「借金返さなきゃ」「シングルマザーで3人の子育ても…」コロナ禍で追い詰められるキャバ嬢 「時代を記したい」レディコミ作者語る使命感

オリコン

『ゴミ屋敷とトイプードルと私』をはじめ、現代社会を鋭くえぐる衝撃作を次々と発表する人気レディコミ作家・池田ユキオさんが、コロナ禍におけるキャバ嬢たちの生き様を描く『胡蝶伝説』シリーズ最新作を連載スタートした。2000年代に起こった「age嬢ブーム」の頃より、キャバクラを舞台とした漫画を描き続けてきた池田さんだが、昨今は「夜の街関連」というワードでとかく叩かれがちなこの職業をどのような視線で見つめてきたのか、話を聞いた。

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■ナンバーワンを目指さなくなったキャバ嬢たち

──キャバ嬢の愛憎バトルを描いた前作『胡蝶伝説~復活嬢と地雷嬢~』(ぶんか社配信)は、電子書籍で累計140万DLされている人気作です。新作は何年ぶりですか?

【池田ユキオさん】最終回が、東日本大震災が起きたときだったので、9年ぶりになりますね。当時とはキャバ嬢事情もずいぶん変わったので、改めて取材をしているところです。

──キャバ嬢事情が変わったとは?

【池田さん】まず見た目のファッションがぜんぜん違いますね。当時はまだまだ盛り髪の全盛期で、10センチくらい盛るのは当たり前で、今の子が見たら笑っちゃうかもしれません。今のキャバ嬢は、普通にいるキレイなお姉さんのような雰囲気です。ドレスもかつてと比べて上品な感じですし、かつてのようなド派手な格好をしてる子は見かけません。

──今は盛り髪をしないんですね、なぜファッションに変化が?

【池田さん】1つは、キャバクラ自体が普通のアルバイトとして浸透したこともあると思います。大学生の子も多いですし、別にナンバーワンにならなくてもそこそこ稼げればいい。卒業したら就職するんだし、そんなに気合いを入れてやるのもしんどいし、という思いもあるんじゃないでしょうか。

──ナンバーワンを目指さないなら、女同士のバトルもあまり起こらない?

【池田さん】そこも当時との大きな違いのようですね。先日も現役の子にインタビューしたんですが、「みんな仲良しだし、足の引っ張り合いなんてないですよ」と言ってました。無駄に喧嘩するよりもそのほうが仕事もしやすいし…と。私はわりとドロドロな人間関係も含めて、キャバクラという非日常な世界に面白さを感じていたんですがね。

──『胡蝶伝説』で描かれる世界にも変化がありそうですね。

【池田さん】もともと『胡蝶伝説』は、"キャバクラが舞台のスポ根漫画"として描いたんです。主人公が知恵と工夫と努力で、次々と現れる強敵を倒していくという構造ですね。だから当然バトルは多かったのですが、最新作では現代社会の状況と、それにまつわる個人の問題、そしてキャスト同士の絆に踏み込んで描きたいと考えています。

■切っても切れない「貧困と夜の街」の闇深い関係

──最新話は、「コロナ禍におけるキャバクラ」から始まります。

【池田さん】『胡蝶伝説』の新作を描くにあたって、そこは絶対に無視できませんでした。もしかしたら今は、キャバクラのシステムや営業スタイルが大きく変わる潮目なのかもしれないと思って取材を進めているところです。

──取材を通して見えてきたことは?

【池田さん】フェイスシールドを付けて接客したり、距離を開けたり。ある系列店では、感染対策としてキャストの抗体検査を定期的にしていると言ってました。ただお客さんあっての商売ですから、それだけで完全に防げるわけではないのが難しいところですよね。

──来客の数も減っているのでは?

【池田さん】ある系列店では5店舗のうち3店舗を閉店し、女の子たちを2店舗に集約したそうです。また女の子たちも常勤ではなく、自分のお客が来るときだけ出勤するとのことで、収入的には大打撃だとか。

──とかく高収入がクローズアップされるキャバ嬢ですが、先生の「貧困女子」をテーマにした漫画を読むと、そんな子ばかりでもなさそうですね。

【池田さん】もともと貧困と「夜の街」は切っても切れない関係にありますからね。コロナ以前から、実家の借金を返している子やシングルマザーの子、学費を自分で払ってる子など、キャバ嬢にもいろいろいました。ちなみに貧困をテーマにした漫画が増えてるのは、そういうオファーが多いからなんです。

──ということは、レディコミにおいてそういった漫画がウケている?

【池田さん】たぶんキャバ嬢や風俗嬢だけでなく、社会に暗い空気を感じている方が多いんだと思います。辛い状況にある人に、少しだけ光を見せるといった展開がレディコミでは多いので。ただ私はあくまでエンタメを描きたいので、多少オーバーに表現しているところがあるということだけは言っておきます。

■キャバクラの世界を漫画で描き、時代を記していきたい

──そもそも漫画の題材としてキャバ嬢に惹かれる理由は?

【池田さん】私がキャバクラ漫画を描き始めた頃のキャバ嬢たちって、とにかく勢いがあったんですよ。きらびやかな世界で見た目も華やかで、こっちまで元気をもらえるみたいな。だけどやはりお金が飛び交う世界なので、その裏ではすごくドロドロしてたり、闇が深かったり。そんなドラマティックさに惹かれて描き始めたところがありました。

──キャバ嬢という職業モノとしての面白さもあるんでしょうか?

【池田さん】私はむしろ、青春モノに近いと捉えて描いてきました。やっぱりキャバ嬢って、ほとんどの子はある一定の年齢までしかできないんですよ。一瞬の時期に何かに打ち込む姿を描くのが青春漫画だとしたら、刹那的な職業であるキャバ嬢でも描けるんじゃないかと考えたんです。

──今のキャバクラの状況をどのようにお感じになっていますか?

【池田さん】一部の裏でやっているお店は、感染対策が万全ではないなど、やはり危うさを感じるところもあります。ただそういった店ばかりが「夜の街」としてクローズアップされて、優良店までもが一緒くたに叩かれている状況はものすごく悲しいですね。

──そうしたキャバ嬢たちの苦しみを世間に理解してもらいたい、というお気持ちも?

【池田さん】私としては、何が正しくて何が悪いということを描きたいという気持ちはなくて、ただ今の時代を記しておきたいんです。そのためにも、もっと勉強や情報収集をして、その上で多くの方に読んでもらえるようにエンタメとして発信していくだけです。

──この漫画に勇気をもらうキャバクラ関係者はきっといると思います。

【池田さん】コロナで苦境に立たされているのは何もキャバクラだけではないけれど、日本独自で発展したキャバクラという産業がなくなってしまうのは寂しいです。私自身、漫画の題材や取材でもお世話になってきましたし、少しでもいい状況に向かっていくことを願っています。
(文/児玉澄子)

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