人気俳優への登竜門『仮面ライダー』、配役のポイントは即戦力より「将来性」

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令和1作目のライダー『仮面ライダーゼロワン』には、心機一転の試みが随所に散りばめられている※写真は10月13日放送の第7話より 拡大

令和1作目のライダー『仮面ライダーゼロワン』には、心機一転の試みが随所に散りばめられている※写真は10月13日放送の第7話より

 令和では第1作目となるライダー『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系/毎週日曜9:00)が好調だ。いわゆる「平成ライダー」は、実に20作目となった前作『仮面ライダージオウ』でひと区切り、主人公がIT企業の社長だったり、史上初となる番組開始時から仮面ライダーに変身する女性キャラクターが登場したりと、心機一転の意気込みが画面に横溢する。前作『仮面ライダージオウ』に続きプロデュースを手がける井上千尋氏に、「令和ライダー」ならではのアプローチやこだわりについて聞いた。

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◆仮面ライダーシリーズは、1作ごとに構築から試行錯誤

 AI搭載の汎用人型ロボ「ヒューマギア」が社会で活躍する近未来。売れっ子お笑い芸人を志す主人公・飛電或人(ルビ:ひでんあると)は、ある日、創業者の祖父が遺したAI企業「飛電インテリジェンス」の社長の椅子とともに、謎のドライバーとキーを受け取ることに。何者かの意図で突然の暴走を開始したヒューマギアに、或人は仮面ライダーに変身し立ち向かう——。令和初のライダー作品となる『仮面ライダーゼロワン』(以下、ゼロワンと略)は、新時代にふさわしい魅力的な世界観とキャラクターを提示、大いに注目されている。

「ゼロワンというネーミングは、令和の1作目であり、デジタルの0と1であり、さらに主人公が会社組織のナンバーワンでもあることにもちなんだもの。AIをテーマにすること自体は、最初の段階で決まりました。その時代ごとの恐怖の対象、敵を考える際に、近年ますます身近になりつつある人工知能を設定してみようと。人工知能と人間との関係というのは、むしろ古典的なテーマでもあります。AIと共存するか、排除するか、道具として扱うか、無関心か。そういう人間側のスタンスを整理しながらキャラクターを配置し、縦軸の大きなストーリーを構築しつつ、1話ずつでも楽しめるよう工夫しています」(井上千尋氏)

 井上氏はスーパー戦隊シリーズでもプロデューサーを長く務めており、ライダーへの本格参加は3作目にあたる。

「制作は東映さん側のプロデューサーと二人三脚。スーパー戦隊は、ある種の型、フォーマットの中で、その崩し方の面白さを含め、いかにオリジナリティを出せるかが重要な作業です。ライダーに関しては、型そのものの構築から1作ごとに試行錯誤なので、アプローチが大きく違う。ですから、『令和ライダー』と言っても、1つの新しいライダーに取り組むという意識も強いですね。一方で、平成ライダーの集大成が前作のジオウでしたが、敷居が高くなりすぎて、一見さんには少しとっつきにくいという指摘も多かった。そういう意味で、ゼロワンはうまくリセットできるタイミングも活用しながら、観やすい、入りやすい作品であることを心がけています」

◆配役のポイントは即戦力より将来性「技術だけで評価することはない」

 フレッシュな俳優の登竜門として広く認知されるライダーシリーズだが、そのキャスティングは基本的にオーディション経由だという。特に着目するポイントはあるのだろうか。

「重要なのはあくまで作品とのマッチング。合格したから俳優として優れている、ということでは決してありません。少なくとも、技術だけで評価することはない。その前提のうえで、まず求めるのは「華」、でしょうか。それこそオーディション会場に入ってきた瞬間の第一印象でもあり、表情の豊かさを含め、ノンバーバルな部分で何かを伝えられるかどうかでもある。そして重要なのは熱意。今作の主人公はお笑い芸人という設定ですが、主演の高橋文哉さんは、オーディション時の台本に書いてあるお笑いのネタを、自分で膨らませてネタをいくつも考えてきたりと、印象的でした。また、ドラマは俳優だけでは成立しない共同作業ですから、人の話をきちんと聞ける素直さや、集団の中での協調性も大事です。基本的には即戦力より将来性をチェックしつつ、納得がいくまでオーディションをし続けるスタンスです」

◆「人気シリーズでもいつ終わるかわからない」危機意識を持って常にチャレンジ

 ヒロインがAIキャラクターだったり、早い段階から女性仮面ライダーがレギュラー登場したり、令和からの新たなチャレンジも多い。

「もちろん、テレビ朝日にとって重要なコンテンツの1つですし、コンテンツパワーのバロメーターである劇場版の成績も近年は好調を続けています。ですが、視聴習慣の変化などによって、ライダーであってもいつ終わるかわからない、という危機意識も同時に持って常にチャレンジを続けています。『~クウガ』を幼い頃に観た世代がそろそろ親になり、『ドラえもん』で実現できた“2世代視聴サイクル”が循環していくようになるまで、あと少し。うまくバトンを引き継いでいけたら」

 実は、現在の仮面ライダーシリーズは、物語の最終的なゴールの具体的なイメージはあえて固めずに、制作が進められることが多いのだという。

「着地点を決めずに走り続けるからこそ、社会や時代に即した柔軟な対応も可能になるという面もあるかと思います。例えばゼロワンでは、AIと人間について真摯に考察し続けていますが、結果として先人たちの思考実験を自然にトレースしている場合もある。『鉄腕アトム』然り、『キカイダー』然りですが、どうしても意図せず似てしまう部分は出てきます。ですが、いま紡がれる人工知能と人間の物語が、どんなゴールにたどり着くのか、そこは自ずと異なってくるはず。令和ならではの解答を提示できるよう、全スタッフと演者で取り組んでいきたいと考えています」

文/及川望

●井上千尋(いのうえ ちひろ)
 1972年、富山県生まれ。1996年にテレビ朝日に入局。ドラマプロデューサー、編成部を経てアニメ・映画事業部の所属となり、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)や『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)など、特撮ドラマ「スーパー戦隊シリーズ」のドラマ・映画作品をプロデュース。「仮面ライダーシリーズ」への本格参加は、『仮面ライダービルド』(17~18年)、『仮面ライダージオウ』(18年~19年)に続き、本作で3作目となる。

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