今季初登板で快投

共同通信

 プロ野球が6月19日に開幕した。試合数は120に短縮、交流戦もオールスターゲームも中止になるなど、新型コロナウイルスの影響下での船出は多難ではあるが、いざ勝負が始まると白熱した戦いが展開されている。

 無観客のスタンドに選手たちは、あらためてファンのありがたみも感じている。何とかこの先も逆境をはね返し、最後まで戦い抜いてもらいたいものだ。

 その開幕直後で最も光り輝いていた選手を一人挙げるなら、文句なしにオリックスの山本由伸投手を指名する。

 今季初登板となった21日の楽天戦(京セラドーム)に先発するといきなり茂木栄五郎、鈴木大地、J・ブラッシュの上位打線から3者三振。圧巻のピッチングだった。

 その後も自慢のストレートは常時150キロ台を計測、そこに140キロ台のカットボールとフォークボールを織り交ぜ、さらに鋭く曲がり落ちるカーブと右打者の懐をえぐるシュートまで駆使されては、楽天打線もお手上げだ。

 結局8回を3安打10奪三振、二塁も踏ませぬワンマンショーでチームに今季初白星をもたらした。

 ゲームセットからわずか5分後には、海の向こうの大物からツイッターでコメントが寄せられた。

 「山本由伸投手、素晴らしい投球」。発信者はヤンキースの田中将大投手。楽天のOBだから、もちろん楽天を応援していたのだろうが、あまりの快投には脱帽、称賛するしかなかったのだろう。

 2016年のドラフト4位指名で今季がプロ4年目、まだ21歳の若者だが、これほど鮮やかな成長曲線を描いている選手は珍しい。

 1年目こそファーム暮らしが続いたが、それでもプロ初勝利をマーク。2年目には早くも頭角を現して4勝、32ホールドと中継ぎのエース格に躍り出る。

 そして先発ローテーションの一角に加わった昨季は8勝ながら防御率1・95で最優秀防御率のタイトルを獲得した。

 昨年秋に行われた世界大会の「プレミア12」で日本代表入りを果たすと、抑え役として「侍ジャパン」の世界一にも貢献。稲葉篤紀監督にとって、今やなくてはならない存在である。

 山本の代名詞と言えば「やり投げ投法」だ。入団直後のオフから陸上競技のやり投げを練習に導入。一見、肩を壊しそうな投球フォームに見えるが、下半身主導で投球の理にかなっている。

 さらに大きく振りかぶる右腕は自身の頭の後ろに隠れる形となり、どんな球種を投げて来るのか、打者にはわかりづらい。もちろん強靭な足腰と柔軟な筋肉が独特な投法を支えている。

 こんな逸材がドラフトの下位に隠れていたのだからスカウト業も面白い。

 山本自身があこがれるツインズの前田健太投手から「山本君みたいな球を投げたい」とインスタグラムで褒められたのは今年5月のこと。

 そればかりではない。6月には米国のテレビ局「CBSスポーツ」が注目する日本人選手を特集、投手編では千賀滉大(ソフトバンク)今永昇太、山崎康晃(DeNA)有原航平(日本ハム)とともに山本の名前が挙げられている。

 「90マイル(153キロ台)中盤の球を投げ、カットボール、スライダー、スプリットボールなどの精度が高い。彼が予想通りに成長し続ければ、アメリカのファンもいずれ彼を身近に感じることだろう」というのが山本評だ。

 千賀や有原らは今オフにもメジャー行きがされる投手だが、そんな中でまだまだFA権取得には時間のかかる21歳が、すでにメジャー関係者にも注目されているのだからすごい。

 チームは最下位からの巻き返しを誓うが、滑り出しは苦戦が続く。

 開幕から5試合で上げた白星は山本が挙げた楽天戦の1勝だけ。昨季に最高勝率のタイトルを獲得した山岡泰輔投手との2枚エースは強力だが、それ以外の投手陣がどれだけ踏ん張れるか。

 そしてメジャーの超大物、A・ジョーンズを獲得した打線が破壊力を増すのかが浮上のポイントとなる。

 打者ならホームラン、投手なら奪三振が「野球の華」と言われる。

 今や日本を代表するエースに成長した山本の奪三振ショーはこの先、どれほど見られるか。世界も驚く怪腕の進化は止まらない。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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