スカウト部長を“更迭”

共同通信

 新型コロナウイルスの感染拡大で開幕すら危ぶまれるプロ野球界にあって、巨人が4月1日付で異例の人事を発表した。

 スカウト部門のトップだった長谷川国利スカウト部長が編成本部付部長に異動となり、今季から巡回投手コーチに就いたばかりの水野雄仁氏がスカウト兼務に。これまた昨年まで2軍監督を務めていた高田誠ファームディレクターもスカウト部門に加わることになった。

 長谷川前部長の後任は空席のまま、大塚淳弘球団副代表・編成担当がスカウト部門も統括するという。

 長谷川氏と言えば神奈川・東海大相模高―東海大と原辰徳監督の直系の後輩で、同監督が監督復帰した18年オフに査定担当からスカウト部長に抜擢された経緯がある。

 それだけに今回の人事は球団内部でも驚きとして受け止められた。

 本来ならシーズンオフに行われる人事がこの時期というのも珍しいが、関係者の話を集めると、原監督による“更迭人事”という見方がもっぱらだ。

 その引き金となったのが、今年の新人の不作ぶり。ドラフト1位の堀田賢慎投手(青森山田高)は、1月の合同自主トレ中に右肘の炎症を発症、いきなり靱帯再建手術を受けて今季は絶望視されている。

 即戦力と目されたドラフト2位の太田龍投手(JR東日本)もコンディション不良で出遅れて初実戦は3月中旬まで出遅れた。

 それだけではない。昨年までエースだった山口俊投手のメジャー移籍で弱体化が指摘される投手陣を若手の成長でカバーしようとしているが、オープン戦終了時点では桜井俊貴、高橋優貴、鍬原拓也ら先発ローテーション候補もピリッとしないのだから、指揮官が「うちのスカウトは何をやっているんだ」といら立ちを募らせるのもうなずける。

 近年の巨人のドラフトを振り返ると病巣は見えて来る。

 直近10年のドラフト1位だけを見ても2010年の沢村拓一、12年の菅野智之、13年の小林誠司、14年の岡本和真の各選手は順調に主力として成長しているが、その後がパッとしない。

 15年桜井、16年吉川尚輝、17年鍬原、18年高橋、そして昨年が堀田の各選手となる。

 桜井、高橋、吉川は1軍で大きなチャンスをつかみかけているが、まだまだレギュラー級とは言えない。

 その大きな要因はドラフトのくじ運にもある。

 最近の3年だけでも清宮幸太郎(日本ハム)村上宗隆(ヤクルト)を外して鍬原。根尾昂(中日)辰己涼介(楽天)を外して高橋。さらに昨年も奥川恭伸(ヤクルト)宮川哲(西武)とことごとくくじが外れて堀田指名だから運にも見放されているのだ。

 かつて自由競争の時代には、巨人という名前だけで有望選手が集まった。

 1965年にドラフト制度が採用されても、逆指名制度や自由獲得枠を設けてスター獲得が可能だった時代もある。しかし、大きな転機となったのが2004年に起こった「一場問題」である。

 当時、明大のエースだった一場靖弘投手に対して巨人、横浜、阪神などの球団がプロ入り前に飲食費や交通費として現金を渡していたことが発覚、巨人は渡辺恒雄オーナー(当時)が辞任する“事件”にまで発展。これを境に裏工作なしの現行ドラフトの形が出来上がった。

 加えて、巨人の信用が失墜したのが2015年に起こった「野球賭博事件」だ。

 2軍に在籍する複数選手が野球賭博に関与、後にNPBコミッショナーから無期失格処分を科され、球界から追放される汚点を残した。

 それ以来、アマ球界との信頼関係が崩れたと指摘するむきもある。その直後から外れくじばかりになるのだから、因果応報というべきか。

 かつて採用していたゼネラルマネジャー(GM)制度も今はなく、フロントの弱体化が叫ばれて久しい。

 原全権監督に現場だけでなくトレードやドラフト戦略まで託すしかないのが現状だ。

 今回のスカウト陣大改革がどんな“化学反応”をチームにもたらすのか。名門球団の悩みは深い。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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