市中での爆弾処理、土地高騰で空中生活…モデラーが作品を通じて伝えたい現代社会の問題点

オリコン

 明治時代、ビゴーが急ピッチで近代化が進む日本の様子を、“風刺画”として描いていたように、芸術家が時代時代の情勢に対して“思うところ”を、作品に投影するのはよくあること。現代にもこうした思いを作品に表すモデラーも存在する。さいそう(@Soheiheihei)さん、shiro(@shirosox)さんはそれぞれ、世界のどこかで現在起こっていることと、近未来の日本を思わせる題材の作品を残した。そこに込められた思いとは?

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■兵器や兵士は多くの人を魅了するが…そこには「死」がある(shiro)

――決して大きくないスペースに「物語」をもたせたジオラマ作品を発表されてますが、どのようなきっかけで、こういう作品を制作するようになったのですか?

【shiro】プラモを置いてフィギュアを並べると、自然とストーリーが生まれるのですが、よりテーマと具体性を持たせるようになったのは4年程前からです。平野義高さんの作品で「総統命令“死守”1942年1月平野義高」という作品があるのですが、敵に包囲され絶望的な状況をフィギュアや小物の配置で表現されていて、すごく衝撃を受けたというのが、今のジオラマ作りに影響していると思います。遠くおよびませんが目標にしてます。

――作品の「物語」はどのようにインスピレーションを膨らませているのですか?

【shiro】配置したフィギュアや物に対して、状況・人間関係・過去を思い描くことで、ひらめいたり、映画、小説、漫画、戦場写真でヒントを得たりしてます。

――代表作「daisy chain」は、防護服に身を包んだ兵士が1人で爆弾処理している様子が印象的です。この作品はどのようにイメージしたのですか?

【shiro】イラクを舞台にしたアメリカ爆弾処理班を描いた戦争映画「ハート・ロッカー」をモチーフにしてます。映画を観た時に、いつか爆弾処理を題材にしたジオラマを作りたいと思いました。映画でも表現されてますが、これだけの量の爆弾に防爆スーツは役に立ちません。孤独で極限の緊張状態での解体作業を表現できないかと思いました。映画のシーンをそのまま再現したのではなく、自分なりにアレンジしてます。

――爆弾の処理が、民間の一般的な家が並ぶ中で行われていることが衝撃です。

【shiro】人々の生活の場に仕掛けられた爆弾をしかけるというテロリスト、武装グループの非情さや冷酷さを表現しました。情景に人の生活を感じられる事がポイントになりますので、そこにはこだわりました。屋上の洗濯物、干されたラグ、露天商、捨てられたゴミ、張り紙。中央にベビーカーを置いたのは、この家に子どもがいることを暗示させてます。

――本作を含め、「戦争」を題材にした作品を制作されていらっしゃいますが、作品にどのようなメッセージを込めていらっしゃいますか?

【shiro】映像や書籍で見る戦争という極限状態の中で生まれるドラマ性に、強い印象を受けてきました。死を直接表現することはしてませんが、それを匂わせる表現は必ず盛り込んできました。兵器や兵士のカッコよさは多くの人を魅了しています。でもそこには必ず、「戦争」という死と隣り合わせのものがある。そのことを、作品を通じて感じてもらえたらと思っています。
 実際、この作品を作る資料として、ネット上で画像検索を行いましたが、凄惨な人の姿や破壊された街の状況を多く見ることになりました。ニュースで空爆の映像を見ると、その爆発の下でどれだけ多くの人がその犠牲になったのかと思うと、胸が痛みます。過去からも繰り返され今も世界のどこかで行われている戦争。そこでの凄惨な状況を世界が知ることで、平和的な解決に向かってくれればと思います。

■技術の進化と土地の高騰が“空中生活者”を生む?(さいそう)

――代表作「浮遊邸」はどのようなストーリーをイメージし制作されたのですか?

【さいそう】「バブル景気は未だ弾けず、人口増、不動産価格高騰は止まらない。地上に土地を持つことが出来なかった庶民は居住地を空に移すほか生きる道はなかった。そんな斉藤家は家族四人で今日も元気に楽しいスカイライフを送るのである…。」というのが簡単な設定です。当初は、特に深く考えずに作り始めたのですが、作りながら作品としてのリアルさを出すために現実社会でもあるような問題をイメージして設定に盛り込んでいったら面白いのではないかと思い、結果的にこのような形になりました。

――そう聞くと余計になにか、日本社会にも通じる背景を感じます。

【さいそう】ロンドンでは住宅費の高騰によって船上生活者が増えているというニュースを見たことがあって、それもヒントに膨らませていきました。
 日本では、今でも都心の人気のあるエリアに個人で土地を持つのはとてもじゃないけど難しい。だからその利便性を大勢でシェアするためにマンションがどんどん建っていますし、いずれそのマンションを建てる土地がなくなってきたら、最終的にはスペースコロニーに移住みたいな時代が来てもおかしくはない。
 また、いくら科学技術が進歩していってその恩恵を受けることができたとしても、生活の彩りとしての部分、具体的には娯楽など生きていく上で必ずしも必要でないものは、結局経済的な格差が如実に表れていく。例えば、昔は、車は高級品だったけど今ではみんな乗ってますいる。でもその車は、価格や性能は比べたらピンからキリまでものすごい差がある。そういう部分を作品に落とし込んでいけたら面白いかなという思いもありました。
 「浮遊邸」は、住宅を空に飛ばす技術が一般化した時代、家だけでなく、犬小屋だって飛ばしちゃう。土地を購入することに比べたらかなり安く済ませることができるんだけど、結局家屋の部分は普通にお金が掛かるので、新築や新しめの家ではなく、中古で買った長屋の一部分を強引に乗せているといった感じです。

――本作制作で一番のこだわりは?

【さいそう】ジオラマってある瞬間や空間を切り取って表現するのが主で、そうすると大体は四角い舞台に切り抜いて、その舞台で色々表現していくことになると思うんです。でも、そういう従来通りの舞台を切り抜く方式ではなく設定で独立した空間として分離させることができたらジオラマとしては新しい表現になるのかなという思い制作していました。

――最後に、さいそうさんにとって模型とはどのような存在ですか?

【さいそう】私は、普段はCMやMVなどの広告のCGを作る仕事をしています。幸運にも自由に楽しく仕事させていただけていますが、とはいえ仕事なのでやはりいろいろな事情が重なって、お客様ありきのものを作ることが多いです。そんななか誰からも制約を受けないし、ある種、自分は実在しない「さいそう」というネット上の存在なので、失敗しても関係なくプレッシャーもない。そんな自由な創作活動ができる自分にとっての良い表現媒体に今はなっているかなと思います。

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