小倉ミッドナイト競輪/プロ集団がつくり出す充実の中継番組

 競輪界が発案した深夜開催の無観客レース「ミッドナイト競輪」が、着実に注目度を増している。第1レースの開始は午後9時を回ってから。空っぽのスタンドの小倉競輪場(北九州メディアドーム、北九州市)で熱戦を繰り広げている。その模様を伝えるのは、インターネットとCS放送の中継。観客を入れずに行うレースだけに情報発信は重要で、近況は中継内容の充実と相まって、売上額という結果も表れている。今回は、そんな業務を陰で支える人たちをクローズアップ。彼らに根付いたプロ魂は、不振にあえぐ業界をトンネル脱出に導く活力源になっている。 (野島成浩、森川和也)

■“大人な雰囲気”人気

 スタジオに静寂が広がった。レース開始のまだ2時間前というのに、出入り口の扉が閉められ、緊張感も一気に高まった。中継スタッフのミーティングのスタートだ。

 「小柄ながら、闘志あふれる動きの3番選手に注目です」。解説を担当する武田圭二さん(コンドル出版社※注1)は、中継時さながらのトークをスタッフの前で始めた。本番前の確認をしているのかと思いきや、それだけではなかった。「彼らが番組作りのプロであるのは当然。それと同時に、競輪のプロにもなってほしいのです」

 ▼現場の一体感を

 生放送の現場でミスを予防するには、どうすべきか。その思いが、ミーティングに詰まっているのだ。「失敗するなと、スタッフにただ言うだけでは限界がある。レースの見どころや、選手の特徴を分かって番組を制作していけば、お互いのミス防止になる上に、現場の一体感も強くなる」。中継番組を育てて、スタッフも育てる。父親のような感覚がそこにある。

 レース実況と司会進行を務めるのが、橋本悠督さん(フリーアナウンサー)。昼間の開催とは時間帯が違うため、「他競技のナイター開催が終わってからも楽しめる“大人の時間”の雰囲気を出したい」という。

 画面の前にいるファンには、晩酌をしながらレースを楽しんでもらいたい。だから出演する際の衣装も「堅すぎず、派手すぎないもの」をさりげなく選択。バンクの真剣勝負を熱く伝える一方、そんな自然な演出で視聴者の心をつかみ取る。

 出演する2人と、カメラや音声などのスタッフたちをつなぐのが、長尾浩二さん(日本写真判定※注2)の務め。同社西日本事業所小倉担当所長として中継を統括する現場責任者だ。見どころの解説と併せて、ファンが車券を買う時間も確保しながらの生放送は、息が詰まる展開の連続。それでも「リラックスできる空間づくりのお手伝いができれば」という思いで、放送のBGMにまで気を使う。「深夜に流れるラジオ放送をイメージして、2人の話を聞くときにはこの曲、車券を検討して投票という集中する場面ではこんな曲、という具合に選曲しています」

 それぞれのプロがつくり出す約2時間半の中継は、あっという間の楽しいひととき。ちょうど小倉のミッドナイト競輪は12月から、開催数が大幅に増加。さぁアナタも、チャレンジしてみては? 舞台裏を知ったことで、的中率もグーンとアップしちゃうかも!?

 (※注1)有限会社コンドル出版社 熊本競輪の第1回開催(1950年)から同競輪場内で予想業を営み、予想紙「コンドル」を発行。武田圭二さんは、兄の一康さん、弟・幸三さんとともに、精力的に取材活動をしている。書道家・武田双雲氏の父でもある。

 (※注2)日本写真判定株式会社 全国の公営競技場(競輪、ボートレースなど)で、専用カメラを用いてゴール写真などを撮影し、レースの着順などを判定する業務に携わる。レースの施行権を持つ自治体の要請を受けて、競輪場やオートレース場の運営も手掛けている。小倉競輪では、着順の判定のほか、レースの中継放送が主な業務。

    ◇      ◇

■運営サイドも細かい気配り

 小倉ミッドナイト競輪の注目度の上昇は、運営サイドの気配りによるところも大きい。井手和孝小倉競輪運営事務局長=写真上=は、メディアでの告知を地道に続けることに傾注。「開催日時を広く、明確に伝えることで、現在の高い売上額を維持できる。また、他競技のレースがない深夜とあって、ファン層が絶大な競馬ファンも注目してくれる。次はそんなファンに、ミッドナイト以外の競輪も楽しんでもらえれば」と波及効果にも期待する。

 選手の対戦カードを決める「番組マン」も一工夫。JKAの小倉競輪担当・萬治実(ばんじ・みのる)番組編成長=同下=は「このレースはどの選手が強いのかなど、既存ファンだけでなく新規層にも見極めてもらえる組み合わせを、ミッドナイトでは特に心掛けている」と、“分かりやすさ”に貢献している。

 関係部署がそれぞれベストを尽くすことで、業界の斬新な試みは今、確実に軌道に乗った。

 ◆車券を買うには ミッドナイト競輪の車券は、競輪場や専用場外施設の窓口では一切買えない。購入はインターネットで行うが、所定の手続きを踏むだけでOK。

 「競輪ネットバンクサービス」の対応銀行(ジャパンネット銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行)の口座があれば、ネット上で申し込みを行うと加入手続きが完了し、すぐに車券が買えるようになる。

 購入用のホームページ(HP)は、競輪の公式HPから、申し込みの際に付与される「インターネット投票認証ID」と、設定したパスワードでログイン。あとはマークカード感覚で簡単に車券が買える。締め切り時刻は発走予定の5分前。

 競輪ネットバンクサービス対応の銀行口座がない場合は、口座を開設した上で同サービスに申し込むことになるが、口座開設の申し込みもネットで行えるので便利だ。

 ◆ミッドナイト競輪 競輪業界が、売上高の回復にと、他の公営競技も含めてレースが行われていなかった深夜の時間帯に着目して始めた開催形態。ドームとあって周辺に影響が出ない小倉競輪が、2011年1月14日に初めて開催した。従来の9人より少ない7人で争うため、新規ファンでも推理がしやすく、観客を入れないこともあって開催費用を圧縮でき、高い利益率を実現している。12年2月には前橋が、同年10月には青森が、小倉に追随してミッドナイトを導入。来年1月からは高知でも開催される。

 ◆小倉競輪 1948年、国体で使われたバンクを活用して、日本で初めて競輪を開催。98年にドーム競輪場に生まれ変わった。施行者の北九州市(合併前は小倉市)が直接、運営してきたが、2006年度からは運営業務を民間に委託。レースの審判などを行う日本自転車競技会(07年度上期まで九州自転車競技会。14年度にJKAと合併)と、場内警備などを担当するコアズ社の共同事業体が、業務を請け負っている。

■本年度の1日平均売上額

 全国昼間普通開催 3847万円
 小倉ミッドナイト 8111万円

    ◇      ◇

■今後のミッドナイト日程

【12月】

6~7日 小倉

17~19日 前橋

20~22日 小倉

26~28日★小倉

【1月】

2~4日 小倉

7~9日 小倉

10~12日★高知

14~16日★前橋

18~20日★小倉

21~23日 前橋

24~26日 高知

31~2日★小倉

※★はガールズ開催


=2014/12/02付 西日本スポーツ=

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