「サッカーコラム」首位陥落のFC東京に求められるもの。それは…

共同通信


                  鳥栖に敗れたFC東京イレブン=駅スタ
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鳥栖に敗れたFC東京イレブン=駅スタ

 タイトルを得る代償として、受け入れなければいけないものがある。それは「プレッシャー」。長期にわたるリーグ戦では特にそうで、シーズンが進むにつれて存在感を増してくる“同居人”ともいえるこの精神的な重圧とどう付き合うかが優勝できるか否かを決める大きな要因となってくる。

 今シーズンのJ1ではFC東京はまさにそうだ。リーグ優勝の経験がないチームにとって、対戦相手に加えて厄介な心理的重圧と付き合わなければならないことは大変だったはずだ。

 J1第28節。FC東京は鳥栖に1―2で敗れ、約半年間守り続けていた首位の座から陥落した。4月19日の第8節で順位表の最上位に立って以来、20節に渡ってその位置を他に譲ることはなかった。それ自体素晴らしいことではあったが、今思うとライバルチームが勝ち点を落とした時に突き放す決め手を欠いていたといえる。

 FC東京のようなサッカースタイルのチームが、優勝争いを演じることを興味深く見ていた。リーグ2連覇中の川崎に代表されるように、過去にリーグを制したチームというのは、相手が守備を固めてきても自らそれをこじ開ける手段を持っていたからだ。FC東京はこれらのチームと比べると、正反対のサッカーを展開するからだ。

 それは、堅い守備からのカウンター。守備は28試合で23失点と、C大阪の22失点に次ぐ数字を残している。リーグでも間違いなくトップの実力だ。ただ、得点力は優勝争いを演じる首位の鹿島(50)や3位の横浜M(51)に比べると、38と見劣りがする。確かに、永井謙佑とディエゴオリべイラという強力2トップを擁してはいる。だが、攻めのほとんどはカウンター頼り。6月末に久保建英が移籍するまでは中盤でゲームを作ってゴールを陥れる場面が多く見られたが、移籍とともにその攻め手も失った。

 首位に立ちながら、下位チームを相手にしても自陣に引いてカウンターを狙う。そのような姿を見ながら、優勝を狙うチームとしてはかなり特異な戦い方をしているなぁというのが印象を受けていた。それだけに、このスタイルでリーグを制することができれば、かなりセンセーショナルなことになるとも思っていた。

 先制点を奪えば12勝2分け。今季、築き上げた無敗神話のストーリーは後半4分に三田啓貴が右CKを直接たたき込んだことで「上書き」されるはずだった。ところが、相手が悪かった。相手の鳥栖は前節時点で16位。降格の可能性があるJ2とのプレーオフに回る順位にいた。優勝を狙うFC東京ももちろん勝ち点3がほしいが、J1残留に執念を見せる鳥栖の方が勝ち点に執着していた感じだった。

 鳥栖のやり方はいたってシンプル。空中戦に圧倒的な強さを発揮する豊田陽平と金崎夢生というゴール前の職人に対し、サイドからクロスを送り続けるのだ。試合全般を通してこの戦い方を選択するのは前時代的ではあるが、やることが明確なだけに守る側からすれば間違いなく脅威となる。Jリーグ勢はスマートな戦いを志向する傾向の高いだけに、力攻めへの免疫がない。日本代表が格下のアジア勢を相手に失点をするのは、たいていはこのパワープレーからだ。

 後半41分、鳥栖のクロス攻撃が実を結ぶ。右サイドの安庸佑の入れたクロスをファーサイドの金崎がヘッド。一度はDF渡辺剛のブロックに合ったが、こぼれ球を豊田が反応良く左足でダイレクトに押し込んだ。

 「2点目を取らなかったのが問題だった」

 試合後、FC東京の長谷川健太監督が語っていたことがすべてだろう。相手を諦めさせる点差をつけることができないままだと、追い上げる方の勢いがを増すことが往々にしてあるからだ。

 そして、FC東京にとって悲劇的で到底納得の出来ない2失点目は後半アディショナルタイムに入ってから5分が経過した時の事だった。

 クエンカが倒されて鳥栖が得た左サイドのFK。小野裕二のクロスをファーサイドに位置した高橋秀人がゴール方向で折り返した時点で豊田はオフサイドだった。その豊田が右ももで狙ったシュートは本人の左腕に当たって明らかなハンド。その反則も見逃され、最後は金井貴史が押し込んだ。その金井自身のポジションもオフサイドだった。

 見逃された三つの反則によって生まれた鳥栖の決勝点。FC東京にとってのあまりにも痛い失点に関して、検証番組で日本サッカー協会(JFA)審判委員会のレイモンド・オリバー副委員長は「明らかなジャッジミス」と認めていた。ただ、それが分かったのは映像を確認したからだ。レフェリーにはもう少し注意深くプレーを見てもらいたかったが、セットプレーでゴール前に両軍の選手が入り乱れていたことを考えると、ブラインドになっていたのだろう。FC東京にとって、さらに不運だったのはJリーグへのビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の導入が来季からということだった。

 ホーム・味スタが開催中のラグビー・ワールドカップ(W杯)の試合会場になった影響で、FC東京はアウェー8連戦というJリーグ史上初めてとなる戦いを演じている。リーグ終盤に来て大きなハンディ。2位に後退しながら、これからどのような戦いを見せるのか。J1は残り6試合だ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続。

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