ホークス一筋・藤原満さん聞き書き「ぶれない」⑩私の「失言」から巨人に4連敗

西日本スポーツ 野口 智弘

 ソフトバンクの前身である南海で一時代を築いたプレーヤーがいた。ガッツあふれるプレーでファンを魅了した藤原満さん(75)=西日本スポーツ評論家=だ。一昨年に亡くなった野村克也監督の下でチームプレーに徹し、低迷するホークスの中でいぶし銀の活躍を見せた。太いグリップが特徴の「ツチノコバット」を短く持って安打を量産したレジェンドの半生を聞き書き「ぶれない」でお届けする。

   ◇   ◇

 阪急とのプレーオフを制して進出した1973年の日本シリーズ。相手はV9を目指す無敵の巨人です。

 しかし、この年の巨人は公式戦最終戦で首位阪神を破って苦戦の末での逆転優勝でした。前年26勝でMVPのエース堀内恒夫は12勝17敗、防御率4・52と安定感を欠き、なによりも長嶋茂雄さんがシーズン終盤に右手薬指を骨折してシリーズ不出場。下馬評では南海有利との声もありました。

 パ・リーグの死闘を制した野村克也監督も「シリーズはお祭りみたいなもの。楽しんでやろう」と言っていたし、割と気楽な雰囲気で初めて(そして最後)のシリーズに臨みました。

 初戦(10月27日)の舞台は大阪球場。1-3とリードされて迎えた8回でした。南海は7番桜井輝秀が先発の高橋一三から押し出し四球を選び1点差に迫り、なおも2死満塁で私に打順が回ってきました。カウント2-2。その時、三塁走者の野村さんがタイムをかけ耳元でささやきました。

 「次は必ず真っすぐが来る。右を狙って打て」。野村さんの読みが的中します。ただ、コースは内側で詰まりましたが、右狙いが功を奏して打球は突っ込んでくるセンター柴田勲さんの前に落ちました。逆転の2点適時打です。一塁ベース上で万歳していましたね。

 シリーズ初戦を制したヒーローは、もちろん私です。しかも、お立ち台に上るのは、プロ5年目にして初めてでした。それも、シリーズという晴れの大舞台。よっぽどうれしかったんですね。全国中継されていたテレビのヒーローインタビューで余計なことを言ってしまったのです。

 「巨人は迫力がなかったですね。これなら阪急の方が強いです」

 思い出した読者もいると思いますが、同じようなことを吐いた男がおりましたね。89年の近鉄と巨人の日本シリーズ。3連勝した近鉄の加藤哲郎投手の発言です。「巨人は(シーズン最下位だった)ロッテより弱い」。そう伝わった言葉が巨人の選手を怒らせて、3連敗の後に4連勝。シリーズの流れを変えた「失言」として有名です。

 その16年前に放った私の発言も同じ結果をたどりました。南海は初戦勝った後に4連敗。巨人はシリーズ9連覇を達成しました。そして、私は…。初戦の殊勲打の後はヒットを1本も打てず18打数1安打、打率5分6厘。口は災いのもとですね。

 弁解させてもらえば、私の失言はシリーズ初戦でのたわ言。誰も本気にしていませんよ。事実、巨人の選手が怒ったという話は聞いたことがありません。加藤の場合は王手をかけた後ですから、横着に聞こえました。そう思いませんか?(聞き手・野口智弘)

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