九州地区プロ自転車 北津留が完全ガイド

北津留翼 拡大

北津留翼

4人のチームワークが勝敗を分ける団体追い抜き スプリントのスタート。お互いの駆け引きはもう始まっている チームスプリントのスタート。ここからすみやかに、最内の選手を先頭に3人が縦列となる

 競輪選手たちが、一アスリートとして頂点を目指す-。別府競輪場(大分県別府市)で23日、「第40回九州地区プロ自転車競技大会」が開かれる。入場無料。普段はファンの期待を背負って走るプロの競輪選手たちが、車券に関係なく自転車競技のさまざまな種目で真剣勝負。来年5月に取手競輪場(茨城県)である全国大会出場を目指して争う。でも自転車競技って何? そんな疑問や質問に、国内を代表する自転車競技の強豪でプロ競輪選手の北津留翼(28)=福岡A=が答えてくれた。大会当日は素人脚自慢などのイベントも実施。各種目の見どころを押さえて、23日は別府を訪れよう。 (手塚貴宣)

高い技術の先頭交代
【4km団体追い抜き】

 通称・団抜き。1チーム4人で400バンクなら10周のタイムを競う。ホーム側とバック側から2チームが同時にスタート。縦列で走る4人が「先頭交代」を繰り返して周回を重ね、3人目の走者がゴールした時点でフィニッシュとなる。

 この種目のポイントは「いかにロスをせず先頭交代を行うか」(北津留)。先頭交代は、空気抵抗の負担を皆で分担し、スタミナを保つのが目的。簡単そうに見えるが「コーナーの遠心力を利用して退避し、下りの重力を使って最後尾に付き直す。その際、バンク外周の長い距離をあえて走り、スピードを落とさずに後ろに下がる」という高等技術が必要とされる。そのため、チームの練度が上がるほど先頭交代の回数は増え、タイムもアップする。

 3人がゴールすればOKのため、ラストスパートの段階では「1人が犠牲になって、残り3人を全力で引っ張る。犠牲の役目は一番強い選手が担う」。そしてフィニッシュ体勢。「前の2人は外側、3番目の走者はスリップストリーム状態になる内のコースを踏む」

 チームの呼吸が合わなければ途中でバラバラになることもあり、最初から最後まで気が抜けないストイックな種目。地区プロでは大分チームが6連覇中だ。

〝お家芸〟の花形種目
【スプリント】

 自転車競技で一番の花形種目。中野浩一氏が世界選手権で10連覇。1984年のロサンゼルス五輪では坂本勉氏が銅メダル。かつての日本の“お家芸”だ。

 あらかじめ200メートルのタイムを計り、その順位で1回戦の対戦カード(1位VS最下位、2位VS下位2位…)を決める。一対一の対戦で、持ちタイム上位が白、下位が赤のユニホームで一緒にスタートラインにつく。残り200メートル以降の斜行は禁止だが、大幅な後退と極端な進路妨害以外はどんな走行もOK。とにかく先にゴールすれば勝ちだ。

 最大の醍醐味(だいごみ)は駆け引き。スピードを緩めてほとんど止まったり、バンク最上段まで上がったりしながら出方を探り合い、自ら逃げたり、あえて相手を逃がしたり…。

 この種目の第一人者・北津留が挙げるキーワードは「0・3秒」だ。「予選のタイム差が0・3秒以内なら、タイムで劣る選手も戦略次第で勝てる」。これは「相手の仕掛けに反応し、トップスピードまで持っていく時間が最低でも0・3秒必要」という理論に基づく。400バンクなら2コーナーの入り口付近が勝負どころで、逃げる側はその時点で0・3秒以上の差をつければ勝負あり。一方、追いかける側は0・3秒以内なら勝てる位置だ。

 V候補は昨年のロンドン五輪代表の中川誠一郎をはじめ、荒井崇博、井上昌己。

生き残り懸け頭脳戦
【エリミネーション】

 1周回ごとに1人ずつ脱落する、いわば“サバイバルレース”。一般的には14~18人で行うが、今大会は20人がエントリー。各周回の最下位選手が1人ずつ「エリミネート=除外」され、最後まで生き残った選手が優勝となる。

 集団でグルグル回るだけにも見えるが全く違う。各選手はさまざまな駆け引きを展開している。レース前半は「スピードが速くてペースが一定なので、除外を防止するためにも前団にいた方が良い」(北津留)。一方、人数が減る後半は「空気抵抗を減らしてスタミナを温存するため、集団の真ん中あたりで休みながら走る」のがセオリーだ。

