「サッカーコラム」コロンビア戦であらわになった課題

共同通信

 ちょっと期待が大きすぎたのか。それともこの1試合に限って低調だったのか。

 11月17日に行われたU―22(22歳以下)日本代表の試合内容には、正直がっかりさせられた。

 後半に交代出場した小川航基のポストを直撃するシュートなど惜しい場面は確かにあったが、試合全体を通せば完全な力負け。地球の裏側から長旅を経て広島に乗り込んだコロンビアは、A代表と同様、強く、うまく、試合運びをよく理解している好チームだった。

 東京五輪まで残りは約8カ月。森保一監督が「現時点でのベストメンバー」と胸を張って送り込んだチームは、東京五輪世代としてはこれが日本でのお披露目だった。

 先月の南米遠征においては、敵地でブラジルを3―2で下す「快挙」を成し遂げた。日本だけでなく世界的に見てもこの1勝はかなりのニュースといえた。その試合で2ゴールを奪った田中碧が故障のため、残念ながら今回は招集外となった。それでも、A代表の常連と言える堂安律と久保建英が初めて合流したこともあって、注目度と期待度はこれまでになく高かった。

 しかし…。試合が終わって強く感じたことは、全くもって「チーム」になっていないということだった。確かに堂安や久保は、ボールを持ちさえすればコロンビアの厳しいプレスにも動じない安定感を備えている。ただ、周囲とのコンビネーションとなると、疑問符が付いた。

 2シャドーに入った新たな才能を、以前からいたメンバーたちが使いこなせないからだ。料理に例えるなら、こんな感じだろうか。ブラジル人をもうならせた絶品の料理を出す和食店が、新たにオランダとスペインの高級食材を仕入れた。さらにおいしくなるに違いないと思って食べてみたら、食材が調和していないために何とも不満の残る食事になってしまった―。

 それもそうだ。良い食材、つまり優秀な選手を集めるだけで強いチームができるのであれば、サッカーにおいてはブラジルが勝ち続けることになる。だが、現実は違う。なぜなら、選手の能力よりも組み合わせや連動性が重要だからだ。

 今回のメンバーには海外でプレーする選手が8人も含まれる。海外組の招集が可能なのは国際マッチデーに限られる。となると、このメンバーが再び集まれるのは、ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選が再開される来年3月まで待たなければならない。12月28日にはジャマイカ戦、来年1月にはタイで東京五輪のアジア最終予選を兼ねたU―23(23歳以下)アジア選手権という、東京五輪年代の実戦の場が用意されているが、現実として国内組中心のチームを組むしかないのだ。

 メンバー入りという観点で五輪チームを見ると、選手たちにとってはかなり狭き門だ。W杯をはじめとした国際大会では23人登録が普通だが、五輪の本大会は18人。23歳以下という年齢制限が設けられているが、3あるオーバーエイジ枠を全て使えば23歳以下の選手は15人だけだ。日本もおそらくオーバーエイジを3人呼ぶだろうから、U―23アジア選手権に出場した選手の大半が本大会のメンバー入りを果たせない。かなり狭き門なのだ。

 現時点で確約されているのはA代表でも実績を残している冨安健洋や堂安、久保を中心としたメンバーだろう。ただ、そのメンバーが中心になると、これまで五輪代表には招集されてこなかったもあっただけにチームは初めから作り直しになる。自国での五輪開催でメダル獲得が至上命令とされる。その中で、森保監督に残された時間は決して多くはないのだ。

 五輪の男子サッカーでメダルを獲得するということは、世界規模で行われている他の競技に比べればかなりハードルが低い。これはあくまで個人的な見解だが、五輪の金メダルはW杯のベスト8ぐらいなのではないだろうか。事実、2012年のロンドン大会で日本は4位に入り、韓国は銅メダルを獲得している。これがW杯となると、自国開催以外の大会で日本と韓国が同時に8強入りすることは、巨大な権威が動いて審判が忖度(そんたく)しない限りかなり難しい。

 米国や日本を含めた東アジアを中心とした、いわゆる“五輪至上主義”といえる国々を除き、サッカー競技に力を注いでくる国はまれだ。特にシーズン開幕直前となる欧州勢は、ベストのメンバーを編成してくることはほぼない。ロンドン大会では、英国4協会のうちイングランドとウェールズの合同チームで出場したが、39歳のライアン・ギグスが“思い出作り”のためにメンバーに入るなど、勝負にこだわるという姿勢からはほど遠かった。

 例外は前回の16年リオ大会だろう。五輪では優勝したことがない開催国のブラジルが、本気を出したのだ。オーバーエイジでネイマールを加えるベストメンバーで挑み、見事初優勝を飾った。04年アテネ、08年北京の両大会を連覇したアルゼンチンもそうだが、これは、たまに最強チームを組む南米チームのいわば「気まぐれ」だ。そのアルゼンチンも連覇後のロンドン大会では南米予選で敗退している。

 綿密な計画を持って取りに行けば、取れるかもしれないのが五輪男子サッカーのメダル。コロンビア戦の敗戦後、森保監督は「東京五輪までにもっと力をつけられるようにして、チーム力を上げなければいけない」と語っていた。良い素材はそろっている。あとは料理の仕方だけ。チームとしての組織力をどのように上げていくかだ。

 幸いなことに本番は、この日のコロンビアのように90分を通して絶え間なくプレスを掛けてくるチームはまず、いない。加えて、真夏の日本は東京だけでなく、どこでも酷暑だ。札幌ドームを除いては。

 地の利はある。間違いなくメダルのチャンスだ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で7大会目。

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