飯塚オート応援団/フリーアナがPRに奔走

 経営改善のため、新年度の4月から運営を民間に委託する飯塚オート(福岡県飯塚市)。民間ならではのアイデアが活用できるだけに、復活への期待が集まる。ただ復活を支えるのは、業務を委託された会社ばかりではない。草の根の“応援団”の輪も着実に拡大中だ。CS放送で飯塚オートのレース中継の司会進行を務めるフリーアナウンサー内野久照さん(45)は「飯塚オート盛り上げ隊」の隊長として広報活動を行い、同オートの認知度アップに貢献している。内野さんに巻き込まれるように、レース中継の解説者やイメージガールも、それぞれの立場でPRに尽力。復活への機運は既に足元から高まりつつある。

■無給で広報活動フリーアナ内野さん 「にぎわい取り戻す」

 とにかくアツい。オートの話が止まらない。それほどの“オート愛”が高じて、内野さんは3年前、「飯塚オート盛り上げ隊」を設立した。「かつてのにぎわいを取り戻したい」との一心からで、「毎日、オートだけを考えて生きています」。個人も家庭も全てを後回しにして、無給の広報活動に飛び回る。

 以前は興味がなかったオートだが、十数年前に仕事で携わると、すぐにとりこになった。「最高時速150キロのスピード、おなかの底まで響くエンジン音、抜きつ抜かれつのスリリングなレース展開。たまりません。最高です。感動です」

 仕事への熱も増し、当初の初心者は今や名物司会者に。“うっちぃ!”という愛称まで付いた。それだけに飯塚オートへは感謝しきりで「アナウンサー経験のなかった自分を起用し、育ててくれた」。盛り上げ隊はその恩返し。ではどうすれば客足が戻るのか。街の声を聞くと「昔は行っていたが…」「いつ開催しているの?」。以前は近かったはずの市民とオートとの距離感が、いつの間にか遠くなっていることを感じ取った。

 そこで内野さんは、飯塚オートの開催告知のポスターを携えて街に飛び出した。営業マンの経験を生かし、飲食店や商業施設、会社のオフィスなどに“飛び込み営業”で、ポスターを張ってもらう活動を始めた。すると、「△△を紹介するね」「自分も○○に張るよ」と、賛同する“新隊員”が次々に登場。隊長1人で始めた活動は、レース場の地元の筑豊地区だけでなく福岡市にも広がり、ポスターの協力者は300件以上になった。

 内野さんは、盛り上げ隊の名前で交流サイト「フェイスブック」も運営。ポスターを張った店舗等をサイト内で紹介し、協力先のPRにも貢献する。併せて、選手の表情や場内イベントの様子などを発信。ポスターで生まれた関係をきっかけに、より親しみが持てる情報の提供を心掛ける。

 筑豊の祭りなど地域イベントにも積極的に参加する内野さんは「飯塚オートが再び、大観衆で沸くレース場になるように、活動を続けたい」。大観衆を集めた時代は、オート自体が一大イベントだった。現代でも変わらぬその魅力を多くの人に知ってもらうため、うっちぃ!は今この瞬間も、どこかでアツくオートを語っているはずだ。

 ◆内野久照(うちの・ひさてる)1969年6月2日生まれ。福岡市在住。携帯電話など通信機器の営業マンから、アナウンサーに転身。2004年から飯塚オートのレース中継の司会進行を担当する。趣味のバドミントンのおかげか、取材時のフットワークは軽やか。ジョークも軽妙(?)。

■中継解説で盛り上げる釜本さん 「身をささげる覚悟」

 「外から見るようになって、オート愛はさらに深まった」-。元飯塚オート所属のレーサーで、レース中継の解説を務める釜本和茂さん(43)も、並々ならぬ情熱をオートに注ぐ。引退後は運輸関係の会社に勤める中、飯塚オートの「解説をしてくれないか」との依頼を快諾。有休を使って、会社勤めとの二足のわらじを履く。それだけ理解のある勤め先も、飯塚オートのよき応援者だ。

 解説者になりたての1年前は遠慮がちで、現在90キロの巨体に似合わない、か細い声だったが、今では堂々としたもの。整備巧者として鳴らした元レーサーならではの鋭い観察眼で、予想も的確だと評価はうなぎ上り。

 そんな予想とともに、解説に込めている内容がある。「わずか1分50秒の各レースに凝縮された、ドラマを感じ取ってほしい」ということだ。逃げ切りを図る選手、追い込む選手…。置かれた立場の違う各選手が、レース運びはもちろん、出走前の整備の段階から展開する駆け引きは、まさに人間模様。そんなギャンブルを超えた面白みを広く知ってもらうためにも、今後も「身をささげる覚悟」で、カメラの向こうのファンと向き合う。

 ◆釜本和茂(かまもと・かずしげ)1971年6月6日生まれ。福岡県飯塚市在住。91年7月にデビュー。優勝1回。2011年3月に引退し、体重はなんと20キロ増。14年3月から飯塚オートの解説を務める。趣味は金魚(ランチュウ)飼育。

■AKIちゃん「完全にハマった」 イメージガールはSNSで発信

 「完全にハマっちゃいましたぁ~」。オートの存在を知らず、筑豊地区を訪れたことすらなかったAKIちゃんも、熱烈な応援者の一人。飯塚オートの「勝利の女神」を拝命して間もなく2年。最初は各選手の人間性に引かれ、次第に競技そのものへの興味が増したという。今ではプライベートでも飯塚オートにたびたび出没し、バンバンと車券を買いまくるなど、オートに首ったけだ。

 タレントとしてテレビ番組への出演も多数。その知名度を生かし、ツイッターやフェイスブック、ブログでオート情報を発信し続ける。「“AKI”を検索してくれた人が、『オートレースって何かな』と思ってくれたらいい」。得られる成果はほんの少しかもしれない。それでも「何もしないよりはまし。絶対に無駄ではない」。オートファンの底辺拡大へ、今もブログを更新中かな…。

 最後に、AKIちゃんファンに耳寄りの情報。「私の給料日の後にオートが開催されていれば、買っていますよぉ」と言うから、その時は飯塚で会える確率が高いはず。神秘的な女神様も、実はサラリー制だったか…。

 ◆AKI 本名・緒方晶子(おがた・あきこ)。1990年9月3日生まれ、24歳。福岡市在住。2013年4月、飯塚オートのイメージガール「勝利の女神」の3代目に。RKB毎日放送「城島健司のJ的な釣りテレビ」などにも出演中。

    ◇      ◇

 ◆飯塚オート 1957年2月に開設。67年10月に現在地に移転し、舗装路になった。75年には最高で1日に3万人が詰め掛け、ピークの91年度には424億円を売り上げるなど、一大レジャー施設として存在感を誇った。市財政への貢献度も大きく、繰り出し金は通算で587億円にも上る。近年は業績不振のため、2015年度からは運営を民間企業に委託。委託先は、車券など投票券の発売機や集計システムの大手で他のレース場運営も手掛ける「日本トーター」(東京)。

 ◆飯塚オートのレース中継 開催中は、CS放送スカパー!の無料チャンネル「ベターライフチャンネル」(529ch)で全レースを実況中継(または同じく無料の528ch)し、オートレースの公式サイトでもスカパー!と同内容を配信。内野さんと釜本さんの掛け合いが見られる。


=2015/02/24付 西日本スポーツ=

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