福岡の高校野球「もう一つの夏」指導者が企画した控え3年生親善試合

西日本スポーツ 前田 泰子

 第104回全国高校野球選手権沖縄大会が18日に開幕し、いよいよ球児の夏が始まった。九州各県は7月に開幕を迎えるが、夏の大会を前にもう一つの「夏」の熱戦が福岡で繰り広げられた。コロナ禍で試合や練習試合が中止になり、高校野球を十分に満喫できなかった選手たちのために、福岡市とその周辺の9校の指導者がメンバーから漏れた3年生のための親善試合を企画。トーナメントで行われ、18日の決勝で福岡大大濠が優勝して幕を閉じた。

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 平日の夕方、ナイター照明に照らされた選手たちがグラウンドで躍動する。安打が出るたびにベンチの選手もガッツポーズで盛り上がり、スタンドでは保護者がカメラやスマートフォンでわが子を追い続けていた。

 甲子園出場経験のある福岡大大濠と沖学園の一戦。3年生全員がベンチに入り、通常の練習試合とは雰囲気が違っていた。この日の主役は公式戦で出場機会のない控えの選手たち。中には一度も公式戦のベンチに入れなかった選手もいる。レギュラーの選手たちはこの日ばかりは2桁の背番号をつけてサポートに徹していた。「ベンチで声をかけていました。3年生23人全員が盛り上がって一体感がありました」と背番号23をつけた福岡大大濠の山下恭吾主将はいつもとは違う試合を楽しんでいた。

 控え選手が中心となって試合をする「福岡地区高校野球3年生親善試合」は福岡市と近郊の学校の指導者が企画した。この2校や筑陽学園など私立強豪校や春日、福岡工、香椎など公立校も含め計9校が参加。試合は夏の大会と同じトーナメントでコールドゲームも適用され、単なる「思い出づくり」ではなく「負けたら終わり」の緊迫感もある。「コロナ禍で高校野球だけでなく学校生活も十分にできなかった3年生のために、何かできることはないかと考えたんです」と春日の八塚昌章監督は説明する。

 始まりは2年前、コロナ禍で福岡大会がなくなったことだった。福岡県高野連が代替となる独自大会を行わないと発表すると、福岡市と近郊の学校の指導者が3年生のために、自分たちで新たな大会を開催しようと動いた。結局、県高野連主催の独自大会が行われたが、そこから指導者の親交が深まり、昨秋は9校で合同練習をする研修会を開催。今回の親善試合につながった。

 出場した選手の中には夏のベンチ入りをアピールする選手や、これを区切りにする選手もいる。沖学園はマネジャーの山下寛也が代打で出場した。昨秋、退部を申し出たが鬼塚佳幸監督やチームメートから説得されマネジャーに転向したという山下は、ファウルで粘った末に四球で出塁。「自分のスイングはできました。明日からはみんなをサポートします」と夏まで裏方で仲間を支えていく。

 結果は接戦の末15-14で福岡大大濠が逃げ切った。「3年生の意地がぶつかり合ったいい試合でした」と同校の八木啓伸監督。敗れた沖学園の鬼塚監督も「3年生は全員で試合がやれると喜んでいた。一体感があっていいゲームだった」と充実感を漂わせた。

 18日の決勝は福岡大大濠が香椎を破り初代王者に輝いた。夕暮れの球場でスポットライトを浴びた選手たちの顔はみんな輝いていた。(前田泰子)

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