キンコン西野×HYDE、なんでも裸にされるSNS時代「神秘的な“世界観”を保つのは難しい」

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 独特かつ美しい世界観で多くの読者を魅了したキングコング・西野亮廣の絵本『えんとつ町のプペル』。その劇場版オープニング主題歌を、HYDEが担当する。HYDE主宰のハロウィンイベントのテーマ曲でもある「HALLOWEEN PARTY」を、今回新たに「HALLOWEEN PARTY-プペルVer.-」として子どもたちのコーラスを加えアレンジ。ハロウィンを舞台とした同映画の世界観にさらに深みが増している。同映画、同楽曲について、それぞれ独自の世界観を持つこの2人のアーティストはどう考えているのか。“世界観”をキーワードに話を聞いた。

【場面カット】拡大して見たい…繊細なタッチで描かれる『映画 えんとつ町のプペル』の世界

■HYDE「『やべえヤツが出てきたな』って悔しかった」、西野「勘弁してください(笑)」

 『映画 えんとつ町のプペル』の舞台は、いつも厚い煙に覆われ、空を知らないえんとつ町。煙の向こうに“星”があるなんて誰も信じていない世界で、星の存在を信じ続け、笑われて一人ぼっちになってしまった、えんとつ掃除屋の少年ルビッチとゴミから生まれたゴミ人間プペルが出会ったことから物語が始まる。

――『映画 えんとつ町のプペル』誕生の経緯を教えて下さい。

【西野亮廣】 元々は映画の脚本が先にあったんです。ただ、誰も知らない作品を観に映画館まで足を運んでもらえないだろうなと言うことで、まず認知獲得をするためにストーリーの前半部分と後半部分をバッサリ切って途中のところを抽出してスピンオフ的に絵本を出したんです。なのでそもそも映画を作る想定で絵本を作っていたので、いよいよだなという感じですね。

――その絵本が50万部超え! HYDEさんは絵本を読んでみていかがでしたか?

【HYDE】 大好きな絵本だったのでオファーをいただいて本当にうれしく思いました。でも正直、西野さんにお会いする前は「ちょっとやべえヤツが出てきたな」って(笑)。芸能界でこんなもの作るヤツがいるっていうことがショッキングでしたね。内容もとても良かったし、ちょっと…悔しかったです(笑)。

【西野】 恐れ多いですよ。勘弁してください(笑)。

【HYDE】 そんな感じでライバル視していたんですけど「昨日の敵は今日の友」みたいな(笑)。しかもイケメンですよね。お会いしてみてカッコいいなって思って。モテるでしょ? モテるし才能あるし。やっぱりちょっと悔しいな(笑)。だけどその西野さんの映画に「え、俺も参加していいの!?」と。「HALLOWEEN PARTY」はもともと、ハロウィンがまだ日本に定着してなかった2005年から僕がやっているハロウィンイベントのために作った理想的なハロウィンソングなんです。今回、脚本や絵コンテを見せていただき、この町でこの曲が流れている雰囲気、えんとつ町の住人が踊っている様子を想像してアレンジしました。

【西野】 本当に光栄ですね。元々好きな曲だったのですが、そもそも使わせていただけると思ってもいなかったんです。でも何もせずに諦めるのは嫌だったので、ダメ元でお願いをしたら快諾いただいて。めちゃめちゃ喜びましたね。

■HYDE「作品は唯一、自分で構築できるもの。その“世界観”の中だけは夢を見たい」

――西野さんはHYDEさんにどのような印象を持たれていたのですか?

【西野】 天才! あとファンタジーの人ですね。ファンタジーをまとっている。普通、そういった世界観ってみんなどこかで限界がきてドロップアウトするじゃないですか。時代の流れもありますし、ずっと続けていくのって本当に難しいと思うんです。芸能の仕事をしていると、それを守れなくなるタイミングがいっぱいあるんですよ。でもHYDEさんはそれをずっとやってらっしゃるので、すごい才能と信念とチームワークがあるのでは。最初にパッと見たときのイメージをずっと守ってくださっている。先輩がそういうことをやってくださると、僕も頑張ったらそういう人にちょっとでも近づけるのかな、って思えるじゃないですか。希望でしかないです。

――なるほど。西野さんから見て、HYDEさんはご自身の“世界観”をずっと保たれている方なんですね。

【HYDE】 う~ん、どうだろう。でも確かに僕自身、ヴァンパイアに憧れるところがあって。

【西野】 ああ!

【HYDE】 実際、そういうアーティストの方もいるんです。「この人、人じゃないのかも」って思えると夢があるじゃないですか。その憧れは今もありますね。でも昨今はSNSなんかで、なんでもバラされちゃう。歳から体重から身長から…。だから神秘的な“世界観”を保つのが難しい時代だという実感があります。でも作品は唯一、自分で構築できるものですよね。その“世界観”の中だけは夢を見たいなって。

――SNSは自分以外のユーザーがイメージを作っていく場所でもありますよね。西野さんは、みんながSNSで発信するのが当たり前になったネット社会についてどう思われますか?

