〈記者の目〉最速160キロ左腕、盗みで退団「なぜ」

西日本スポーツ 長浜 幸治

 ソフトバンクは24日、古谷優人投手(22)との来季選手契約を締結せず、保留権を放棄して自由契約にすると発表した。今季、所属選手の1人からロッカー内で私物盗難被害の申し出があり、警察に相談し調査を行った結果、古谷の関与が判明した。球団が本人に聴取したところ、事実関係を認めたため、選手契約を締結し難い重要な事案であると判断。来季の選手契約を締結しないことを通達した。被害届を提出する予定はないという。

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 将来を期待されていた左腕の突然のニュースはあまりに衝撃的だった。どん底から覚悟を決め、一歩ずつ歩んできたと思っていたからだ。日本人左腕最速の160キロをマークして脚光を浴びた2019年。その話題を振った際に見せた曇った顔がよみがえる。

 「うれしさは全然ない。調子は最悪だしフォームが分からなくなって…」と古谷はつぶやいた。球は速くても制球が定まらない。投球以前の問題。袋小路に陥り、自らを見失っていた。まだシーズン序盤の同年6月ごろ、「今シーズンは終わったと思って、一から(フォームを)つくり直そう」と投手コーチに宣告されたほどの危機だった。

 1軍が遠く及ばない当時3年目の左腕は腹をくくった。「来年も(契約が)あるか分からないし、怖さはあった。だけど、今のままならどちらにしても駄目。クビなら独立リーグでもどこでもいけばいい」。投げ込む際の腕の位置やテークバックなど試行錯誤。その成果は年末のアジア・ウインターリーグでの好投で実を結び、翌20年のプロ初登板につなげた。

 そして今年は念願のプロ初勝利。開花の兆しを見せていた。11月の宮崎秋季キャンプでは「今年は本当に貴重な経験を積めた。来年は勝利の方程式入りを狙いたい」とも意気込んでいた。首脳陣の一人も「ポテンシャルに技術も付いてきた。大事なところを任せてみたい投手の一人」と大きな期待を寄せていた。

 体が不自由な妹の話になると優しい兄の顔になり「1軍でいっぱい投げて喜ばせないといけないですね」。19年末には結婚し、妻にも活躍を誓っていた。今は「なぜ」の2文字しか頭に浮かばない。(ソフトバンク担当・長浜幸治)

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◆古谷優人(ふるや・ゆうと)1999年2月19日生まれ。北海道幕別町出身。江陵高3年夏に154キロをマーク。1試合20奪三振も記録して一気に注目された。プロ入り後は3年目の2019年5月5日の四国アイランドリーグplus香川との3軍戦で日本人左腕最速の160キロを計測。通算1勝1敗2ホールド、防御率2・37。176センチ、79キロ。左投げ左打ち。

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