本能が求める?女性がけん引したラグビーブーム 秘められた男たちの“色気”

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 W杯で悲願のベスト8入りを果たし、歴史を動かした日本代表の試合から巻き起こったラグビーブーム。今年の「新語・流行語大賞」にはラグビーW杯日本大会に関連する言葉として5つがノミネートされるなど、そのムーブメントの大きさが伺い知れた。一般的にブームは男性ではなく女性がファンになることが重要とされる。今回のブームでも、芸能界を含め“にわか女性ファン”が溢れかえったが、その“にわか”さえポジティブなワードとなった。なぜラグビーとは縁がなさそうな女性ファンが多かったのか。データを紐解きつつ、心理カウンセラー・小日向るり子氏に話を伺った。

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■歴史を動かした日本代表チームの活躍が社会的なブームに

 前回W杯でも南アフリカを破るジャイアントキリングが話題になったが、今回の日本大会では開幕とともに破竹の予選4連勝。日本代表が4連勝を飾った10月13日の『ラグビーワールドカップ2019 日本大会・日本×スコットランド』が39.2%という驚異的な視聴率を記録。9月20日のロシア戦の18.3%、9月28日のアイルランド戦の22.5%、10月5日のサモア戦の32.8%を大きく上回るとともに、今年のスポーツ中継最高視聴率を更新した(視聴率はビデオリサーチ調べ/関東地区)。

 さらには10月19日に行われた準々決勝『ニュージーランド×アイルランド』は、日本が出場していないにも関わらず、平均視聴率が16.5%。この日本のラグビー熱に対して、アイルランド紙「アイリュッシュ・サン」が「国民的スポーツの野球の約2倍だ」と驚いたことも報道された。

 そして、このブームからは、多くの心に残る名言が生まれた。南アフリカ戦終了後には、流大「自分自身の努力に悔いはない」、田村優「心の底からチームが好き」、トンプソン・ルーク「最後の試合、すごく楽しかった」、稲垣啓太「日本の今までやってきたことが正しかったということは間違いなく証明できた」、またキャプテンのリーチ・マイケルは「日本のファン、本当に最高です!」と語り、ファンの胸をさらに熱くざわつかせた。

■女性が嫌悪しがちなスポーツなのに…情報接触率は男性を上回る結果に

 そんな本ブームには女性が大きな役割を果たしている。荒々しい男たちがぶつかり合う競技であり、ケガも多く危険なイメージがつきまとうラグビーは、本来女性が嫌煙しそうなスポーツであるにも関わらず、SNSやメディアなどでは“にわか”を自称しながら楽しむ、または必死に応援する女性ファンの姿が多数。芸能界でもそんな女性タレントたちが目立っていた。

 ヤフーの10月9日の発表によれば、インターネット通販「ヤフーショッピング」でラグビーグッズの取扱高が過去最高を記録。前回のW杯の2015年9月に比べて9倍に達し、男女別では男性が8.9倍、女性が11倍。女性の伸びが高いのが分かる。また、カルチュア・コンビニエンス・クラブが18~69歳の男女1501名に行ったアンケート調査。「ラグビーワールドカップ2019大会について、具体的に観戦したり、見聞きしたりしましたか」の項目では、「テレビやネットのニュースで見た」で、男性が約50%、女性はそれを上回る約53%という結果になっている。

 マーケットリサーチ会社のレピュコムの調査では、2015年9月に開催されたラグビーW杯での日本代表の活躍により、国内のラグビー人気が上昇したことがデータでも明らかになっている。野球、サッカー、テニス、ゴルフの興味度が横ばい・微減のなか、ラグビーの興味度が2015年6月の13%→12月の27%と大幅増。女性の割合では22%→37%と15ポイントも上昇。前回W杯の人気が今の下地にあったと考えられる。

■女性がラグビーに惹かれるのは“男の色気”と“本能的な安心”

 決して身の周りでよく行われているような馴染みのあるスポーツではなく、ルールも難しい。上述のように流血やケガが常に伴うスポーツに、なぜ多くの女性が惹かれたのか?

「ラグビーワールドカップの盛り上がりは自国開催ということもありますが、ラガーマンたちが多くの女性を熱狂させた理由を“男の色気”という側面でとらえてみると興味深いと思います」と話すのは心理カウンセラーの小日向るり子氏。
 
「色気は“先天的なものとそれを表現する術などの後天的なもの”が混ざってオーラとなり形成されます。つまり、単純なひとつの要素ではなく、そのポテンシャルと魅せ方のかけ合わせで色気が生まれるのです。これをラガーマンに当てはめると、先天的なものとしては屈強な肉体があります。質の高いパワートレーニングをする人や声の低い男性にはテストステロンという男性ホルモンが多いことがわかっていますが、テストステロン値が高いとストレス耐性も高くなります。つまり女性たちはラガーマンに“ストレスに負けない健康な心身”という本能的な安心を感じて惹かれたとも考えられます」(小日向氏)
 
 後天的には「彼らのプレースタイルもあると思います。目標を定めるとき、人の視線は自然と遠くになり姿勢がよくなります。ライオンが標的を定めるような雄々しい姿に女性は男の色気を感じるのですが、ラガーマンがゴールポストを見つめるときの視線はまさにこの姿を体現しています」と同氏。さらには「日本では比較的マイナーなスポーツだったということも。人が未知なものに対して抱くのは恐れか興味。ラグビー選手があまり知られていなかったからこそ“選手の私生活はどんな感じなのだろう”と興味を抱いた方も多かったのではないでしょうか。ミステリアスさも色気を作り出す重要な要素なのです」と解説する。
 
 また、ラグビーという競技そのものの特性にも紐解く鍵がある。ラグビー協会の理事でW杯の組織委員会の理事を務める岩渕健輔氏は「ラグビーの世界では、教育と絡めて指導者が教えてきた歴史があります。例えば、ガッツポーズはしてはいけない。それは、そこに至るまでにいろんな選手が体を張ってくれたからです。小さい頃から選手はその考えを教えられます。一般に知られるワンフォアオールの精神。紳士のスポーツといわれる所以です」と話している。ラグビー選手の愚直なまでの純粋過ぎる真っ直ぐさ、その紳士ぶり、そして、たまに垣間見える素顔の愛らしさも、女性の心をくすぐっているようだ。

■女性ファン獲得の一方でブーム継続には根本的な課題も

 これまでのスポーツブームのほとんどは、新たなスポーツ選手の活躍などが取り沙汰されると、それに押し流されるようにあっという間に過ぎ去ってきた。しかし、スポーツ文化を根付かせ、その競技を世界レベルで強化し、育てていくためは、継続的なファンの応援がなによりも必要になる。そうしたなか、今回の遺伝子レベルで女性を惹きつけるラグビーブームには、一過性にならないポテンシャルがありそうに思える。

 もちろん、15人というチーム人数の多さや、身近でプレーできる場所が少ないといったラグビー特有の普及拡大へのハードルになっている部分の環境整備は欠かせない。それとともに、この時流をチャンスとして活かすためには、やはりスター選手の輩出が欠かせない。継続的に女性ファンの関心を引きつけるための課題と言える。

 それらが両輪となって、ブームを一過性にしないことが、競技人口の増加、そして日本ラグビーの発展へとつながることだろう。今後の日本ラグビーのさらなる盛り上がりに期待したい。
(文:衣輪晋一)

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