バンタム級史に残る名勝負

共同通信

 11月7日に行われたワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝で、井上尚弥(大橋)はノニト・ドネア(フィリピン)を判定で破り、初代王者となった。

 試合前、井上は圧倒的有利と予想され、序盤のKO勝ちを期待するファンが多かった。

 ところが井上はドネアの底力に苦しみ、右目上から流血し、ダウン寸前のピンチにも見舞われた。しかし、その窮地を乗り越え、手にした勝利の意義は大きい。

 初回は静かなスタート。ドネアの実力を測り「早い決着も考えた」という。

 そのもくろみが2回に崩れた。強烈な左フックを浴び、右目上からおびただしい出血。「ドネアが二人いるように感じた」そうで、3回以降、本来のボクシングができない。

 その後、一進一退の攻防が続いたが、9回、右を浴びダウン寸前。明らかに効いており、井上が初黒星を喫する空気が何となく流れた。驚異的なドネアの強さだ。

 残りは3ラウンドしかない。苦しい井上がここから意地を見せる。

 10回には気迫で持ち直し、11回、ついに得意の左ボディーブローでダウンを奪った。

 あのドネアが苦悶の表情でキャンバスに膝をついた。辛うじて立ち上がったが、このまま井上が仕留めると思った。

 だが、ドネアはしぶとい。打たれながらも左フックで反撃。5階級を制覇したプライドがまれに見る名勝負を作り上げたと言えるだろう。

 試合後のインタビュー。井上には右目上のダメージ(右目眼窩底骨折と判明)は残り、痛々しく映った。

 「期待された内容(KO)ではなく、まだまだです。もっと練習して、強い井上尚弥を目指します」と静かに語った。

 かねてから完全燃焼の世界戦を目標にしているが、そういう意味では勉強になったのではないか。この経験を糧とし、さらにスケールの大きなボクサーに成長する可能性は高い。

 半世紀以上もボクシングを見続けた名トレーナーの石井敏治氏は「素晴らしい試合に感激した。間違いなく井上は白井義男(日本初の世界王者)、ファイティング原田(世界2階級制覇)と並び、日本のベストスリー」と評価する。

 井上は米国の大手プロモーション会社「トップランク社」と複数年契約を結んだ。

 来年は本格的な世界進出が始まる。類いまれな才能がどう磨かれていくのか。興味は尽きない。(津江章二)

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