コンプレックスに大人も共感、『すみっコぐらし』大ヒットから見えた“可愛さ”と“悲哀”の絶妙バランス

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 アニメ『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(11月8日公開)が絶好調だ。114館と少ない上映館数ながら、公開初週に『ターミネーター:ニュー・フェイト』、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』に次ぎ、国内映画ランキング3位に初登場。その後も毎週、動員・興行収入を伸ばし、公開3週目には累積動員58万人、興収7億円を突破(11月28日時点)。大ヒット作の続編『アナと雪の女王2』の公開がスタートするも、3週連続でランキングTOP5入りを果たしている。SNSを覗くと、「いい大人なのに泣きじゃくってしまった」「思い出しても泣ける」といったコメントがズラリ。そのユルく、可愛いキャラクターたちが繰り広げる物語に、子どもはもちろん大人たちが反応しているのだ。大人も引き寄せられる「すみっコぐらし」というキャラクターの魅力とは、一体なんなのか。

【写真】大人も胸キュン必至!「すみっコぐらし」の雑貨&スイーツなど(79枚)

◆“すみっこ”好きな日本人ならではの習性を反映、大人向けグッズも

 すみっコぐらしは、“端っこ=すみっこ”にいることに落ち着きを感じる、「しろくま」や「ねこ」、「とかげ」などの動物を中心としたキャラクター郡。リラックマやたれぱんだ、アフロ犬など、数々のオリジナルキャラクターを生み出してきたサンエックスより2012年に誕生。淡い配色に丸みを帯びたキュートなフォルムは子どもたちを中心に愛され、おもちゃや文房具、ぬいぐるみなどのアイテムは大人気。誕生7周年を迎える今年は、“最も活躍したキャラクター・プロパティ”に贈られる『日本キャラクター大賞 2019』でグランプリを受賞した。

 今回、映画のヒットにより注目度が高まったが、大人層からは以前より関心が寄せられており、最近はスキンケア商品やメガネなど、大人向けのコラボレーションアイテムが多数展開。街中ではカバンにすみっコぐらしのキーホルダーを付けている大人たちの姿もたびたび目にする。また、11 月13 日に東京・新宿ピカデリーで開催された男性限定上映では、“推しキャラ”のぬいぐるみを連れた熱心な男性ファンが駆け付けて満席に。続く11 月22 日に同所で行われた“応援上映会”のチケットは5 分で即完し、人気を受けて12月1日にも東京、大阪で上映イベントが行われる。

 どんなに有名で人気のあるキャラクターだったとしても、それを大人が身につけるという行為に至るまでには、なかなか高いハードルがあるはずだ。すみっコぐらしが、そのハードルを容易に飛び越えていったのは、ただ単に存在が可愛いからだけではなく、“共感できる”という部分が大きいからだろう。

◆コンプレップスに悩みながらも、肯定してあげる

 共感できるポイントとしては、まず大前提に、キャラクターたちが“すみっこ”に落ち着きを感じるという設定が、電車やお店などの座席選びで端から埋まる傾向にある日本人の習性とリンクしていることがある。そういった大枠があるなか、キャラクターたちはそれぞれに“コンプレックス”を抱えながら過ごしているという細かなストーリーが隠されており、自分のネガティブな部分に悩みながらも肯定し、また周囲と共有しながら過ごしているキャラクターたちの姿が、大人たちの共感を誘っていると言える。

 たとえば、「しろくま」は、北から逃げてきた寒がりで人見知りのくまで、温かいお茶をすみっこで飲んでいる時が一番幸せという性格。「ねこ」は恥ずかしがり屋で気が弱く、自分もすみっこが好きなのに他のキャラクターにその場を譲ってしまうことが多い。「とかげ」は実は恐竜の生き残りだが、周囲には真実を隠し“とかげのふり”をして生きている。「たぴおか」は、ミルクティーだけ先に飲まれて残されてしまったことから捻くれ者で、「ぺんぎん?」は果たして自分は本当にぺんぎんなのか、自信がなくて……。現在、ヒット中の『映画 すみっコぐらし~』は、そんなすみっコたちが、行きつけの喫茶店の地下室で見つけた不思議な絵本に吸い込まれてしまったことからはじまる物語。絵本の世界で出会った“迷子のひよこ”のお家を見つけ出すため、すみっコたちが絵本の世界で大冒険を繰り広げる。

◆田中みな実や宇垣美里…“内なる闇”をいかに明るく解放するかで、芸能界でも好感度に影響

 ここまで振り返って、すみっコぐらしの人気は「可愛さ」と「悲哀さ」の絶妙なバランス感によって得られているということが見えてきた。すみっコぐらしはキャラクターだが、この人気の方程式は、昨今のエンタテインメントシーン全般に当てはまるように感じる。たとえば、フリーアナウンサーの田中みな実。TBSの局アナ時代は“ぶりっ子キャラ”によって女性人気は皆無だったが、フリー転身後はテレビ番組などで“心の闇”を吐露。才色兼備の裏にある“弱さ”を覗かせるようになってからは、男性だけでなく女性からの支持も急上昇し、現在は女優としても注目を集める。同じ元TBSアナウンサーとしては、4月にフリーに転身した宇垣美里も“本来の自分=闇キャラ”を解放し、これまで以上に活躍の場を広げている。

 また、女優の本田翼はキュートな笑顔とは裏腹に、バラエティ番組にゲスト出演などをした際は「休みの日は部屋に引きこもってゲームばかりしている」などと告白。意外な一面を明かし、昨年9月に開設したYouTubeチャンネル「ほんだのばいく」は1ヶ月も経たないうちに登録100万人を突破するなど、幅広い層から人気を集める。今年の『第42回日本アカデミー賞』で最優秀助演男優賞を受賞するなど、国民的俳優の階段を駆け上がる松坂桃李も、カードゲームアプリ『遊戯王デュエルリンクス』の“ガチ勢”であることなど、少々残念な私生活を明かしてからは、よりファン層が豊かになっている印象を受ける。

◆必ずしも「センターに立つ」必要はない 時代とともに人気者の条件に変化

「すみっコぐらし」の生みの親は、サンエックスのデザイナー・よこみぞゆりさん。2017年2月5日の毎日小学生新聞では、自身の小学生時代について「体育は苦手だし、リーダーシップもないし……。全然勉強しないで、絵を描かいたりゲームをしたり、好きなことばかりしていました」(よこみぞさん)とコメント。すみっコたちは、大学生の時ノートの隅に小さく書いた落書きが元になっているそうだ。

 アニメや漫画の主人公となる人気キャラクターには、どこかに秀でた才能やスター性があり、中心人物として物語をけん引していく力が求められてきた。いわばセンターに立つこと、目立つことが当たり前だった。しかし、すみっコぐらしは、そもそもが“チーム”で1つのキャラクター郡であり、持っているものも才能と呼べるものではなくネガティブな一面だ。そういったキャラクターが人気者になったということは、多様化する社会のなかで「オンリー1」を肯定する風潮が高まっていると言え、人気キャラクターに求められる要素も自然と“スター性”から人々に“寄り添うもの”へとシフトしてきているのではないだろうか。

 情報化社会により、世の中のスピードは以前にも増して目まぐるしく変化している。そういった時代のなかで、「すみっコ」たちは小さな子どもたちのみならず、大人たちにも安らぎを与えている。

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