「リアル二刀流」へ勝負のメジャー3年目

共同通信

 米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平が、来季に向けて本格トレーニングに励んでいる。

 シーズン途中の9月に左膝の不調を訴えて手術、厳しいリハビリ期間を経て、ようやく投球練習ができるようになった。

 12月9日(日本時間10日)には来季から新投手コーチに就任が決まっているM・キャロウェー氏の前で今オフ2度目のブルペン入り。伸びのある速球も披露して、同コーチは「すごく良かった。気に入った」と投手・大谷の復活に確かな手ごたえを得たようだ。

 メジャー1年目は投手として4勝2敗ながら、打者として打率2割8分5厘、22本塁打に10盗塁。ベーブルース以来100年ぶりの本格「二刀流選手」として米国でも衝撃を与えた。

 一方でこの年の10月には右肘の靱帯の手術2ために戦列を離脱。2年目の今季はマウンドに上がることなく打者に専念した。

 5月に先発復帰を果たすと6月にはレイズ戦で日本人メジャーリーガーとして初のサイクル安打を記録するなど、順調な復活ぶりに見えたが、夏場からバットが湿りだす。終わってみれば打率こそ2割8分6厘と前年と変わらないが、本塁打は18本と減少。2年連続の途中リタイアに本人も「悔しさの残るシーズンだった」と、消化不良の一年を振り返った。

 怪物の片鱗は誰もが認めるものの、真の大谷の凄みが発揮されたわけではない。

 そういう意味からも進化の問われる3年目だ。期待の大きさは米経済誌フォーブス(電子版)が先頃、将来のMVPとして大谷の名前を挙げていることからもうかがえる。

 同誌では昨季ナ・リーグのMVPに輝いたブルワーズのクリスチャン・イエリチ外野手を引き合いに出して「彼はネクスト・イエリチ。投手を諦めたら打者だけでMVPになるだけの力がある」と評している。

 そんな大谷に「追い風」となりそうな大物がエンゼルスにやってきた。

 名将として名高いジョー・マドン監督の就任だ。レイズやカブスで実績を積み上げてきた指揮官は「マドンマジック」と呼ばれる奇策を得意とする。

 レイズ時代の2008年には4点リードの9回二死満塁の場面で強打者を敬遠して逃げ切った。

 同じくレイズの13年には、レッドソックスとのポストシーズンで、1試合9イニングを9投手の小刻み継投でしのぐなど、これまでも球界の常識を覆して来た。

 そんな指揮官が大谷をどう起用していくのか。早速、報道陣を前に「リアル二刀流」をぶち上げた。

 「それをやらない理由はない。年に50打席は増やせる」。

 「リアル二刀流」とは指名打者(DH)以外に投手としても打席に立ったり、登板日以外の日に外野などのポジションを守らせて打力を生かすという。

 大谷は日本ハム時代の13年のソフトバンク戦では「5番・右翼」で出場しながら途中で中継ぎ投手として登板というケースもあった。

 また、DH制のないナリーグとの交流戦では、投手としてそのまま打席に立つことも可能で二刀流・大谷の選択肢はこれまで以上に広がることになる。

 加えて日本ハム時代の「リアル二刀流」の成績を見ると14試合で9勝1敗、防御率は1・28。打者としても打率2割8分6厘、1本塁打と相性は抜群なのだ。

 カブス時代に大谷の入団交渉にも立ち会ったマドン監督がこの手のデータを知らないわけがない。

 チームは近年「打高投低」に悩み、ア・リーグ西地区でも下位に低迷している。

 投手・大谷が復活すれば、それだけで大幅な戦力アップとなる。さらに打線には主砲のマイク・トラウトがいるが、3番を任せられるのは大谷以外にいない。

 つまり、このチームの浮上の鍵は大谷が握っているのだ。

 このオフも筒香嘉智(DeNA)秋山翔吾(西武)菊池涼介(広島)山口俊(巨人)の4選手がメジャーに挑戦する。

 時代とともに、日本野球と大リーグの垣根は低くなっている。だが、バリバリのメジャーリーガーが一目置くのが大谷翔平という男だ。

 その存在感が図抜けているからこそ、一日も早く「リアルな大谷」が見たい。海を渡って3年目は、その真価が問われる。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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