老舗カミソリメーカー発信の“脇毛”ガール話題 「剃ることに100年以上向き合ってきた私たちが発信することに意味がある」

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 100年以上の歴史を持つカミソリメーカー・貝印が「#剃るに自由を」というスローガンのもと、“脇毛”が印象的なバーチャルヒューマンMEMEをモデルに起用した広告を展開。SNS上では「超先進的」「女性だから剃らなくてはいけないはもう間違っている」など、多くの賛同する声が寄せられた。海外では「神様が与えたものはそのままに」という考えから女性でもあえて脇毛を残すムーブメントが進んでいる地域もあるというが、“剃る”ためのカミソリを製造する当社が同メッセージに込めた思いとは。貝印の齊藤淳一さんと畑谷友香さんに聞いた。

【画像】「超最先端」話題となった”脇毛ガール”ほか、貝印広告フォトギャラリー

■批判を覚悟も予想以上の賛同の声 価値観の押し付けに悩む女性からも「この広告に救われた」

――今回『#剃るに自由を』をテーマに広告を展開された経緯は?

【齊藤】日々SNS上のお客様の声を拾っている中で、「なんで毎日剃らなきゃいけないのか」「剃ることへのプレッシャーを感じる」といったような、剃ることに対して悩みを感じている方が多くいらっしゃることを感じており、今回のプロモーションの検討に至りました。今年7月に600名の男女を対象に意識調査を実施したところ、「剃ること自体もファッションや髪型のようにもっと自由であってほしい」という意見が9割にも上ったことから、剃ることも剃らないことも自分で選択できるような世の中になってほしいという思いで『#剃るに自由を』をテーマに設定しました。そもそも、剃る・剃らないの選択が個人の自由であることは当たり前のはずなのですが、社会の風潮や周りの意見、広告が与えるイメージも相まって自由に選択できない方が多くいらっしゃるので、こちらから「本当は自由なんです」っていうメッセージをお伝えすることで、色んな議論が巻き起こって欲しいという思いもありました。

――実際、反響はいかがでしたか?

【畑谷】予想以上の大きな反響をいただいて本当に嬉しく思っています。ある程度ネガティブな意見も想定していたのですが、ポジティブな意見が非常に多く、賛同や感謝のお声をたくさんいただきました。例えば、「体毛が濃くて、肌がツルツルであるべきという価値観の押し付けに悩んでいた」という女性の方から「この広告を見て救われた」という熱いメッセージをいただいたり。あとは「多様性を認める」っていう広告のメッセージに賛同いただいている方が非常に多くいらっしゃいました。男性からも、「自分も剃ってみたい」「ツルツルにしていいんだと肯定してもらえる」というようなお声もいただきました。

――メーカーとしては「剃ったほうがいい」という回答の方が有益なのではないかと思いますが、「剃らなくてもいい」という意見を前に打ち出したのはどういった思いがあったのでしょうか?

【齊藤】「どんな選択も個人の自由なんだよ」っていうのが伝えたいメッセージではあったとは言え、正直誤解が生じる可能性もあると思っていました。ただ、100年以上カミソリを作り続け、”剃る”ということに100年以上向き合ってきた私たちが発信することに意味があるのではないかと思い、今回の取り組みに至りました。

――体毛が濃いことを気にして、剃毛・脱毛しているお子さんもいると聞きますが、そういったことについてはどうお考えですか?

【畑谷】個人的には、確かに一番最初にムダ毛を気にしたのは小学生の体育の時間だったなと思います。他の子と比べて自分の方が濃いとか、他の人と合わせたいなっていう気持ちがあったなと。なので、そういった体毛に悩みを抱えている方や、剃ることが難しい方が気にしないで過ごしていただけるよう、自分らしくいていいんだよというメッセージを今回の広告で伝えられたら嬉しいです。

■100年以上受け継がれる「野鍛治の精神」と、常に最先端目指す“カッティングエッジ”風土

――今回モデルとして、CGで作られたバーチャルヒューマンMEMEを起用されたのはなぜですか?

【齊藤】リアルなモデルの起用も検討したのですが、どうしてもその方の思想や今まで発信してきたイメージというのが前に出てきてしまうので、なるべくまっさらな状態で皆様に議題について考えていただきたいという思いから、MEMEを起用しました。また、人物やアニメキャラクターではどうしても細かい産毛の表現が難しかったのですが、バーチャルヒューマンを起用することでよりリアルに表現することができたのかなと思っています。

――MEMEさんの顔にはそばかすや痣を描かれていますよね。

【畑谷】バーチャルヒューマンMEMEは人形的なモデルではなく、リアルな人間のように感情を持っている、バーチャルの人間として定義しています。MEMEも多様性のある美を追求し、性格も心に悩みを抱えているような普通の女の子をコンセプトにしています。そばかすと痣に関してもコンプレックスをポジティブに個性として捉えられるような側面を表現しています。

――MEMEさんの外見含め、「超先進的」というコメントがSNS上に寄せられていましたが、100年以上の歴史がある中で、社内で本案を進めるのに苦労した点はありましたか?

【齊藤】意外に社内からの反応はポジティブでした。弊社では「野鍛治の精神」と呼んでいるのですが、製造拠点である岐阜県関市ではお客様のオーダーメイドで刀を作る野鍛治という伝統文化があり、お客様の声を第一に考えるというのは脈々と受け継がれている精神であると感じています。ですので、今回もお客様の声から始まったプロジェクトということで前向きに進めていくことが出来ました。刃物メーカーらしい、社内でよく使う「カッティングエッジ」という言葉があって、刃先という意味から“最先端”を表す言葉ですが、常に最新の技術や情報、“カッティングエッジ”を求める風土があるように感じています。

――今回のグラフィックを通じてどのようなことを伝えていきたいですか?

【齊藤】今回、グラフィックとしては脇毛の処理にフォーカスされてしまいましたが、剃毛に対してはもっともっと色んな問題があるんじゃないかなと思っています。例えば海外で定着しつつある男性が剃毛するという風潮も日本に徐々に浸透していると思っていて、そのような流れの中でも皆さんが悩みから解放されて、剃ること自体が楽しくなったらいいなと思っています。

【畑谷】女性目線でお話しすると、ファッションでこういった脇毛にするのもアリなんだって思ってもらうのと同時に、剃れていなくても、剃り忘れがあっても大丈夫だよということが伝えられたら嬉しいです。皮膚の疾患で剃ることが難しかったり、お仕事や育児が忙しくてケアができないっていう時に恥ずかしくて暑い日でも長袖着たりする方もいらっしゃると思うんですけど、今回のグラフィックを通じて、少しでもそういったプレッシャーから心が解放されて心が明るくなってもらえたら嬉しいなって思っています。
(文=鈴木ゆかり)

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