水島新司さんも喜んだ「やったですか!」27年前に再現されていたドカベンスクイズ

西日本スポーツ

 伝説のプレーは福岡で再現されていた-。1月10日に天国へ旅立った水島新司さんの代表作「ドカベン」。野球ファンのハートをつかむ数々の名シーンの一つに「ルールブックの盲点」がある。スクイズ失敗で併殺…が一転、得点成立というシーンだ。2012年夏の甲子園で、済々黌(熊本)が同様のプレーで得点を挙げ、全国的な話題となった。だが、1995年夏の福岡大会で八女工が“忠実に再現”していたことを知る人は少ない。27年前のプレーと水島さんの反応を、当時の紙面を基に振り返る。(富永博嗣)

  電話口の声は実に愉快そうだったという。「やったですか!」。1995年7月15日の高校野球・福岡大会。「ドカベン」に描いた名場面が現実となった。西スポのデスクからの知らせに、水島新司さんは喜んだ。

 “再現プレー”が飛び出したのは、平和台球場で行われた八女工-博多工だ。3回に1点を挙げた八女工は、なおも1死満塁でスクイズを仕掛けた。打球は小飛球に。博多工の一塁手は、捕球すると走者が戻り切れない一塁に転送した。併殺が完成。追加点を阻止した博多工は、意気揚々とベンチへ引き揚げた。

 ところが、6回になって3回の得点は「2」に訂正される。八女工の三塁走者は、一塁での併殺成立より早く本塁を踏んでいた。この走者もタッチアップしていなかったが、博多工から離塁が早いとのアピールもなし。そこで八女工は「得点のはず」と大会本部に問い合わせた。

 訂正が遅れたのは、ルール等の確認に時間を要したから。5-2で勝利した試合後、八女工の松本健二監督は「ドカベンで同じような場面があって、ルールを知っていました」と目を細めた。

 現在は同校で副部長を務める松本さんは、67年生まれのドカベン世代。「こういうとき、三塁走者は(塁間の)半分以上走っていたら思い切って突っ込む。ドカベンで知って、実は練習していました。いろんなOBから、あんなプレーがあったのかと問い合わせが来ました」と当時を振り返る。

 松本監督が“手本”にした場面はドカベンの35巻に登場。ファンに「ルールブックの盲点」と名付けられている。山田太郎率いる明訓と、豪腕エース不知火守を擁する白新学院の対戦。0-0で迎えた10回1死満塁で、明訓のスクイズは小飛球に。ダイビングキャッチから一塁に転送したのは不知火で一走は山田、三走は岩鬼だった。

 その再現として全国的な話題となったのは2012年夏の甲子園での済々黌だが“起点”は1死一、三塁での遊直。打球を処理したのが投手か一塁手かの違いこそあれ、状況は八女工の方が“ドカベン度”が高い。

 さて、当日の水島さんは、こんな裏話も披露している。

 「作新学院の山本監督は、こんなケースは一塁で殺しても必ず三塁に投げるようにと、江川に言っていたそうです。これがルールブックにあると、江川に聞いたんです」

 江川卓氏(元巨人)が高校時代に受けた山本理監督(故人)の指導。これを知った水島さんは、ルールブックをじっくり調べたという。伝説の名場面が、江川氏との雑談から生まれたとは驚き。同時にその「1点」には、水島さんが作品に注ぎ込んだ野球への情熱、探究心がにじむ。

 

 

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