佐賀女子高に「魔術師」がいた ジャイロボール操るソフト高校日本一右腕が狙う「春夏連覇」

西日本スポーツ

 ソフトボールの強豪校で知られる佐賀女子高(佐賀市)に将来楽しみな投手がいる。辻奈奈(3年)は今年3月の全国高校女子選抜大会で2年連続2度目の優勝に導いたエース。なかなか自分に自信を持てなかったという心優しき右腕が、津上さおり監督(49)のひと言でたくましく成長。同校初となる全国高校総体との「春夏連覇」へ期待がふくらむ。

 ◇   ◇   ◇

 捕手のサインに一度も首を振らなかった。4月上旬に佐賀女子高のグラウンドで行われた長崎・向陽高との練習試合。辻は打者のバットに次々と空を切らせた。自己最速は2年秋に1回だけ計測した100キロ。驚くほど速くなくても、2年続けて「春の日本一投手」になれたのには理由がある。

 津上監督から「魔術師」と呼ばれる繊細な指先の感覚の持ち主だ。一般的な縦回転ではなく、渦巻き状の回転とされる「ジャイロ系」の真っすぐを操れる投手は、高校生では珍しい。辻は「意識してスピンを掛けている」と明かす。真っすぐの球速帯は92~97キロ。球筋は野球のカットボールに近く、打者の手元で微妙に変化するため、捉えられにくい。切れもあり、球速以上の速さを感じるのだろう。練習試合ではチェンジアップと組み合わせ、打者に対応させなかった。

 中学3年時に全国準優勝。「日本一の投手になる」と福岡県から隣県の強豪校に進んだ。独特な“持ち球”を武器にエースを務める一方、試合で自信なさげな表情を見せることがあり、新チームでは津上監督から「強くなってほしい」と主将に指名された。全試合無失点で制した昨春とは違い、本調子でなかった今春。失点を引きずり、味方の得点を素直に喜べず、津上監督から諭された。

 「あなただけのチームではない。一人で背負っているような悲壮な顔を周りに見せたら、チームは絶対にまとまらない」

 このひと言が辻の自覚を促した。「うまくいかないときでも仲間が助けてくれる。ソフトボールは一人でするものじゃない。改めて気付かされた」。東京五輪の金メダリストで「投打二刀流」の藤田倭や現女子日本代表主将の内藤実穂(ともにビックカメラ高崎)ら多くのOGも果たせなかった春夏連覇。26人の部員を束ねる大黒柱には秘めた思いがある。「将来は藤田先輩や内藤先輩のように、日本代表に入ってオリンピックに出てみたい」。2028年ロサンゼルス五輪では競技復活の可能性がある。笑顔が似合う大きな瞳は、未来も見つめている。(西口憲一)

 

 ◆辻 奈奈(つじ・なな)2004年7月16日生まれの17歳。北九州市小倉南区出身。小学1年から「島門リトルシャーク」でソフトボールを始め、同市の早鞆中3年時に全国中学校大会準優勝。身長167センチ、体重59キロ。右投げ右打ち。

PR

スポーツ アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング