ソフトバンクの超新星、渡辺陸が覚醒した育成時代の一打とは…「そこからですね、変わったのは」

西日本スポーツ 長浜 幸治

 ◆ソフトバンク11-1広島(28日、ペイペイドーム)

 プロ初先発したソフトバンクの渡辺陸捕手(21)が鷹党の度肝を抜いた。2回にプロ初安打となる3ランを左中間に運ぶと、4回にも2打席連続となる2号ソロを左翼へ。6回には左前適時打を放った。昨季と今季の2軍公式戦で計5本塁打の育成出身のプロ4年目が、広島の好投手森下からいずれも逆方向へ2打席連続本塁打を含む3安打、5打点の離れ業。打線の爆発を誘発して大勝し、敗れた首位楽天とのゲーム差を0・5に縮めた。

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 プロ初スタメンを飾った渡辺には雄姿をどうしても見せたい人がいた。病気で2週間ほど前から入院している母桃子さんだ。父や祖母は29日にペイペイドームで観戦するが、近く退院予定の桃子さんは息子の姿を直接見ることができない。「打って元気づけられれば一番いいですね」。プロ初安打となる1号3ランからの2打席連発。さらに5打点の離れ業で最高の親孝行を果たした。

 鷹党の度肝を抜いた。2回に1点を勝ち越し、なお1死一、二塁の好機。森下の変化球を捉えた。高々と上がった打球に左翼手はじりじりと後退。逆方向へ驚異の伸びを見せた白球は、そのまま左中間テラス席まで届いた。「シンカーを捉えられた。先制を許してしまい、打撃で取り返そうと思っていた」。捕手として先発大関を助ける一発を喜んだ。

 続く4回1死の打席は外角の直球を振り切った。1本目と同様の放物線は再び左翼テラスに飛び込んだ。さらに6回1死二塁ではカーブを左前に運ぶ適時打を放ち、合わせて3安打5打点。「もう最高です」。仕事で月に1度しか自宅に戻れなかった父の代わりに、少年野球の練習などで送り迎えをしてくれたのは桃子さんだった。「(記念の)ボールは両親に渡したい」。感謝の思いが最高の結果へとつながった。

 2019年に育成ドラフト1位で入団した頃には「甲斐選手を見習って、いつかはゴールデングラブ賞を取りたい」と口にした。強肩が強みだったが、「打撃はあまり自信がなかった」。その意識が変わったのは2年前の秋だった。フェニックスリーグで西武今井の直球を捉え、鋭いライナーで右中間を真っ二つにした。「人生で一番いい打球が飛んだ。そこからですね、変わったのは」。同年は腰痛に悩まされ、シーズンの大半はリハビリに費やされた。1軍級の快速右腕からの一打が覚醒につながった。

 オフの自主トレをともにした栗原から1軍昇格時に連絡が届いた。「おまえならできる。自信を持ってやれよ」。大けがをして苦しみの日々を送る先輩からの一言に背中を押された。「いろんな方から頑張れという言葉をいただいたので頑張りました」。初々しくお立ち台デビューをした4年目21歳、身長187センチの大型捕手。新星が華々しく輝いた。(長浜幸治)

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◆初安打が本塁打

 1983年4月10日に駒田(巨人)が大洋戦の初回、1死満塁で右田から右越えに放ったグランドスラムが有名。稲葉(ヤクルト)は95年6月21日広島戦の2回に紀藤から右翼へ先制2ラン。ヤクルトの村上は2018年9月16日広島戦で先発の岡田から右翼に2ランを打ち込んだ。3人はそれぞれ初打席でもあった。西武の山川は14年9月15日楽天戦の2回、先発辛島から中越えに先制ソロをマーク。ホークスでは95年にミッチェル、15年に塚田、19年には来日初打席の初球を捉えたコラスらの初安打が本塁打。20年には九鬼、21年には谷川原も記録した。

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