競艇「グレートマザー」、奇跡のカムバック 最高ランク復帰、還暦優勝は〝世界一〟

西日本新聞 田中 耕

 ボートレース界のレジェンドが奇跡のカムバックー。2020年秋、選手最低ランクに転落していた日高逸子(60)=福岡市=が、7月からグレードが一番高いA1級に復帰する。60歳代でのA1級への復帰は女子では初の快挙。さらに今年3月の尼崎ボートレース場での優勝は、公営競技の女子選手では最年長優勝の可能性が高く、ギネス世界記録に申請しているという。認定されれば世界一の「称号」を手にする。

 現役女子最年長、生涯獲得賞金は女子最高となる10億円超の日高が、崖っぷちに立たされたのは、福岡で開催された20年9月5日の最終戦だった。わずか100分の1秒早くスタートを切り、半年間の審査期間で3度目のフライングを犯した。

 フライングは、舟券が全額返還されて主催者の収入が減るため、選手に厳しい罰則が科される。日高は150日間の出場停止と、選手ランク(A1、A2、B1、B2の4階級)は、A1級から一気にB2級への降格となった。

 レース出場機会が最も少ないB2級への陥落は、選手の間で「地獄の始まり」と言われている。A1級に復帰するのは至難の業で、引退する選手もいるが、日高は現役続行を決意した。

子宮の全摘手術乗り越え

 どん底から駆け上がる道のりは、決して平たんではなかった。出場停止処分が明けた当初はレース勘が戻らず悪戦苦闘。さらに追い打ちをかけるかのように、昨年9月に子宮の全摘手術を受けた。

 「私の人生は逆転に次ぐ逆転の繰り返し。努めれば報われると信じてきた」

 練習を積み重ね、今年1月にA2級に復帰すると本領発揮。3月11日に尼崎であったオールレディースでは、通算76度目の優勝で完全復活を遂げた。今年後期の審査期間(昨年11月~今年4月)の成績は出走回数132回、勝率6・36でA1級昇格条件をクリアした。

 「60歳で優勝できるとは思わなかった。A1級に復帰でき、素直にうれしい」

「まだまだ努力」

 還暦での優勝は、自身が持つ女子最年長優勝記録(58歳9カ月)を更新しただけではない。夫でマネジャーの邦博さん(60)によると、世界の公営競技で60歳以上の女子選手の優勝は前例がない可能性があり、ギネス世界記録に申請。年内には結果が出るという。

 今年の獲得賞金は女子選手で6位(5月1日現在)。12位以内が出場できる年末の賞金女王をかけた「クイーンズクライマックス」出場も視野に入ってきた。「いろいろなことがあったけれど、まだまだ努力して諦めず、頑張り続けていきたい」

 主夫兼マネジャーの夫に支えられ、2人の子どもを育てた「水上のグレートマザー」が不屈の精神で、これからもファンに夢を与えるレースを見せる。

 (田中耕)

 ◆ボートレースの級別 半年ごとに分け、各レーサーは期間中の通算成績(勝率、2連対率、3連対率、事故率、出走回数)に応じて上からA1級、A2級、B1級、B2級の4ランクに分けられる。人数比率はA1級20%、A2級20%、B1級50%でそれ以外はB2級。ランクが上位であるほど出走日数や高いグレードのレースへの出場機会が増える。

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