ソフトバンク、小久保ヘッドコーチ誕生

共同通信

 巨人を破って4年連続日本一を決めたばかりの昨年12月、ソフトバンクは次なる改革に乗り出した。

 工藤公康監督を補佐するヘッドコーチとして、小久保裕紀氏の就任を発表したのだ。

 9年ぶりの古巣復帰となる。現役時代は本塁打王や打点王に輝き2000安打も達成。ダイエー、巨人、ソフトバンクでは4番としてチームの顔であり続けた。

 2013年には日本代表監督に就任。そんな「大物ヘッドコーチ」誕生の記者会見には王貞治球団会長や三笠杉彦GMらも同席して、期待の大きさをうかがわせた。

 直近の10年間で7度の日本一、工藤監督が誕生した15年からは6年で5度日本シリーズを制したホークスは、今や押しも押されもせぬ常勝球団となった。

 「組織が順調な時は人事をいじるな」という声がある中で、あえて次に着手するのがソフトバンクらしい。

 三笠GMはその狙いを語る。一つは野手の選手層の底上げ。近年、圧倒的な投手力で他チームを凌駕してきたが、野手に目を転じると長年チームリーダーを務めて来た内川聖一が昨季限りで退団、松田宣浩も今年で38歳を迎え、打撃面の衰えは隠せない。柳田悠岐以外の和製大砲が待たれる。

 二つ目は「長期的に強いホークスを目指す中で常勝軍団を作ってきてくれた方に戻っていただき、これからの歴史を作っていきたい」。つまり、チームレジェンドを活用して「ホークスイズム」の伝承をというわけだ。

 前身のダイエー時代を含め、九州移転後から歴史の浅いソフトバンクは、歴代の指導者も王会長、秋山幸二氏、そして工藤現監督と巨人や西武から人材を募ってきた。

 その戦略は見事に花開いたが、将来的にはホークス生え抜きの選手たちに託したい。その第一歩が小久保ヘッドコーチの誕生である。

 「厳しさと愛を兼ね備えた存在になりたい。工藤監督と選手、コーチ陣とのパイプ役になれれば」。小久保氏の就任第一声がこれだった。

 投手出身の工藤監督の最大の強みは投手陣を自在に操る用兵にある。だが、野手陣の育成は思うように進まない。

 作戦面では昨年までヘッドコーチを務めた森浩之現3軍監督に頼る部分が多かった。そこで今季からは投手を工藤監督が、野手は小久保氏がにらみを利かせる「二頭体制」に移行する。

 チームには昨年頭角を現してきた栗原陵矢周東佑京らがいる。小久保氏は将来のクリーンアップ候補としてファームにいる砂川リチャードらの名前も挙げた。

 当然、野手陣の底上げと未来の大砲育成となれば、従来通りの指導法とはいかない。球団としても期待するのが「鬼ヘッド」の誕生だ。

 現役時代は練習の虫。やると決めたら妥協はない。

 巨人時代の06年の宮崎キャンプのことだった。打撃練習中に打球がケージに跳ね返り、右目を直撃して病院に直行した。ところが、すぐに室内練習場に戻ると何事もなかったかのように練習を再開。一日に1000スイングを自らに課し、それを遂行するためだった。

 「彼は自分で自分の体を鍛え、バットを振り続けて地位を築いてきた。そういうところを通ってきた男だからチャレンジする選手たちのいいアドバイザーになると思う」と語る王会長も、現役時代は人一倍バットを振り続けて世界の本塁打王に輝いた。

 この師弟コンビの厳しさが注入されれば、今年のキャンプは練習量もアップするだろう。

 大物・小久保ヘッドコーチの誕生で、チームに波風が立つことを心配する声もある。

 野手陣が小久保ヘッドコーチに心酔すればするほど、工藤監督との距離感が微妙になるのでは? という指摘である。

 だが、今や名将の地位を手に入れた工藤監督にとって、野手陣を任せても結果として5年連続の日本一を手にできれば大きな問題ではない。王会長も二人の人間性を認めた上で、次のステップに向かおうとしている。

 巨人は阿部慎之助氏、西武は松井稼頭央氏と2軍監督を務める人材が次期リーダーと目されている。

 小久保氏にとっても、ヘッドコーチの経験が将来の監督への試金石となるはずだ。

 ☆(ローマ数字5)5どころか、かつての巨人をしのぐ☆(ローマ数字5)10、☆(ローマ数字5)11へ。ソフトバンクの野望は新たな段階を迎える。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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