試合後、円陣を組んだJ大分の片野坂監督は声を張り上げた

西日本スポーツ 末継 智章

 ◆第101回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝 浦和2-1大分(19日、東京・国立競技場

 胸張って帰ろう-。サッカーの天皇杯決勝が19日、東京・国立競技場で行われ、初進出の大分トリニータが1-2で浦和に惜敗した。1964年度の八幡製鉄以来となる九州勢の優勝を逃したものの後半45分に一度は追いつく驚異の粘りを見せ、今季限りで退任する片野坂知宏監督(50)が6年間貫いてきた「カタノサッカー」の集大成を披露。来季J2に降格し、1年でのJ1復帰を目指すチームに自信と誇りを残した。

   ◇   ◇

 試合直後。会場に浦和の優勝インタビューが響く中、ピッチで円陣を組んだ片野坂監督は声を張り上げた。「胸を張って帰ろう。グッドルーザーでいよう。この場にいることは財産になる」。負けた悔い以上に最後まで戦い抜いた選手が誇らしい。ほおは涙でぬれていた。

 序盤に先制される苦しい展開でも、誰一人勝利を疑わなかった。前半は回せなかったパスが徐々に通るようになる。迎えた後半45分、パワープレーからペレイラが頭でねじこんだ。延長後半に追いついた準決勝の川崎戦に続く劇的ゴール。「信じられない。またミラクルを起こすことができるのかと思った」と片野坂監督はベンチ前で顔を覆った。

 就任した2016年から最後まで走り、戦い抜く姿勢を一貫させてきた。09年に10億円超の債務超過に陥ってから厳しい経営を続ける実情を考慮。個人技に優れた相手に集団で立ち向かうため、GKも攻撃に参加してパスをつないだ。

 当時チームはJ3に降格。1年でJ2に戻れなければ地元の支援が減り、チームの弱体化が危ぶまれていた。何とか1年で戻ろうと県民、企業、行政は支援を継続。かつて選手やスタッフとしても在籍し、大分に愛着がある片野坂監督は「プレーで恩返しする使命がある。原点に返ろう」と選手に訴え続け、J2、J1とカテゴリーを上げても感謝を示す形として諦めない姿勢を求め続けた。

 「僕の色は人間味。盛り上がってくれるなら」と試合中は喉をからすほど声を張り上げ、選手の位置を細かく修正。勝利したときは誰よりも喜び、お笑い芸人のものまねをして士気を高めた。「片さんにしかできない雰囲気のつくりかただった。優勝を味わわせたかった」。13年から大分に在籍し続ける松本は涙を流した。

 この日先発した主将のGK高木や下田、町田は契約を更新。その他にも主力の残留が見込まれる。「トリニータに新たな歴史を刻むことはできた」と顔を上げた指揮官は選手に「悔しさを忘れず、J1に復帰できるよう奮起してほしい」と託した。西山哲平ゼネラルマネジャーは「今季までの戦い方を継続させる」と明言している。片野坂監督が去っても、カタノサッカーは大分に残り続ける。(末継智章)

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