目を見張る完成度とマウンド度胸

共同通信

 プロ野球楽天のドラフト1位左腕・早川隆久が、開幕カードとなる日本ハムとの第3戦に先発。6回を4安打8奪三振の好投で、初先発初勝利の快挙をやってのけた。

 本拠地での開幕戦。初戦をエース涌井秀章の好投で白星発進したが、第2戦は当初先発予定だった田中将大が右ふくらはぎの挫傷で登録を抹消される誤算もあって完敗した。

 このカードの勝ち越しがかかる大事なゲームを任されたルーキーは、プレッシャーなどどこ吹く風。日本ハム打線を手玉に取ってその実力を存分に発揮した。

 12球団の新人で白星一番乗りなら、球団にとっても開幕カードの新人勝利は初の記録だ。

 今季から指揮を執る石井一久GM兼監督にすれば、大リーグから復帰した田中の戦列離脱を補う早川の快投は、何よりの心強い材料となったに違いない。

 昨年のドラフトでは、4球団が1位指名した即戦力左腕。キャンプ序盤から評論家諸氏の評価は高く「10勝は間違いなし」と言われていた。

 しかし、オープン戦では打ち込まれる場面も多く、開幕直前の巨人戦では5失点の大乱調で0勝2敗、防御率も5・68と先行きに暗雲が垂れ込めていた。

 そんな不安もわずか1週間の調整と自慢の修正力ではねのけてしまうあたりが、並のルーキーとは違う。

 新人離れした「佇まい」が早川にはある。

 投手、とりわけエースになっていく男にはいくつかの共通点が挙げられる。

 スピードボールや多彩な変化球を制球良く投げ分ける技術力に、打者との駆け引きや危機を回避する自己管理能力だ。

 さらに、長いペナントレースでは調子の悪い日もある。そうした時に技術と精神面をコントロールするのが修正力だ。

 日本ハム戦で象徴的な場面があった。4回、味方の失策と2安打を許して無死満塁。ピンチはさらに続き、野村佑希に粘られてフルカウントとなる。ここで早川は捕手の太田光をマウンドに呼ぶ。

 大一番で、自分の投げたいボールを投げられるかが勝負の鍵になる。

 自ら選択したカットボールが膝元に鋭く曲がり落ちて空振り三振。続く大田泰示には外角のチェンジアップで連続三振を奪って最大の危機を脱した。

 この日の楽天生命パークは、終日雨が降る悪天候。マウンドはぬかるみ難しい状況にあったが、多彩な変化球をコントロール良く投げ分けている。

 すべての球種が高いレベルで操れるので、打者にとっても攻略は難しい。

 野球エリートが圧倒的に多いプロの世界にあって、早川の歩んできた道はちょっぴりユニークだ。

 小学校時代は主にソフトボールに打ち込み、中学も軟式野球出身。強豪の木更津総合高に進学後もしばらくは打撃投手だったという。

 頭角を現した高校2年から急成長を遂げて甲子園でも活躍。高校日本代表メンバーに選ばれるが、当時の同期生である今井達也作新学院高―西武)、藤平尚真(横浜高―楽天)、寺島成輝(履正社高―ヤクルト)の各投手は次々とドラフト1位でプロの世界に飛び込んでいった。そんな中で、早川は早大進学の道を選んだ。

 「自分にはずばぬけた武器がない。プロには行きたいが、今はまだその時期ではない」。

 ここでも高い自己分析能力が発揮されている。東京六大学リーグでの4年間は心身を磨き、大学球界ナンバーワン投手として脚光を浴びた。

 元巨人や大リーグで活躍した上原浩治氏は「俺の新人時代より上」と、3月29日付の日刊スポーツ紙面で早川の非凡な才能を激賞している。

 上原氏の目の付け所は面白い。ピッチングの完成度の高さはもとより、一回から捕手のサインに首を振ってストレート勝負で三振とした度胸の良さ。

 雨でグラウンドの状態が悪くなると、マウンドの整備を要求するメンタルの強さを大物の証としている。

 ちなみに上原氏のプロ1年目は20勝4敗。最多勝利、最優秀防御率、新人王、沢村賞などのタイトルを総なめにした。

 もちろん社交辞令は含まれているのだろうが、その上原氏が「俺より上」と言うのだから早川の前途は洋々である。

 近年のドラフトでは佐々木朗希(ロッテ)や奥川恭伸(ヤクルト)ら、高校生の上位指名が目立ったが、今季は阪神の佐藤輝明ら大学出身者の当たり年になる予感がする。

 早川の快進撃が続くようなら、王者ソフトバンクもうかうかしていられない。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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