二刀流レーサーの逆転劇 本能の滑りで金つかむ

 フィギュアスケートの男子フリーで羽生結弦が演技を始める30分ほど前のこと。NHKのBS1は、アルペンスキーの女子スーパー大回転は20人が滑り終えた時点でソチ五輪女王のファイト(オーストリア)が連覇と伝えて、フリースタイルスキーの女子スロープスタイルに切り替わった。

 ところが、しばらくして再び画面が女子スーパー大回転に戻り、なんと26番スタートのレデツカ(チェコ)が0秒01差で逆転優勝したことを淡々と報じた。22歳のレデツカはスノーボードのパラレル大回転との二刀流レーサー。スキーのワールドカップ(W杯)では表彰台に立ったことのないダークホースだった。


 ▽思い込み

 アルペンスキーのスタート順は最近のワールドカップ(W杯)などの実績を基に決められる。滑降、スーパー大回転の高速系は上位10選手が、1~19番までの奇数順を選択、次の10選手が20番までの偶数順となる。21番から30番はシード選手とはいえ、実力的には劣ることになる。

 オーストリアやイタリア、スイス、米国などアルペン強国はこのリスト上位に何人も含まれるが、五輪出場は最多で4人。その選手を除くと21番以降に強い選手はいないはずという思い込みがあった。


 ▽尻上がり

 なぜ26番スタートのレデツカは勝てたのか。中間計時の順位を見ると、15位、8位、2位と尻上がり。急斜面で左右に大きく旗門が振ってある中間セクションでタイムを稼いだことが分かる。雪面が締まり、遅いスタートでも条件が悪くなかったことも大きかったろう。

 スキーの技術はしっかりしていた。ターンの切り替えや体重移動などはトップ選手に遜色はない。ただ起伏への対応はあまり上手ではないようで、小ジャンプで体勢を乱すシーンもあった。


 ▽情報不足

 私の大胆な仮説は、ライン取りの良さが大きかったというものだ。この日は優勝候補のボン(米国)が1番スタートで好走しながら、ゴール前で大きく膨らみ失速。ゴール付近にいた各国コーチはそれを無線でスタート地点に伝える。選手は冒険しないラインを選び、一定の目標タイムができた。

 ところがチェコからはレデツカよりもスタート順が遅い選手が1人いるだけ。不要な情報が伝わらず、スノーボーダーの本能のままに直線的なラインを取ったのが当たったというのが真相ではないだろうか。

 レデツカはゴール後しばらく前を向いたまま動かなかった。トップに立ったことが信じられず、計時装置が故障して動かなかったと思ったという。痛快な出来事だった。(共同通信社=石井浩)

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