元バレー代表・迫田さおり 先輩・荒木絵里香の引退会見に駆けつけて感じたこと

西日本スポーツ

バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」

 好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げる一方、コロナ禍が続く中、スポーツの魅力を発信しようと自身の思いをつづっている。

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 心の赴くままに行動できた気がします。10月5日に名古屋市であったトヨタ車体の荒木絵里香さんの引退会見で、私は直接会ってお礼を伝えました。4大会連続出場となった東京五輪では女子日本代表の主将を務め、ロンドンとリオデジャネイロの両五輪では一緒にプレーさせていただきました。3歳年下の私の一方的な思いかもしれません。それでも競技人生において本当に大切な先輩なんです。

 私はコミュニケーションを取るのが苦手です。特に現役時代は一人でいた方が気持ちが楽な面もあり、休日にチームメートと食事に出掛ける機会もあまりありませんでした。意図的に距離を置いていたわけではないんです。もっとも私の返事を予想して、誰も誘ってきませんでしたが(笑)。そんな私が今回、自分から名古屋へ向かうことができたのも、東レで絵里香さんと過ごしたかけがえのない時間があったからです。

 「チームプレーは一人にしたら駄目。一人にさせてはいけないし、一人になっても成り立たないから」

 東レに入団して4、5年目。レギュラーになった頃でした。絵里香さんから声を掛けてもらいました。どんなことでも、言葉にするのは相当なエネルギーが必要です。「それじゃ勝てないよ。チームになれないよ」-。つい一人になりがちな私に直接伝えてくれた、あの言葉が大きな転機になったのは間違いありません。「私は一人じゃないんだ!   気に掛けてくれる方がいる」と、心の底から勇気づけられました。絵里香さんのためにも頑張ろうと誓ったのを覚えています。

 プレーでも寄り添ってくれました。コートに絵里香さんが立つと、良い意味で安心できました。私がアタックを打った時は、いつもすぐ近くに見慣れた顔がありました。必ずブロックフォローに入ってくれたからなんです。得点できた時は真っ先にハイタッチ-。感情を目いっぱい表に出して喜んでくれる接し方は、居心地の良いものでした。

 1時間の引退会見では「選手を味わい尽くせた」と穏やかな表情でした。途切れることがない記者さんの質問に、丁寧に応じていました。その姿を会見場の後方から見つめながら「もっとプレーを見たかった」「ご家族と過ごしながらゆっくり休んでほしい」との想(おも)いが交錯しました。女性の社会参画に貢献しようと大学院進学を視野に入れていることも知りました。常に自分のやりたいことを明確にして、実行に移している。人生を“旅”に例えれば、一つの終着駅は次の目的地への新たな始発駅なんだと実感しました。

 コートで同じ時間を過ごした選手も少なくなってきました。銅メダルを手にしたロンドン五輪の代表メンバーで、最後まで現役を続けた絵里香さんもユニホームを脱ぎました。10月も半ばを過ぎ、頬をなでる涼風に秋の深まりを感じます。憧れであり、尊敬する先輩の優しさにいつまでも触れていたい私がいます。一番好きな季節なのに、今年はどこか寂しさもあります。(バレーボール女子元日本代表)

 ◆迫田(さこだ)さおり 1987年12月18日生まれ。鹿児島市出身。小学3年で競技を始め、鹿児島西高(現明桜館高)から2006年に東レアローズ入団。10年日本代表入り。バックアタックを武器に12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪出場。17年現役引退。身長176センチ。スポーツビズ所属。

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