【コラム】「何かを変えなきゃ」報われてほしい正捕手のけなげな姿勢

西日本スポーツ

【コラム:好球筆打】

 勝利をグッと手繰り寄せる、大きな2点となった。7回2死一、二塁で、9番甲斐が放った2点適時三塁打だ。「何とかチームのためにという思いだけでした」。7月31日の西武戦以来4試合ぶりの適時打に、甲斐は球団広報を通じて喜びのコメントを発した。

 直前の守りでは4番島内に、この日2本目の本塁打となる2ランを打たれて2点差に追い上げられていた。それだけに「終盤の大事な場面で大きい追加点を取ることができてよかった」とチームにとってはもちろん、グラウンド上の監督とされる捕手として、追加点の重みをかみしめていた。

 主戦捕手として試合に出始めたのは、シーズン103試合に出場した2017年からだ。その後は卓越したディフェンス力で球界を代表する捕手にまで成長した。前工藤政権下で4年連続日本一(17~20年)を成し遂げられたのも、甲斐の存在があったからと言っても過言ではない。

 だからこそ、勝つ喜びはもちろん、負ける悔しさの本当の意味を知る。ましてや、勝敗の責任を誰よりも負わされてきた正捕手だ。今季もなかなかチームが波に乗りきれず、2位に甘んじる。この状況は自身のふがいなさもあるが、何度眠れぬ夜を過ごしただろうか。たった一つの敗戦で、隠れて涙した日もあった。

 ただ、下を向いてばかりでは、自分にとって、チームにとって、何も生まれないという考えに行き着いた。「何かを変えなきゃいけないと思っていた。だから、そうすることで、少しでもチームにいい流れが来ればなと」。いまの自分にできることー。扇の要として考え抜いた末、攻守交代時の行動に変化を加えた。

 7月31日の西武戦から、甲斐は走ってポジションに就き、走ってベンチへ戻るようになった。高校球児のようにだ。もちろん、行動を変えたからといって、見違えるほど打てるようになったわけではないし、チームが勝ち続けているわけでもない。何より、以前のように絶対的存在ではなくなってきているのが現状だ。

 それでも何よりチームを思う。相変わらず、投手が打たれて敗れれば、責任の矛先は甲斐に集中するが、それも捕手の務めと受け入れる。そんなけなげな男の小さな努力。報われることを願うのみだ。(石田泰隆)

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