執念、怒り、涙、そして…長谷川が最後に伝えたかったこと

西日本スポーツ 鎌田 真一郎

 ◆ソフトバンク2-2日本ハム(21日、ペイペイドーム)

 ドームがすすり泣きに包まれた。今季のソフトバンク本拠地最終戦は打撃職人、長谷川勇也外野手(36)のラストゲーム。7回1死二塁の先制機に代打で登場し、一ゴロに倒れたが、執念のヘッドスライディングでチームを鼓舞した。続く甲斐拓也捕手(28)が2ランで応えた。だが守護神森が同点2点打を浴びて引き分け。残り3試合を全勝しなければ、CS進出が消える。後は奇跡を信じよう。

   ◇   ◇

 暗転したドームでライトを一身に浴びた長谷川は声を震わせた。「(9日の引退)会見で順風満帆な野球人生ではなかったと言いましたが、今日一日を通じて考えが変わりました。訂正します。長谷川勇也のプロ野球生活15年間は多くの方々に支えられ、順風満帆の野球人生でした」。ラストゲーム後の引退セレモニー。幾度も山と谷を越えてきた背番号24に大きな拍手が降り注がれた。

 打撃職人のラストステージは最高の舞台が用意された。0-0の7回。中村晃の犠打で1死二塁となり出番が巡ってきた。スタンドは配布された応援ボードのピンク一色に染まった。CS進出の可能性を残す中、堂々の「戦力」として通算4409打席目に立った。

 セレモニー的な意味合いはない真剣勝負。「しびれる場面での代打。自分の最後の打席で安打を打とうというより、この試合にけりをつけたかった」。いつも通りにポケットに入れたカードで目のピントを合わせ、打席へ向かった。

 ルーキー伊藤の初球、外角に149キロが決まる。「本当に良いボールで、気合の入ったボールだった」。気持ちが高ぶる。1ボール2ストライクから4球目のチェンジアップに食らいつくと打球は一ゴロとなった。全力疾走。ヘッドスライディングをしたが、ぎりぎりでアウト。倒れたまま戦い慣れた本拠地の天井を見上げた。

 泥まみれの36歳は、ファンからも選手からも大きな拍手でねぎらわれたが、ベンチに戻るとレガースをたたきつけた。温かい空間の中で主役は感情が入り乱れた。「悔しさもあり、最後だったんだなという気持ちもあり…」。頭を抱えていると、甲斐が2ランを放った。涙腺は決壊した。

 2013年に198安打を放ち首位打者にも輝いたバットマンは、翌14年9月に古傷となる右足首のけがに見舞われた。手術後は自宅の階段の上り下りさえ苦痛だった。それでも「ただヒットが打ちたい」。その一心で戦った。引退を決意してからも、筑後のファーム施設の屋内練習場でマシン相手に黙々と打ち込んで仕上げてきた。

 試合前の円陣では選手たちに呼び掛けた。「最後にみんなが必死になっている姿、一生懸命やっている姿を焼き付けさせてください」。ホークス一筋15年の仕事人は、最後のメッセージをそのままグラウンドで体現し、磨き続けてきたバットを置いた。(鎌田真一郎)

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