秋山黄色のメジャー1stアルバムが好発進、高度な音楽性と強烈なバンドサウンド『From DROPOUT』最速レビュー

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 秋山黄色のメジャーデビューアルバム『From DROPOUT』が大きな話題を集め、3/16付アルバムランキングでは17位に初登場。さっそくTOP20入りを果たした。アルバムのタイトルからも想起されるシリアスな心象風景を映し出す歌詞、“引きこもり状態の少年が宅録にハマり、ネットシーンで注目を集め、メジャーデビュー”というキャリアも注目されているが、この原稿では、ボーカロイド系とバンドサウンドを独自のセンスで融合させた彼の音楽性、サウンドメイク、ボーカルの魅力について考察してみたい。

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■根底にある、“楽器を演奏するのが好き”というシンプルな欲求

 まずは秋山黄色のプロフィールを簡単に紹介したい。1996年生まれの秋山は、中学生のとき(つまり2010年前後)にTVアニメ『けいおん!』に影響されて、ベースを弾き始めたという。さらにニコニコ動画に投稿されたさまざまなコンテンツ(ボカロ系楽曲、“歌ってみた”“弾いてみた”)などに触発され、自らも動画投稿をスタート。彼がもっとも惹かれたのはやはり、“弾いてみた”。おそらく秋山は、ボカロPや邦楽ロックの影響を受けながら、プレイヤーとしての資質を少しずつ開花させ、ミュージシャン/アーティスト/クリエイターとしての素養を蓄えていったのだろう。

 高校時代から本格的に宅録をはじめた彼は、同時に仲間と一緒にスタジオに入り、バンドのおもしろさにも目覚めていく。ベッドルームで緻密に組み立てられたアレンジメント、そして、生音を大音量で響かせることで生まれるダイナミズム。その両軸をバランスよく融合させた最初の成果ともいえる楽曲が、アルバム『From DROPOUT』にも収録されている「猿上がりシティーポップ」。いわゆる“キメ”から始まり、鋭利なギターリフ、歪んだ音のベースライン、骨太のドラムによるバンドサウンドが疾走するこの曲は、秋山黄色のもっともベーシックなスタイルに根差していると言っていい。

 リズムの変化、転調を含め、アレンジはかなり凝っているが、“情報過多”という印象はなく、むしろシンプルに研ぎ澄まされたイメージを受ける。ボカロPを中心とした投稿動画サイト出身のアーティストは、ともすれば音を詰め込み過ぎる傾向があるが――それが日本の音楽シーンの新たな潮流を作ったことはまちがいない――秋山黄色の音像はその影響を受けつつも、オーセンティックなバンドの流れもしっかりと受け継いでいる。その根底にあるのは、“楽器を演奏するのが好き”というミュージシャンとしての生理的な欲求なのだと思う。

■先鋭的なトラックをポップに昇華、音楽の中心にあるのは歌

 アルバム『From DROPUOT』も、基本的には生楽器中心のバンドサウンドで構築されている。ギターはすべて秋山黄色自身が演奏。参加ミュージシャンには松下敦(Dr/ZAZEN BOYS)、城戸紘志(Dr)、ナガシマタカト(Dr)、なかむらしょーこ(Ba)、山崎英明(Ba)、川口圭太(Ba/プログラミング)、モチヅキヤスノリ(Key)などが名を連ね、緊張感とダイナミズムを併せ持ったサウンドを体現している。

 ハーモニクスを交えたファンキーなギターフレーズ、濃密なグルーヴをたたえたリズムセクションが絡み合う「やさぐれカイドー」。16ビートのノリを感じさせるギターカッティングと洗練されたメロディラインが「クラッカー・シャドー」など、独創的なアレンジメントと卓越した演奏センスが同居した楽曲が収められた本作。

 個人的に強く印象に残ったのは、リードトラック「モノローグ」(向井理主演ドラマ『10の秘密』(カンテレ/CX系)主題歌)だ。厚みのある低音を押し出したサウンド、ややレイドバックしたビート感、ブラックミュージック的なテイストを取り入れたアレンジがひとつになったこの曲は、海外のオルタナR&BとJ-POPを結び付けるような仕上がり。先鋭的なトラックをポップに昇華するセンスは、King GnuやOfficial髭男dismなどのスタンスとも共通している。

 アルバムの最後に収録された「エニーワン・ノスタルジー」についても触れておきたい。シンプルにして強靭なバンドサウンドとともに響くのは、大人と子供の間で揺れる感情。普遍的なテーマを含んだ歌詞を秋山は、豊かなエモーションを響かせながら真っ直ぐに表現している。彼の音楽の中心にあるのは、やはり歌。自らの体験をもとにした生々しいリリックを、感情に溺れることなく、ダイレクトに描き出すボーカルは(ギターと並び)秋山黄色の大きな魅力となっている。

 昨年は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』『SUMMER SONIC 2019』などの大型フェスに出演するなど、ライブ活動も活性化している秋山黄色。高度な音楽性と強烈なバンドサウンドがひとつになった楽曲が今後のステージでどのように進化するのか? それが楽しみでしょうがない。
(文/森朋之)

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