工藤監督ラストゲームの舞台裏 宿舎で選手集め伝えた辞意とメッセージ

西日本スポーツ 倉成 孝史

 ソフトバンクを7年間で5度の日本一に導いた工藤公康監督(58)が「ラストゲーム」の今季最終戦を大勝で飾った。8年ぶりのBクラスが確定した23日夜、宿舎で今季限りでの辞任を伝えられた若手たちが発奮。いずれも今季最多の20安打、15得点で優勝マジック「3」のロッテに3年ぶりに勝ち越した。試合後は孫正義オーナーに特大の花束を手渡されて、雨のグラウンドを後にした。辞任は一両日中に正式発表され、記者会見が行われる予定。

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 悔しさは、当然ある。ただ、体を打ちつける雨はずっと心地よかった。試合後。スタンドへの一礼を終えると、工藤監督は板東からウイニングボールを手渡された。うれしそうにジャンパーの右ポケットにしまう。三塁ベンチ前へ戻ると、サプライズが待っていた。

 多忙を縫い球場を訪れた孫オーナーに、大きな花束を手渡された。「お疲れさまでしたと言っていただきました」。続いてナインが集まって即席の記念撮影。サムズアップポーズで満面の笑みを浮かべた。そしてナインに見守られながらベンチ裏へ。これまでポストシーズンも含め1000試合以上、必ず全選手をねぎらい、最後にベンチを後にした指揮官にとって、忘れることのできない「ラストシーン」となった。

 悔しさはあるが、全力を尽くした7年間に後悔はない。「何にだって最後はある」。試合前から表情は晴れやかだった。グラウンドに足を踏み入れると、投手陣が練習を行う中堅付近へゆっくり歩を進めた。投手らを温かい目で見守ると、柳田と椅子に2人並んで腰かけ5分ほど談笑。打線の中心として支え続けてくれた主砲に感謝の意を示した。

 8年ぶりのBクラスが確定した23日の楽天戦後、宿舎で選手らを集め今季限りでの辞任を伝えた。「覚悟を決めて今季に臨んだつもりでいます。当然みんなは一生懸命やってくれた。監督としての技量というか力が足りなかった。責任はチームを率いている監督が取らないといけない」。球団からは夏以降、複数回にわたり続投要請を受けたが、勝負師として首を縦に振ることはできなかった。

 実働29年の現役生活では11度、指揮官として7年で5度も日本一に輝いた。「7年間、本当にみんなのおかげで幸せな監督生活を送ることができた」。選手らに心からの感謝を伝えるとともに、勝負の世界に生きることの厳しさを、身をもって伝えた。

 球史に名を刻む名将の花道を飾るべく、ナインは躍動した。1点を先制された直後の2回に、7本の長短打を集中させ一挙7得点。4回には工藤監督の下でブレークした栗原が21号2ランを放つなど、いずれも今季最多となる20安打、15得点で優勝争いを繰り広げるロッテを撃破し、敗れし王者の意地を見せた。

 「みんながはつらつとやっている姿はいいな、と思いながら…」。あえてこの日は自らの口から辞任を表明しなかった。「それに関しては日を改めて。今日はできれば、若い人たちがすごくよく頑張ったので」。頼もしい選手らの明るい未来を想像しながら、名将がユニホームを脱ぐ。(倉成孝史)

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