大隣、422日ぶりに勝利

おかえり! 本拠地のファンの前に大隣憲司投手(29)が帰ってきた。最後に先発した昨年5月31日の広島戦以来となる422日ぶりの勝利をつかんだ。首位攻防3連戦を3連勝で締めくくる7回被安打3。初回の1失点だけで危なげない投球を披露した。真っ赤に染まったスタンドから湧き起こった惜しみない拍手に応えた「感謝」の1勝。真の復活ロードを歩み始めた大隣とともに秋山ホークスが首位独走へのスタートを切った。

 ここで涙を見せるつもりはなかった。真っ赤に染まったスタンドから送られる拍手。高ぶる感情を抑えながら、大隣は笑顔をつくった。「ここまで支えていただいた皆さんに、『感謝』の気持ちを込めて投げた」。422日ぶりの白星。自身にとっても、チームにとっても大きな意味を持つ勝ち星で思いを伝えた。

 「自分らしい投球ができた」。昨年5月31日の広島戦(ヤフオクドーム)以来の先発登板。初回はやや制球を乱し、1死一塁からバトラーに先制の適時二塁打を許した。ただ、直後の1死一、二塁でペーニャを投ゴロ併殺に仕留めると自分を取り戻した。

 2回以降は得点圏に走者を置くことなく、最速140キロの直球を走らせ、変化球を操った。「2軍ではなかったくらい、いい具合に力が抜けて投げられた」。余力を残した7回108球、被安打3で1失点。5奪三振の中に本来持つ能力があった。

 昨年6月に国指定の難病、黄色靱帯(じんたい)骨化症の切除手術を受けた。優子夫人の献身的な支えもあり、長いリハビリに取り組んだ。13日の日本ハム戦(札幌ドーム)では中継ぎで1軍復帰。1イニングをパーフェクトに抑え、この日のスタートラインに向かった。

 本拠地のマウンドに上がる登場曲に選んだのは、好んで聞くヒップホップミュージシャン「AK-69」の「START IT AGAIN」だった。「ずっと、これにしようと思っていた」。必ず復活する。それは慕ってきた先輩との約束とも重なる、大隣の決意だ。

 2007年の入団時から親しくしてきた4学年上の新垣が、トレードでヤクルトへ。発表当日の20日は直接言葉を交わせず、メールで思いを伝えた。「1軍で元気な姿で、お会いできるのを楽しみにしています」

 返信はすぐにきた。「ありがとうな お前もまた新しい一歩を大きく踏み出せ」。胸が熱くなった。「(新垣)渚さんのいいときを僕は見ているから」。生え抜きの2人は境遇こそ違うが、復活の途上で今季はともに3軍登板を経験。交わし合ったエールを実現したい。その思いがあった。

 マウンドに送り出した秋山監督は「すばらしい投球。積み重ねていたものが出ていてよかった」と称賛。首位攻防戦での3連勝と今季最多の貯金18を呼び込んだ左腕を褒めた。きょう28日に一度出場選手登録から外すが、近いうちに先発機会を与える方針だ。

 「これで復活と言えるか」。報道陣に問われた大隣はこう答えた。「まだ1勝しただけ。この先、先発として一年間仕事ができてから」。涙を流すのはそのときだ。 (谷光太郎)

=2014/07/28付 西日本スポーツ=

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