長谷川にとって安打は「作品」 完成に近づいた日とその後の葛藤

西日本スポーツ 鎌田 真一郎

 ◆ソフトバンク2-2日本ハム(21日、ペイペイドーム)

 今季限りでの引退を表明しているソフトバンクの長谷川が0-0の7回1死二塁で、代打で登場した。4球目を打ち返し、打球は一塁へボテボテのゴロ。ヘッドスライディングも実らずアウトとなったが、続く甲斐が左翼席へ2ランを放ち、ベンチで涙した。

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 ホークス担当になった2017年、試合前の打撃練習に胸が躍った。大砲の豪快な打撃にも度肝を抜かれたが、他とは一線を画する長谷川の「品」のある放物線に心を引き付けられた。

 打撃職人と呼ばれたヒットメーカーが追い求めていたものとは? 単刀直入にぶつけた。「より良いものを作り上げていく。物作りと一緒。『作品』と言ったらいいのかな」。15年間、続けてきた作業を思い巡らし、ふさわしい表現を探してくれた。

 7年目の13年に記録した198安打は球団記録。「完成にちょっと近づいたかと思った。そこからもっともっととがらせて、先端までいきたかった」。それから完成しかけた「作品」を仕上げようとした。だが翌14年に右足首を痛めたことが響き、再現すらできず「歯がゆかった」。

 こうも言った。レギュラーとして試合に出続けていた時期は「空手の『型』みたいなもの。自分の型はこれだと突き詰めていた」。代打起用が増えた晩年は作風も変わった。「自分の型を整えるのではなく、相手に合わせて作っていった」。やるか、やられるか。痛みを伴う格闘技のイメージだっただろうか。

 至極当然なことでも、一つのことを突き詰めた者の言葉には説得力がある。「バッターにヒットを打たなくていい場面なんて絶対にない。ヒットを打つのが仕事だし、それが最高の結果。1軍だろうと、2軍であろうと、オープン戦であろうと、バッターボックスに入ってしまえばヒットを打つだけ」。打撃という高難度の「作品」を完成させかけた職人の思考は、極めてシンプルに研ぎ澄まされていた。(ソフトバンク担当・鎌田真一郎)

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