「サッカーコラム」その判定を変える必要はあったのか

共同通信

 シーズンも大詰めになると、余計な思惑が働くのだろう。新型コロナウイルスのため、今季はこれまでにない変則日程の採用を余儀なくされた。影響で、選手たちがフィジカル的に疲弊しているのは疑いない。ここにメンタル面での要素が加わると、素晴らしい戦いを見せてきたチームでも、ぎこちない試合を見せることがある。「勝たなければならない」と「負けてはいけない」のはざまに立たされて、本来の実力を発揮できないのだ。

 12月6日のJ2第39節と13日の第40節。J2徳島はどちらかの試合で勝てば2位以内を確保し、7シーズンぶりのJ1復帰が決まるはずだった。ところが、6日には水戸に0―1で敗れ、13日も千葉に0―0で引き分けた。2度あったチャンスを生かせず、昇格はお預けになった。2試合を残し、2位福岡とは勝ち点3差、長崎には5差。得失点差も10点近く開いているために2連敗しなければ長崎に抜かれることはない。

 リカルド・ロドリゲス監督も昇格について「いずれにしろわれわれの手のなかにある」と語っているが、物事は簡単にはいかないものだ。降格圏にいれば、結果を考えずにただ戦うだけだが、ご褒美が待ち受ける上位のほうが余計な考えが入り込むのだろう。

 12日行われたJ1第32節は注目の2カードが行われた。J1リーグで3位以内のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得は変わらないが、2位以内に入れば天皇杯準決勝からの出場が可能になる。例年のJ1全チームが出場するレギュレーションと比べれば、特例となる今年はタイトルがとても近くなる。

 変則日程で消化した試合数もチームによって異なる。ややこしくなるのだが、優勝した川崎を除く上位チームがこの試合前におかれた状況はこうだった。2位G大阪は11月にACL組の神戸と第32節を消化しているため試合なし。3位名古屋は横浜FCと、4位C大阪は柏と対戦した。

 期待して見た試合だったが、残念ながら内容はそれほど素晴らしいものではなかった。盛り上がるはずの得点シーンもなし。本来ならば勝ち点3を是が非でもほしい試合で、名古屋、C大阪ともに0―0の引き分けに終わり、得た勝ち点は最低限の1ポイント。順位は試合前と同じ、G大阪(62)、名古屋(60)、C大阪(59)の並びとなった。

 勝敗を分けるポイントとなったのは、名古屋戦で起きたPKを巡る判定の場面だろう。後半34分、名古屋はガブリエル・シャビエルがペナルティーエリア内左へ走り込んだジョアン・シミッチに浮き球のクロス。シミッチがヘディングで折り返したボールを、横浜FCのDF田代真一が腹部でワントラップしてクリアした。次の瞬間、池内明彦主審の笛が吹かれ、指先はペナルティースポットを指していた。

 今季、J1が本格導入する予定だったもののリーグが再開された第2節以降は使用を見送られたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)があれば何の問題もない場面だった。田代の腕は体に密着していたが、映像で見ると確実に腕に当たっている。PKをとっても何の問題にもならなかったはずだ。池内主審は目の前で見ていたのだから、自分自身の判断に自信を持てばよかった。もしくはハンドの反則をとらずに、流すという方法もあった。名古屋側から多少の文句は出るだろうが、数分たてば普通に試合が続いていただろう。

 問題をややこしくしたのは、一度PKと判定していながら、横浜FC側の抗議で副審と協議したことだろう。主審よりもゴール前から離れている位置にいた副審。そのアドバイスがあったのかどうかは分からないが、結果的にPKの判定は覆ってしまった。これでは名古屋側の気持ちが収まらないのも当然だ。ぬか喜びほど、がっかりするものはない。

 何事もなく試合をコントロールして当たり前。ミスしたら一方のチームやサポーターからひどい抗議を受ける。長らくサッカーを見てきているが、審判だけはやりたくないと思う。その大変な役割をこなしてくれるのだから、審判にはリスペクトを持って接しなければいけない。加えて自分たちの不利になる判定ミス、有利になるミスが“平等”に巡ってくることがあるということを選手は知らなければならない。

 ただ、「あのPKがあれば勝ち点3だった」という名古屋側の気持ちは十分に理解できる。G大阪とC大阪が2試合なのに対し、名古屋は1試合しか残していない。勝ち点を62に伸ばし得失点でG大阪を上回る2位に浮上していれば、ライバルにプレッシャーをかけられたという思いはあるだろう。

 試合後、マッシモ・フィッカデンティ監督が怒りに満ちた顔で次のように語っていたのが印象的だった。

 「すごく残念な気持ちだけが残る、後味の悪い終わり方だった」

 16日にはJ1の第33節とJ2の第41節が開催された。その結果、J1では横浜FCを破ったG大阪が2位を確定。天皇杯と来季のACLの出場権を獲得した。一方、J2も徳島と福岡がJ1昇格を決めた。

 いままでにない過酷なシーズンを戦ったJリーグも、残りあと1試合。最終節はどのディビジョンも気持ちよく試合を終えてほしい。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

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