ボート116期生九州・山口ルーキーズ まもなくデビュー戦

チャンプ決定戦でトップを独走する田中宏樹 拡大

チャンプ決定戦でトップを独走する田中宏樹

やまとチャンプ決定戦に出走した6人 田中宏樹 大山千広 小川日紀太 橋本英一 松本峻 菊池宏志 池田奈津美 山崎鉄平 檀将太

 ボートレースの選手養成所「やまと学校」(福岡県柳川市)を3月に卒業した116期生29人(うち女子7人)が間もなく、全国各地でデビュー戦を迎える。九州・山口からは、卒業レースを制して“やまとチャンプ”に輝いた田中宏樹(27)=福岡=をはじめ10人(うち女子2人)が登場。ボートレース界のトップを目指して日々精進を誓う若者たちを紹介する。

■田中宏樹 熱い心で激戦演出

 田中宏樹のボートレースとの出合いは、大学時代のキャンパスだった。「授業でたまたま、隣の席になった青年からボートレースの面白さを教わって、一緒にレーサーを目指すことになった」。その青年とは、徳島支部の河野大だ。一足先にレーサーになった河野に対し、田中は大学を出て公務員(延岡市役所)に。回り道をしながらも同じ土俵に立てたことに、ホッとした表情を見せた。

 リーグ戦勝率は6・42と上位だったが、決して順調ではなかった。訓練の前半の時期は「旋回が下手で、自暴自棄になることもあった」。上昇のきっかけは、やまとへ指導に訪れた現役選手がくれたシンプルな助言だった。「何も考えずに乗れ」-。その一言で「自分はどこか空回りしがち。肩の力を少し抜くぐらいがちょうどよかった」と目覚めると、「自分に自信もついて、楽しくなった」。最後のやまとチャンプ決定戦も、レース前の会見で「コンマ15前後の全速Sからまくっていきたい」と宣言すると、その通りの勝利。最高の形で卒業を迎えた。

 周囲の評価は「熱心すぎるぐらい熱心」という炎の男。「レースを盛り上げる選手になる」という夢を実現する資格は、既にあふれるほどだ。

■大山千広 尊敬する母を追い

 大山千広が、尊敬する母と同じ道を歩み始めた。母は女子有数の攻撃力を持つ現役レーサーの博美。その能力を受け継ぎ、やまと学校には一発合格。入学後も、めきめきと力を向上させた。「同じ女子も意識はするけど、男子に負けたくないと思ってやってきました」。勝負根性も母譲りだ。

 半年前の115期のやまとチャンプ決定戦を見て、心に決めた。「自分もチャンプ決定戦に出場できるように頑張る」。決定戦出場にはリーグ戦の勝率で上位6人に入るのが条件だが、ギリギリではなく、堂々の2位で出場をかなえた。結果こそ5着だったが、リーグ戦で披露した旋回の切れ味やS力は、元トップ選手で引退後は実技教官を務める荘林幸輝さんの折り紙付き。紛れもなく期待の星だ。

 母・博美の背中を見て育った。今でこそ花盛りの女子レースが不人気だった時代から懸命に走る母は、ずっと憧れの的。その母を超え、女子ナンバーワンの座を目指す。

■小川日紀太 13度目で合格通知

 実に“13度目の正直”だ。元航空自衛隊の小川日紀太(にきた)は、入隊前からやまとを受け続け、12回の不合格。その後にようやく吉報を受け取った。

 レーサーを志したのは「実力主義の世界に魅力を感じたから」。訓練の厳しさも覚悟の上だったが「不器用なので旋回に苦労した」。それでも徐々に技術は向上。荘林教官も「真面目でいいものを持っている。素質がある」とエールを送る。

 目標とする選手は、同じ宮崎出身の日高逸子。「レーサーとしてはもちろん、それ以外でも活躍していて、尊敬している」と憧れを抱く。その大先輩に近づくため、「コツコツやることで実力をつけていきたい」。たとえ不器用でも、日々を大切にする努力の姿勢は決して裏切らないはずだ。

■橋本英一 未知の世界へ転身

 橋本英一(ひでかず)にとってボートレースは、社会人になってからも全く知らない世界だった。ところが「職場の先輩に観戦に連れて行ってもらい、体形面からもレーサーを勧められた」ことで人生は一変。「約1分半で全てが決まる」というボートの魅力に引き込まれ、たった1度のやまと受験で合格した。

 訓練の序盤はリーダー役の小隊長を務め、目配りの良さを発揮。周囲への心配りも欠かさぬ好青年で「幅広い年齢の同期と協力して訓練を乗り越えたこと」を、やまとの一番の思い出に挙げる。技術も最後は飛躍的に向上し、リーグ最終戦で優勝。「スピードがつき、いいターンができている」と荘林教官。「SG優勝」という目標へ向けて、第一歩を踏み出す。