 面白いのは“暗黙の了解”でチーム戦が行われること。「ある選手を数人で囲って内に封じ込めて脱落させたり、逆に内に詰まった時は、仲の良い選手にコースを開けてもらったり」というケースも。この戦術が得意なのが大分勢。実際、過去5年のうち4回が大分勢の優勝だ。「大分勢の連係を誰が切り崩すかにも注目」と北津留。スタミナ、スプリント能力に駆け引き、チームワークと、無数の要素が詰まった種目だ。

2番手をめぐり攻防
【ケイリン】

 「競輪」を基に作られた。2000年シドニー大会から五輪種目に採用され、08年の北京五輪で永井清史(岐阜)が銅メダル。

 とはいえ「競輪」とはルールが異なる。ペーサー(誘導員)は電動バイクを使用し、時速50キロ(競輪の誘導よりも若干速い)で引っ張る。自力選手とマーク選手が連係して勝利を目指す競輪のライン競走は失格。競輪で失格に至らない蛇行や押し上げなども厳格に裁かれる。各レースの出走人数は世界では6車。地区プロは6~8車が多い。

 ケイリンの見どころは「いかに2番手を取るかの戦い」(北津留)だ。「先行選手の2番手が有利なのは競輪と同じ。できるだけ前方に位置して、強い自力選手を迎え入れるための駆け引きを繰り広げる。後ろからの攻めは脚力のロスや展開上のリスクが大きい」。当然、前を取りやすい内枠スタートの選手が有利。また横の動きの規制が厳しいため、「並走の場合は、外周よりも走る距離が短い内側の選手が有利」という。

 地区プロのケイリンの優勝者は毎年違っており、予測が最も難しい種目。

迫力の3段ロケット
【チームスプリント】

 1チーム3人で3周のタイムを争う。スピード感にあふれ、見た目がまるで3段ロケットの迫力だ。2004年アテネ五輪で日本(長塚智広、伏見俊昭、井上昌己)が銀メダルを獲得。

 2チームがホーム側とバック側から同時にスタート。各チームが縦列で走り、1周回ごとに先頭選手が退避。最後に残った3人目のゴールタイムを競う。

 「チーム3人の役割は当然違う」と北津留。「第1走者は、チーム全体をいかに早くスピードに乗せるか」で、ダッシュに優れた選手が担う。「第2走者は、第1走者に離れずに、第3走者のスタミナ温存のために休ませる走りも必要」。前後をつかさどる扇の要だ。「第3走者は前2人からもらったスピードを維持しつつ、最後まで全開で踏み切る」。脚力のほかチーム力が勝敗を左右する。

 九州地区プロでは、熊本と福岡A(北九州)が例年強く、今年も有力候補。

乗車フォームに注目
【1kmタイムトライアル】

 スプリントと並ぶ人気種目。1996年のアトランタ五輪で十文字貴信(茨城)が銅メダルを獲得した。400バンクなら2周半を走りタイムを競う。

 タイムを計るだけなので単純なようだが、北津留によると「1キロという距離がくせ者」という。「スタートから全力で踏んだらギリギリ持たない距離。これが800メートルなら全開で行ける」そうだ。つまり脚力だけでなく、あと200メートルの部分を乗り切るテクニックが勝敗の分かれ目。「精神面の安定が重要。力んでフォームが崩れてはダメだし、気合で飛ばし過ぎてもダメ。強い人ほど最初から最後まで一貫してフォームがきれい」(北津留)。空気抵抗や力みによるロスをいかに減らせるかで、各選手のフォームに注目したい。

 有力選手は、福岡大学カヌー部出身の森山智徳(熊本)や、慶大自転車部出身の下沖功児(鹿児島)。

緻密な組み立てカギ
【4km個人追い抜き】

 通称・個抜き。400バンクなら10周のタイムを競う。「きれいなフォームが良いのは1kmTTと同じ。」と北津留。「加速時間が短いほどロスは少ない。入り(スタートして1周程度)で、無駄な力を使わずに素早く時速50kmぐらいまで上げる。そして、ラスト1000メートルでスパートをかける」。距離が長いため、「ペース配分は1kmTT以上に重要」。周回ごとの緻密なプランも問われる。

 この種目はベテラン大竹慎吾(大分)が、九州地区プロ3連覇中。北津留は今回初めてエントリーした。

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