ウイニングボールは愛した「ピーチ」ちゃんへ 藤本監督が明かした開幕戦秘話
月に1度のお楽しみ新企画がスタート! ソフトバンクの藤本博史監督(58)が、西スポのコラムで語り尽くします。題して、月刊「もっともっとフジモントーク」。試合日などに掲載している「フジモントーク」の拡大版として、ホークスの今にタカ番記者が迫ります。第1回のメインテーマは、日本ハムのビッグボスこと新庄監督との対決で大注目を集めた開幕戦。試合中に感じた不安からウイニングボールの行方まで…。藤本監督、よろしくお願いします! (随時掲載)
相手継投策にデータが少なく焦りもあった
-第1回の「もっともっとフジモントーク」です。監督、1年間よろしくお願いします。
は~い。何でも聞いてや。
-初回のテーマは劇的な逆転勝ちを飾った開幕戦。試合後は「回が進むたびにどんどん緊張してきた」と話していた。
始まる前は何てことなかったんやけど、負けている状況でイニングが進むたびにね。打てないな~というところですごく緊張感というか不安感…。それをガルビスが一発で吹き飛ばしてくれた。あれでいい形で開幕スタートできた。
-ビッグボスの「遊び」発言もあり、絶対に負けられないというプレッシャーもかかっていたのでは。
すごくあったよ。こっちはエースの千賀で、向こうは新人の北山君が投げた。そこで負けると嫌なムードになってくるなというのは当然あった。勝っていいスタートを切りたいというのもあったし、千賀でいっているから勝たないといけないという気持ちもすごくあったね。
-4回に先制されて、じりじりとした展開でした。
早く1点、早く同点という気持ちが、どんどん高ぶってきたね。相手の継投策に攻撃陣もデータが少ない中でやっているので焦りもあった気がする。
-米メジャーで実績のある助っ人をスタメンから外していた。
状態が悪いから外したのではなく、新型コロナの影響で入国が遅れて、調整も遅れていた。調整不足というところで開幕スタメンを外れてもらった。開幕戦は勝ちたいというのが確かにあったので、状態のいい選手を使いたかった。決断するのは自分の中でも大変だったけど、ガルビスを呼んでしっかり話をして伝えた。本人はここまで餌をまいて開幕は大丈夫と言ってくれたけどね。1年間長いから開幕スタメンだけがレギュラーじゃないと。
-途中出場したそのガルビスが8回に逆転満塁弾。大仕事をしました。
ガルビスの満塁ホームランでロケットスタートができた。あのまま継投で0点に抑えられて、千賀で負けていたら、翌日以降も引きずるところがあったかもしれない。すごくいいムードに変えてくれた。
-9回を締めた森からウイニングボールを受け取った。今はどちらに。
うちの死んだ犬の前に置いとるよ。愛犬だったダックスフントがいてね。嫁さんがすごくかわいがっていた。その犬の写真の前にボールは置いている。3軍、2軍(監督で初勝利)のウイニングボールと並べて、ちゃんと飾ってあるよ。
-思い入れの深い愛犬だったようですね。
初めて飼った犬で20年近く生きたんよ。俺と違って、すごいかわいらしい犬やったからね。名前はピーチ。飼った時に俺が桃を食べてたから、ピーチや。
-ボールにはなんと。
日付だけ書いたね。日付と1軍、2軍、3軍と。三つそろいましたね。
-開幕戦で勢いに乗って8連勝。パ・リーグはどのチームも打撃陣が苦しんでおり、監督が掲げた1点にこだわる野球がはまった。
そうやね。1点を取るのは難しいけど、ヒットが少ない中でもここまでは取れている。というのも選手が四球を選んでくれる。2ストライクと追い込まれて簡単に終わるのではなく、何とかフルカウントまで持ってきて、そこで三振することもあるけど、四球や安打が出るときもある。そういう形が浸透してきた。
-3月29日のロッテ戦ではルーキー野村勇の足で決勝点をもぎ取りました。
泥くさい1点をどうやって取っていくか。本当に評価すべき走塁だったし、追い込まれても何とかバットに当てた今宮も評価できると思う。今までのように三振だったら何もない。バットに当てれば何が起こるか分からない。そういう1点を取っていきたい。
8連勝中は韓流ドラマを家で1時間
-接戦を制し続け、新人監督新記録の開幕8連勝。験担ぎはありましたか。
あまりないですね。まあ、帰ったら1時間ほど韓流ドラマを見るぐらい。それで家を出る3時間前には起きているかな。
-監督ならではの悩みも見え始めたのでは。
2軍の時は育成なのでデータ重視ではなく、バットを振らせるとか、調子が悪くても使い続けるとかあった。1軍だと世代交代と言われる中でも勝たないとチームがしらけてしまう。勝つためにどうしたらいいかを考えて、データもすごく使う。今日の相手投手なら誰が打てるのか、なぜこの投手は打てていないのか。打撃コーチと話しながらオーダーも決めている。
-リリーフ陣には3連投禁止と明確に打ち出しています。
まだシーズン始まったばかりなのでね。終盤やここ一番になったら3連投もある。森なんかは3連投をさせてくださいというタイプだけど、それを止めるのがこっちの仕事。当分の間は2連投したら1日休みと考えている。藤井や又吉の加入もすごく大きいね。
-ケアをしていく中でも試合中のけがは起こってしまう。栗原、柳田と主軸が相次いで離脱しました。
非常に痛い。3番、5番。飛車角がいなくなったからね。早く帰ってきてもらうことを祈るだけで、裏返せば若い選手はチャンスですと言いたい。若い選手は試合に出て、そこでアピールしてくれれば、長く出られる。状態がいい、相性のいい選手を使っていく。だから出たときは自分をアピールすることが大事。
-パ・リーグの各球団との対戦も一回り終わり、貯金が8もできました。
あまり余裕とか考えないで、一戦一戦大事に勝ちにこだわって戦っていくだけ。その中で若い選手がどんどんアピールしていけばいいチームになっていくと思うよ。
-けが人が帰ってくるまでは辛抱も必要になりそう。最後に今後の戦いについてお願いします。
ベンチ入りメンバー全員でね。投手はすごく頑張ってくれている。もう少し打線が線になってくれば、投手を楽にできる。ピリピリした3点差以内のゲームばかりなので、ストレスがたまってしょうがないよ。
◆3月25日の日本ハムとの開幕戦(ペイペイドーム) 新庄監督は開幕前に「(開幕カードの)3連戦は遊びます」と発言。開幕投手にはドラフト8位ルーキーの北山を起用してきた。試合前セレモニーで藤本監督はみこしに乗って登場。異様な盛り上がりの中、先発の千賀が4回、石井に先制ソロを浴びた。日本ハムの継投策に打線は苦しんでいたが、8回1死満塁で途中出場のガルビスが来日1号となる起死回生の逆転満塁弾を放った。