悲劇の重盗失敗 内川涙…WBC準決勝で侍散る

 3連覇の夢がついえた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表は17日(日本時間18日)、準決勝のプエルトリコ戦に1-3で敗れ、散った。2点差に追い上げた8回1死一、二塁の反撃機に内川聖一外野手(30)が痛恨の走塁死。このプレーで勝機が大きく遠のいた。再三の好打で侍ジャパンを救ってきたヒットメーカーは3連覇の誓いを果たせず、試合後に悔し涙。無念の思いを抱えて、きょう19日に帰国する。

 大きな目には何も映らない。ゆがむ視界。必死にこらえようとすればするほど、内川の涙腺は緩み、熱いものがほおを伝った。終戦後の三塁側ベンチ。森福に肩を添えられ、やっと腰を上げた。

 「あれはやってはいけないプレー。言い訳はできない。飛び出した自分が悪い」。心の整理がつかないまま、ロッカーで時間を過ごし、姿を見せた球場の通路。内川は8回の走塁死を振り返った。3点のビハインドから井端の適時打で1点を返し、なおも1死一塁。自身も右前打で続き、1死一、二塁で阿部につないだ直後、悲劇は起きた。

 1ストライクからの2球目。ベンチは、自己判断で盗塁を仕掛けていいという、いわゆる「グリーンライト」と呼ばれるサインを出した。投手の大きいモーションを突いた勝負手。走りかけた二走の井端を追うように内川もスタートを切った。ただ、数歩走ったところで井端は急停止し、二塁ベースに戻ってしまう。それに気付いたときには二塁ベース手前まで達しており、かといって一塁にも戻れない。立ちすくむ間に、捕手のY・モリーナにタッチされた。

 モリーナは強肩。ましてや重盗では二走のスタートを見てから、一走は走る。だから、捕手は三塁ではなく二塁で刺しにくるケースがある。決して俊足とはいえない内川に重圧がかかっていたのは、容易に想像できる。それでも井端のストップに反応できなかったのは事実。「日本からもたくさん応援していただいていたと思う」。涙をこぼすまいと上を向くが、唇は震えたままだ。

 「必ず3連覇を達成し、日本のファンの皆さんの前に帰って来ます」。そう誓って渡米した12日の2次ラウンド・オランダ戦後から1週間。約束は果たせなかったが、内川の奮闘なしに準決勝までたどり着けなかったのもたしかだ。1次ラウンド初戦。1点ビハインドの8回に先頭打者で左前打を放った内川のバットからブラジルに逆転勝ちした。2次ラウンド初戦の台湾との死闘でも、2点を追う8回、同点に追い付く好機を演出した。23打数8安打の打率3割4分8厘。チームで井端に次ぐ数字も、今の内川には意味を持たない。

 「今回の大会だけでなく、過去2大会、連覇を果たされた選手がいらっしゃる。それを自分のプレーで終わらせてしまった…」。消え入りそうな語尾。前回大会で歓喜に浸り、今回は失意に沈んだ。不完全燃焼のAT&Tパークに背を向け、帰途に就く。言いようのない悔しさをぶつけるのは10日後に迫ったシーズンしかない。 (石田泰隆)

2013/03/19付 西日本スポーツ

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