北海道から剣道留学、母の愛が支え 九州学院の山田凌平選手

北海道から駆けつけた母香奈枝さん(左)と父勝彦さん(右)に優勝を報告する九州学院の山田選手 拡大

北海道から駆けつけた母香奈枝さん(左)と父勝彦さん(右)に優勝を報告する九州学院の山田選手

 玉竜旗高校剣道大会男子で8年ぶりの栄冠をつかんだ九州学院(熊本)。決めたのは、大将山田凌平選手(3年)のここ一番での技の切れだった。北海道釧路市から剣道留学。日本代表候補に高校生で唯一選ばれるまでになった裏側には、古里を離れた寂しさに負けそうな「普通の子」を支えた母の姿があった。

 冬になれば気温マイナス20度、雪が1メートル以上積もることも珍しくない釧路。「勝負強い九州の剣道にあこがれていた」中3の山田選手が進学先に選んだのは、約1600キロ離れた熊本だった。母香奈枝さん(44)は「そんな遠い所に」と戸惑ったが、息子の「絶対、日本一になるから」という決意に返す言葉がなかった。

 高1の夏、山田選手には連日30度を超える暑さがこたえた。「いつ帰れるんだろうか」とばかり考えていた。気がつけば、実家に電話していた。兄の後を追って小1で道場に通い始めて以来、剣道一筋の息子が初めて見せた弱気。香奈枝さんの不安は募ったが、8月の帰省時に「もう釧路から出たくない」とこぼすと、こう突き放した。「自分で決めたことでしょ」

 熊本に戻った山田選手に届いたのは、香奈枝さんからの差し入れだった。懐かしい古里限定の即席麺や飲み物に、見失いかけた目標がまた鮮明になった。ただ、前だけを向いた。

 大将同士にもつれこんだ29日の決勝。山田選手の竹刀が相手の面をとらえた瞬間、固唾(かたず)をのんで見守っていた会場にあふれたのは歓声よりもどよめきだった。

 家を出るときの約束を果たし、山田選手は全国総体優勝、来年5月の世界選手権出場を目指す。「どこまで行ってしまうんでしょう。怖いぐらいです」。会場に駆けつけた香奈枝さんは、息子の成長を目に焼き付けた。

 ※玉竜旗高校剣道大会の動画はこちら

=2014/07/30付 西日本新聞朝刊=

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