■松本峻 夢への設計図描く

 6度目の挑戦で合格した松本峻(しゅん)は、工学部の出身。建築士を目指していたが、幼少時からの夢を諦め切れず、レーサーへの道を選択した。

 昨秋、落水事故で指をけが。「2カ月間訓練に参加できず、苦しかった」。リーグ戦も最初の2戦は見学だったが、弱音は吐かず、けがの状態なりにできることを模索。「減量は毎日していた」。さらに「その出来事があったからこそ、今の自分がある」。全ての経験をプラスに転換できる思考はこれぞプロだ。

 将来は「お客さまに人気のレーサー」と公営競技選手の理想を求める。そのために「小さな目標を一つ一つ達成していく」。建物も仕事も基礎からの積み上げが大事。夢の実現への設計図は、明確に描かれている。

■菊池宏志 粘り強さが持ち味

 幼少の憧れの記憶を、初挑戦で現実のものにした。菊池宏志のレーサーへのきっかけは、幼い頃に乗ったペアボート。「迫力に魅了された」。やまとは1度目の受験でパス。合格通知を手にした際には「期待と不安の両方があった」が、「絶対にレーサーになるという意志が強まった」と覚悟を持って入学し、厳しい訓練生活も乗り切った。

 強みは、何事にもコツコツと取り組める粘り強い姿勢だ。リーグ戦でもじわりと成績を上げ、最終第7戦が最も好成績だった。目標とするSG常連のためには「闘争心が必要」との自己分析。ただ、「つらさ、きつさから逃げずに取り組める」という長所があれば、どんな場面でも存在感を見せる積極的なレーサーになっていることだろう。

■蒲原健太 自らに試練で向上

 「努力に勝る天才なし」を座右の銘に掲げる蒲原(かもはら)健太は、高校までソフトテニスに打ち込み、インターハイにも出場した身体能力を誇る。

 己に打ち勝つ難しさをテニスで学んだ自律精神に富んだ男は、やまと学校でも自らに試練を与えて力量アップに努めた。リーグ戦は、不利な外寄りコースから勝負を挑んだレースが大多数。目先にとらわれない向上心を打ち出した。技術面の評価も高く、荘林教官は「外マイが得意で旋回力がある。これから伸びるはず」と将来を約束する。やまと最後のレースは1着。「1年間支えてくれた教官、家族、友人のため、絶対に1着を取るつもりだった。感謝の気持ちでいっぱいです」。成長を重ねることで、さらに恩返しを体現する。

■池田奈津美 ピッチから水上へ

 ピッチから水上へと活躍の舞台を移す。池田奈津美は小学校からサッカーに力を注ぎ、大学時代は国体メンバーに選ばれたほど。しかし、その国体直前にまさかのけが。落ち込む池田を元気づけようと、現役オートレーサーの父・康範が連れて行ってくれたのが、ボートレース観戦。その出合いが人生の進路を決めることになった。

 やまとで苦しんだのが減量。「筋肉が落ちなくて…」。それだけ鍛え込まれたからこその苦労だが、精神面も同じように強化されたあふれる気概の持ち主なら、必ずや克服するに違いない。

 目標は「年末のクイーンズクライマックスの優勝戦に1号艇で出場して優勝すること」。王道の勝ちっぷりを目指して、さあキックオフだ。

■山崎鉄平 熱血球児が艇界へ

 佐賀からまた一人、甲子園球児がボート界入りだ。山崎(やまさき)鉄平は高2の夏に甲子園のベンチ入り。努力が結果につながることを体験した。レーサーに進んだのは小柄な体格を生かせるプロスポーツだから。やまとには3度目の受験で合格。三井所尊春(佐賀商)藤田浩人(同)ら佐賀の球児の先輩に続いた。

 訓練生活を振り返って「ミスが多く、自分の行動をよく後悔した」と反省。ただ、荘林教官は「荒っぽさはあるが、光るものがある」と潜在能力の高さを評価する。尊敬する選手は同支部の峰竜太。「Sが早く、旋回がダイナミックなのが魅力」と語る。峰は誰にも愛される人間性も持ち味。あらゆる面でお手本になる先輩を目標に、デビュー戦に臨む。

■檀 将太 胸にレーサーの魂

 高校まで水泳部の檀将太は、現役競輪選手の父・雄二の勧めでボートへの道を決めた。おとなしい印象だが、内に秘めた闘争心は誰にも負けない。「妥協なしの父には気合を教わった」と、レーサーの魂を引き継ぐ。

 やまとの訓練ではターンの安定性を身に付け、事故も少なかった。荘林教官は「ターンマークに対しての距離感が良く、走り方のセンスがいい」と評価。リーグ第6、7戦で優出。訓練終盤になるにつれ、S力や旋回力をいっそう発揮した。

 同じ福岡支部の瓜生正義を尊敬。瓜生のように、実力と人間的な魅力を兼ね備えた選手を目標に「いろいろなことに挑戦して努力したい」。いずれは、自らも目標とされる選手になれるよう、日々を歩むつもりだ。


=2015/05/05付 西日本スポーツ=

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