モヤモヤ吹き飛ばしたラグビー日本代表の善戦 人気競技への階段を踏むために

西日本スポーツ

【記者コラム】

 2年前に世界を驚かせ、そして日本国内を熱狂に包んだラグビー日本代表(世界ランキング10位)が23日、昭和電工ドーム大分で2019年ワールドカップ(W杯)日本大会以来となる国内でのテストマッチを行った。W杯で過去2度優勝のオーストラリア(同3位)に23-32と健闘した。

 試合後、プロップ稲垣(埼玉)は「負けたんで全然いいゲームじゃない」と悔しさを口にした。2年前のW杯で史上初の8強入りを果たし、23年フランス大会ではその結果以上を目指している。それを踏まえれば、強豪に善戦で満足してはいけないのだろう。今春の欧州遠征(全英・アイルランド代表ライオンズに10-28、アイルランドに31-39)に続き、勝ちきれなかったのは課題だろう。

 それでも私は正直、安堵感が先に立った。心の中に巣くっていたモヤモヤとした一抹の不安を吹き飛ばしてくれた。

 なぜか。日本のラグビーファンの脳裏には2年前の快進撃が焼き付いている。この日の会場はW杯会場の一つで、ニュージーランドなど強豪がキャンプを張った大分だった。このテストマッチを盛り上げようとJR九州の博多駅や小倉駅、大分駅では駅社員がラグビー日本代表と同じジャージーを着用した。W杯以来の国内でのテストマッチ。2年前の興奮と感動を再び心待ちにしていた。

 だが日本代表が十分な強化が進められてきたかといえば、そうではなかったように思う。コロナ禍の影響もあって3カ月振りの実戦が、いきなりの難敵。一方、オーストラリアは直近の南半球4カ国対抗で2年前のW杯王者、南アフリカに2連勝していた。体をぶつけ合う競技の特性からも実戦不足は不利に思えた。現実としてプロ野球やサッカーのようなメジャー競技ではないだけに、競技の発展・普及には代表戦の1試合、1試合が大きな意味を持つ。会場に詰めかけた1万7004人のファンを裏切るような内容になりはしないか。来年1月にはトップリーグに代わって開幕する新リーグ「リーグワン」も控えている。日本ラグビーの「立ち位置」という意味でもこの試合は重要だと思っていたが、杞憂に終わって、ほっとした。

 4年前の対戦では30-63で完敗した相手に成長した攻守で慌てさせた。SOに松田(埼玉)を約3年ぶりに先発起用。前半26分に絶妙なキックパスでトライを演出し、持ち味のランやゴールキックも安定。ジョセフ・ヘッドコーチを「成長が見られた」と喜ばせた。初キャップで先発したフランカーのガンター(埼玉)はボール争奪戦で存在感を示し、後半途中に投入された24歳のSH斎藤(東京SG)は小気味のいい球さばきを見せた。

 これに経験豊富なW杯組がかみ合った。後半15分に副将のCTB中村(同)がパスのインターセプトからのトライで流れを引き戻し、後半途中からSOに入った田村(横浜)のPGで4点差に迫った。久々に代表に戻ってきたSH流(東京SG)が持ち味の統率力でコロナ禍で実戦不足の試合勘を補った。

 「勝ちきれず悔しい」と中村。「もっと成長したい」と松田。確かに課題はたくさん浮かび上がった。スクラムやラインアウトなど要所で崩れ、危険なタックルでWTBレメキ(東葛)がシンビン(一時的退場)など日本の反則数は14。反則の多さが勝敗を分けたが、今秋の初戦でいきなりの難敵ならば致し方ない面もある。これから修正は十分に可能だろう。世界を沸かせたW杯から2年。確実に日本の地力が上がったことを示した試合でもあった。土台を生かしつつ、あと2年を切ったW杯フランス大会に向けて世代交代も順調な姿が頼もしく映った。(大窪正一)

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