Vリーグ女子3季ぶりV久光の中心 石井優希が語った「涙の理由」と「これから」

西日本スポーツ

 バレーボールVリーグ女子1部の2021―22年シーズンは久光スプリングスが3季ぶり8度目の優勝を飾った。栄冠を知るベテランと成長著しい若手が融合。世代を超えた結束力の中心は石井優希(30)だった。東京五輪を経て円熟味を増したオールラウンダーは守備でも大きく貢献。東レとの激闘で流した「涙の理由」や今も追求するプレーヤーの「理想像」、自身の「これから」について語った。(聞き手・構成=西口憲一)

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 ≪今季を象徴する試合が4月9日、東レとのプレーオフ(PO)準決勝。最大5点差をつけられたゴールデンセットで13―17から7連続得点して一気に流れを引き寄せた。25―23で逆転勝ちして決勝進出。この時の石井の涙を、リベロの戸江真奈主将は「優希さんは全ての試合に全身全霊を懸けている。だからこそ、感情があふれる。あの『奇麗な涙』は私たちだけでなく、多くの人の心に響いた」と語る≫

 目の前の1試合、1セットが全て。その積み重ねが結果につながり、素直にうれしかった。東レさんの流れだったのを全員で踏ん張って逆転できた。私が足を引っ張っていたと感じていたので、もうホッとして…。7連続得点って、なかなかない。リードされても最後のホイッスルが鳴るまで諦めない。その気持ちが結実したのだと思う。

 ≪ゴールデンセットに持ち込む前の試合(3―1で逆転勝ち)では、1セット先取された後の第2セットだけで4本のブロックポイント。後衛での守備も光った≫

 若い時からオールラウンダーを目指していました。真鍋政義さんが監督の時の日本代表では「パワーヒッター」と見られていたかもしれませんが、もともと守備は好き。自分が点数を取ることはもちろん、スパイカーの狙いを先読みしてブロックとディグ(スパイクレシーブ)の連係で相手に思い通りのアタックを打たせないことが大切。ディフェンスは私の強みであり大事な役割だと捉えています。コートに穴ができないように失点を防ぐためのプレー、他の人に決めてもらうためのプレーを心がけています。

 ≪本人が苦手と話すサーブレシーブでもチームに貢献した。東レ戦では、各セットの最初に打つ石川真佑の強烈なドライブサーブを好レシーブして連続得点を許さない場面があった≫

 彼女のサーブは横に流れる回転でスピードもある。だから、正面に入っても(セッターに)きちんと返せないことがある。(体を)横にずらしても、パワーに負けてパス(トス)が崩れる場面もある。あの試合でパスがきれいに返ったのは1本ぐらい(笑)。セッターも含め、パスを丁寧につないでくれたことがアタックにつながった。嫌な選手のサーブは1本で切りたいもの。周りがカバーしてくれたおかげです。あの試合は円陣で何回「ごめん」と謝ったか分かりません(笑)。

 ≪かつて常勝を誇った久光は18―19年シーズンでの優勝を最後に7位、8位。浮上のきっかけとなったのが、21年12月の全日本選手権。リーグ戦とは違うトーナメント方式の一発勝負を制したことで自信が芽生えた。決勝後のインタビューでも石井は「若い選手に優勝を味わわせたかった」と声を詰まらせた≫

 あのタイトルがあったからこそ、リーグ戦の終盤も自信を持って戦えた。過去の優勝は全員が代表クラスの固定メンバーでした。今回は(入団3季目の)平山詩嫣や(同4季目の)中川美柚…若手が頑張った優勝。違う喜びがありました。今季は(長岡望悠、野本梨佳、栄絵里香と同じ日本人)最年長になり、以前とは立場が変わった私にとっても意味が全く違う優勝となりました。引っ張るというよりも(後ろから背中を)押していく感じですね、はい(笑)。

 ≪東京五輪を契機に内なる自分と向き合った≫

 それまでは「欲」があったのだと思います。自分が点数を取りたいとか、チームを引っ張らないといけないとか…。五輪という一つの集大成が終わったのを機に「久光スプリングスというチームに恩返ししたい、還元したい」という気持ちが強くなりました。「自分を売り出したい」から「チームが勝てばいい」と考えられるようになった。

 (アタックを)1本で決めたら、確かに良い数字(高い決定率)が残る。でも、リバウンドを何本も取って最終的に決めても同じ1点。いろんな点数の取り方があっていい。そう思えた時に「私は1本で決めるタイプじゃないな」と気持ちが楽になりました。

 ≪心境の変化と同時に、数字には表れにくいプレーにも目を向けるようになった。脳裏に浮かんだのは、ある先輩プレーヤーの姿。12年ロンドン五輪銅メダリストで20年に現役を引退した新鍋理沙さんだった≫

 理沙さんの素晴らしさはディフェンスはもちろん、丁寧なつなぎなんです。私はボールが集まってくる側のポジション(アタッカー)だったので、理沙さんの二段トス(ネットから遠く離れた位置からアタッカーへ上げるトス)はすごく打ちやすかった。数字に出ない部分の大切さを教えていただいた。そこが今の私の役割でもあるのかな。

 ≪世代交代が進む中、岡山・就実高の後輩で新人の深沢めぐみがVリーグでデビュー。全日本高校選手権(春高バレー)で2大会連続優勝に導いたアタッカーは将来を期待されている≫

 彼女は二段トスの打ち分けがうまい。身長(176センチ)は高くなくても、体のバランスがすごく良い。それが崩れないスパイクフォーム、強いヒットにつながっている。向上心も強くて負けず嫌い。高校とVリーグのレベルの違いが分かっているからこそ、今は「ブロックアウトで点を取れるようになりたい」と口にしている。何よりもバレーボールが好きな高校の後輩を応援したい。何年後か分からないけれど、私の引退後も久光を引っ張る存在になってほしい。私は感覚でプレーするタイプで「教える」のは苦手なんですが、一緒にコートに立てる間に多くのことを伝えたい。

 ≪同期入団で元日本代表アタッカーの野本が今季限りでの現役引退を表明した。久光の常勝時代を同じポジションで支え、苦楽をともにした間柄だ。自身も5月8日で31歳となるが、現在は現役選手であり続ける自分の姿を思い描く≫

 ファンの皆さんや私の家族も「現役の私」を応援してくれている。体と気持ちが続く限りは久光スプリングスでやり続けたい。私にとって「大きなファミリー」と呼べる特別な場所なんです。選手、スタッフを含めて大好きな「スプリングスファミリー」と一緒にバレーライフを送りたい。いつ辞めても悔いが残らないように、これからの一日一日、一年一年を大事にしたい。引退してもバレーから離れられないかもしれませんが(笑)。

 

 ◆石井優希(いしい・ゆき)1991年5月8日生まれ。岡山県倉敷市出身。アウトサイドヒッター。茶屋町小2年から競技を始め、就実高では全国選抜優勝大会(当時春高バレー)や全国総体に出場。2010年に久光製薬(現久光)入団。17―18年シーズンのV・プレミアリーグ(現Vリーグ1部)最高殊勲選手賞に輝く。22年3月にレギュラーシーズン通算3000得点達成。11年に女子日本代表初選出。16年リオデジャネイロ、昨夏の東京と2大会連続で五輪出場。身長180センチ。最高到達点302センチ。

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