、正面から立ち向かう男だからこそ、チームの命運は託される。(長浜幸治)

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◆滑液包炎(かつえきほうえん) 肘や膝など骨がこすれる部分の摩擦を減らすために体内には滑液包という袋があり、クッションの役割を果たしている。この滑液包が炎症を起こし、患部に腫れや痛みを起こす。けがや感染症で発症するが、原因は不明の場合が多い。

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