失意の東京五輪から3カ月 すり減った内村航平、再起の道のりと「会心の一撃」

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 体操の世界選手権(西日本新聞社など協賛)最終日は24日、北九州市立総合体育館で男子の種目別鉄棒決勝があり、2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ両五輪の個人総合を連覇した32歳の内村航平(ジョイカル)=長崎県諫早市出身=が14・600点で6位に入った。3歳まで過ごした生まれ故郷で完全燃焼。演技を終えると、観衆の大きな拍手に万感の表情で応えた。東京五輪で個人総合と鉄棒の2冠を達成した橋本大輝(順大)が15・066点で銀メダルを獲得した。

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 寸分の狂いもない着地を決めた内村は何度も拳を突き上げた。佐藤寛朗コーチと抱き合った後、「ありがとう北九州」と記したTシャツを掲げる。悪夢の「7・24」からちょうど3カ月。東京では通しきれなかった演技を、生まれ故郷の北九州市でやり抜いた。

 「着地は本当に会心の一撃という感じで出せた。あの感じは久々。僕の中ではリオの時に近かった」

 個人総合で連覇を達成した2016年リオデジャネイロ五輪は、最終種目の鉄棒で逆転。当時に迫る感触、興奮があった。

 冒頭、H難度の大技「ブレトシュナイダー」でバーに近づきすぎ、直後の車輪で肘が大きく曲がった。それでも五輪で落下し、今大会予選では回避したひねり技は成功。その後も大きなミスなくまとめ、完璧な着地につなげた。

 種目別鉄棒に出場した東京五輪は金メダル候補に挙げられながら、まさかの予選落ち。「信じられない」「夢じゃないよな」と周囲に漏らし、現実を受け入れられなかった。失意から2日後、あん馬で決勝に残った同学年の亀山耕平(徳洲会)に付き合う形で練習を再開。体力トレーニングで追い込み、器具も一通りは触ったが、鉄棒にはなかなか手を伸ばせなかった。

 特に、演技の要ブレトシュナイダーは約20日間も封印。「鉄棒で失敗したのでやる気が起きなかった。ほかのことをやって発散しようみたいな感じ」。さらに、五輪を終えると全身が痛みだした。顎まで痛み、「ハンバーガーも食べられない」と気力で耐えていた体が悲鳴を上げた。

 急ピッチで心身を整えて臨んだ生まれ故郷の大会。これまで「結果が全て」と競技と向き合ってきた中、無観客の東京五輪にはなかった温かい拍手に包まれ、新たな気付きもあった。

 「結果が全てじゃなかったなという感じがあった。そこの追求はやってみたいなというのは少しある」

 自身の進退については「続けるにしてもやめるにしても、相当考えて決めなければいけないと思う」と明言を避けた。「キング」にとって体操とは-。「相変わらず僕にとって最高以外にない。自分が自分であることを唯一証明できるもの」。思いは変わらない。(伊藤瀬里加)

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