元バレー代表・迫田さおりを変えた先輩の言葉「トマトが高級メロンになろうとしたって無理だよ」

西日本スポーツ

バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」

 好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げる一方、コロナ禍が続く中、スポーツの魅力を発信しようと自身の思いをつづっている。

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 バレーボール界にとって「出会いと別れ」の季節は5月の黒鷲旗が節目となります。2017年にユニホームを脱いだ私もそうでした。今年は8―9月にかけて訪れました。多くの選手の去就が報じられるたびに改めて「東京五輪」の持つ意味を考えさせられます。

 私が10年以上もお世話になった東レアローズでは、引退する選手を囲む食事会を開き、チームメートが歌で送り出してくれます。「♪これからはじまるあなたの物語♬」の歌声が聞こえた時には本当に感激しました。絢香さんの「にじいろ」でした。NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」の主題歌になったすてきな曲。前向きに生きていれば、どんなツラいことがあっても乗り越えられるという想いが込められているそうです。のちに生年月日が全く同じだと知り、ますます特別な1曲になりました。

 選手として一区切りをつけても人生は続きます。歌のように前向きに生きようと自分に言い聞かせています。ただ、このコラムを書いていることは不思議でなりません。昔から書くことが苦手で、メモも取らないタイプだったからです。

 トレーニングで目的や意識する体の部位などのレクチャーを受けると、他の選手はノートにびっしり書き込むんです。私は頭に入れたつもりだったのに、次の日には忘れていることもありました。そんな面倒くさがり屋にもコーチや先輩、トレーナーの方々は根気強く、一生懸命に手を差し伸べてくれました。私ではなく、周りの人たちが頑張ってくださったんです。

 私は決して器用な人間ではありません。後になって「あっ、できていたんだ!」と気付くことの繰り返しでした。何でも格好良く、すぐにできる人に憧れました。バレーを始めた小学生の時からずっとです。あの人みたいにできたら、もっと楽しいだろうな、と。

 高校を卒業して東レに進んだ直後は、毎日のように寮で泣いていました。それから2、3年たった頃。まだコート(レギュラー)に入る前の私を勇気づけてくれる出来事がありました。当時のキャプテンで、現在は和歌山県の国体成年女子を率いる芝田安希さんが声を掛けてくれたのです。

 「トマトが高級メロンになろうとしたって無理だよ」。才能に満ちあふれたエリートが「高級メロン」なら、高校時代に春高やインターハイにも出ておらず、全国区の強豪チーム出身ではない私は「トマト」なんです。どこにでもあって、手軽に食べられるトマト…。素直に納得できました。「なるほど、私はトマトなのにメロンなんかになれるわけないじゃん!」と。

 芝田さんの話には続きがあるんです。「メロンじゃなくても『トマトが好き』と言ってくれる人だっているんだから。リオはその人のために頑張ればいいんだよ。トマトなりにね」―。私の“不器用人生”が、おぼろげながら開けた気がしました。白いご飯と並んで、トマトは大好物なんです。芝田さんは私のことを知った上で、分かりやすく例えてくれたのでしょう。これからも誇り高き「トマト」として歩んでいきます。(バレーボール女子元日本代表)

 ◆迫田(さこだ)さおり 1987年12月18日生まれ。鹿児島市出身。小学3年で競技を始め、鹿児島西高(現明桜館高)から2006年に東レアローズ入団。10年日本代表入り。バックアタックを武器に12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪出場。17年現役引退。身長176センチ。スポーツビズ所属。

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