【西野】 おっしゃる通り、 “人”に関しては結構裸にされてしまうのは仕方がないなと思っていて。

【HYDE】 メジャーになればなるほどね。

【西野】 確かにね。

【HYDE】 だから本当は売れないほうがいいんです。ベールに包まれていたほうがいい。でもそのためには売れてはいけない。結構なジレンマですよ。

――西野さんはどうでしょう? ご自身の“世界観”について。

【西野】 僕は自分自身が独特な世界観を持っているとは思わないんですが、ただ何かしらの”世界”は作るので、その時に制限は結構あるなと思います。…例えば、えんとつ町っていうものがあって、空が煙で覆われています。それで月や星が見えないなら、“12”っていう数字はないはずなんですよ。“12”って月の満ち欠けからきている数字で、一年365日を一ヶ月30日で割ると“12”なので。つまり天体ってものが存在しない限り、“12”って数字で区切ることはないはずなんです。とすると、えんとつ町の中でも“12”っていう数字を知っていてかつ隠している人がいて、それを知らない人の家の時計には”12”っていう数字がなくて、指の本数の”10”で一周する、みたいな。

 これをなんでもありにしてしまうと、世界観みたいなものは薄れてしまう。ファンタジーといっても全然自由ではなくて、世界を作ろうと思ったら、色んな規制、制限があるんじゃないかと思うんです。

■西野「“ファン”は、『自分の未来に賭けてくれる人』って定義しないと変われない」

――先程も触れていただきましたが昨今はSNSの浸透により、聴いたり観たりする側…ファンたちの声も可視化されるようになりました。そういった部分から感じ取れるファンが持つ世界観と、ご自身の世界観でギャップを感じることもあるんですか?

【HYDE】 それ音楽系では大きい問題ですよね。「このアルバムと違う!」みたいな。ファンは最初に聴いたものでファンになるわけだから、それと同じものを求めるじゃないですか。

【西野】 わかる…!

【HYDE】 そうそう。でもだからといって同じものを作っていたらアーティストとしてはダメだと思うんです。常に進化していかなければいけない。会社に言われるままに「こういうのが売れたから次も」という指示で、同じようなものを大量生産するアーティストもいる。僕からすれば、それをやっちゃうと逃げられなくなってしまう。

【西野】 ああ、そうか…。

【HYDE】 だから、多少裏切ってでも進化してどんどん新しいニーズをつかまえていかないと、元からいたファンも飽きちゃうんですよ。僕はアーティストは開拓心がないとダメだと思う。嫌われてもいいから、自分がカッコいいと思ったものをいかしていきたい。

――西野さん、かなりうなずいていましたね。

【西野】 心当たりがあって。僕最初は0.03mmのボールペンで絵本をずっと描いていたんです。白黒だったんですね。で、4作目が「えんとつ町のプペル」だったんですね。細かいところを描くのは得意なんですが、色を塗るのは得意じゃないので、その時に「分業制で作る」っていったんですよ。その時にこれまでの前3作のファンの人達が、「いや、そんなのダメだ」って言うんですよ。「作家性が薄れる」みたいなことを結構言われたんです。これにはちょっと異論があって。「作家性が薄れる」って言うけど、僕の中にあるえんとつ町はカラーなんです。ただ、僕がカラーに落とし込むだけの技量がないから、色塗りの部分は得意な人にお願いしたまでで。だから分業の方が、明らかに頭の中にある景色が投影されているんです。

 葛藤があったんですが、そのときに決めたのは、『ファン』の定義をはっきりさせようと。『ファン』っていうのは、「自分の未来に賭けてくれる人」なんだ、って定義しないと変われないなって。これだけ時代がコロコロ変わっていく中、変わらないことを求められちゃうとジリ貧になっていっちゃうので。挑戦できない変われないカラダって、造り手としての死刑宣告じゃないかって思うんです。「未来に賭けてくれる人がファン」というふうに分けたら、挑戦しやすくなりました。
【HYDE】 そうでしょうね。そういうふうに足元ばかり見られると僕も困ってしまうな。でも僕はアーティストだから、挑戦を続けたい。これからもみんなが見たことない、僕も見たことがない世界に挑戦しながら、自分の世界を作り続けていきたいと思います。

――最後にお二人からメッセージを頂いても良いですか?

【西野】 本当に、数多のハロウインソングがある中、この曲がいいってわがままを通して選ばせていただいた曲なので、もう間違いないです。あとは、僕とか、映像側のスタッフがちゃんと追いつけるように映像を作るっていう。そこはちゃんとやりますので、お楽しみに。曲は間違いないです。

【HYDE】 やっぱり、絵本は招待状だったってところじゃないですか。ここからさらにどっと広がる世界観が楽しみだし、このチラシ一つとってもこだわりを感じるし、可愛らしいじゃないですか。この世界観が。そんな素晴らしい作品に参加できて、とても光栄に思っています。是非公開を楽しみにしてもらいたいです。

【西野】 うれしい! すごく楽しかったです。ありがとうございます。

(取材・文/衣輪晋一)

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