実体験漫画『男性恐怖症だった私がAV女優になるまでの話』に反響 元AV女優が性的虐待体験を発信する理由

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 幼少期に義父や実兄から性的虐待を受け、男性恐怖症を抱えていた野々原なずな。それにより不登校、自殺未遂の過去を持ちながら、去年まではAV女優として活動していた。現在は漫画家として自身の半生を綴ったエッセイ漫画『男性恐怖症だった私がAV女優になるまでの話』を連載し、反響を呼んでいる。壮絶な人生を作品化した理由から男性恐怖症克服のきっかけ、家族への現在の思いなどを聞いた。

【実体験漫画】「驚くほど壮絶」父・兄の性的虐待が原因で男性恐怖症に…

■かつては男性がそばにいるだけで鳥肌やめまい… AV女優になった理由は“恐怖”=“興味”?

――『男性恐怖症だった私がAV女優になるまでの話』は、野々原さんの実体験を書き起こしたエッセイマンガなんですよね。読者からは「改めてひどいし辛い」、「底なしの地獄」、「ノンフィクションだということが驚くほど壮絶」といった声も届いていますが、漫画を通して世の中に発信しようと思ったのですか。

幼少期の体験は、元々いつか作品にしたいと思っていたんです。これまでほとんど人に話したことはなかったのですが、やっぱりどこかで消化しきれないモヤモヤがあって…。この頃の記憶は自分にとって辛く苦しいもので、憎しみや恨みみたいな感情も、ずっと心の底に溜まっていました。忘れたいけど、このモヤモヤをどうにかしたい。そんな思いで描き始めました。この作品を残すことは、復讐…という感じですかね。

――ご家族への?

いえ、私を傷つけた人への復讐ではなくて、世間への復讐です。やっぱりあの時、私も幼かったので誰にも言えずにどうしたらいいかもわからなかったんですけど、誰にも気づいてもらえなかったこととか、自分を助けてくれなかった世界に対する憎しみがあって…。それを、吐き出してしまいたかったんです。

それに、男性恐怖症なのにAV女優になったことは、周りにも「なんで?」って言われるし、自分でもずっと「なんでなんだろう」と思ってたので。自分でも理解できない自分の感情を整理したいという気持ちもありました。

――まだ連載中ですが、過去を振り返ってみて、ご自身がAV女優になられた理由は分かりましたか。

“恐怖を抱く”ということは“興味がある”ということなので、男性恐怖症だったことと、AV女優になったことは、多分深いところでつながっているんだと思います。男性恐怖症が一番重かったのは小学校〜中学生の頃で、道を歩く知らない人も、昔はよく遊んでいた幼馴染も、とにかく男性が近くにいると、それだけで鳥肌がたったり、めまいを感じてうずくまったりしてしまう状況でした。それが理由で引きこもりがちになってしまったけれど、そんな自分が自分でも嫌で。男性が怖いという思いがあったからこそ、そんな自分を変えたかったし、昔のこと(性的虐待)もなんでもないことだと思いたかったから…だから、AV女優になったのかなって、今は思っています。

――男性恐怖症について、現在は克服されているのでしょうか。

今は克服しているのかなと思います。高校に進学する時に、人間関係や環境が変わって、いきなり症状が良くなったんです。それから、彼氏もできました。

■「知らない男性との性行為に抵抗がない」男性の性欲を受け入れるだけの行為

――改めて、AV女優になろうと思った当時の心境を教えて下さい。

高校を卒業する頃には、とにかく一刻も早く家から出たかった。お金が必要だったから、風俗でも働いたんです。幼い頃の性的虐待のせいか、もともと知らない人と男性との性行為に抵抗がないんです。他の人が選ばない選択をしようと思ったことは、覚えています。当時の気持ちとしては、好奇心が大きかったような気がしています。

――昨年、引退を決めた理由は何だったのでしょうか。

正直、体力的にしんどいところがありました。身体を壊すことが増えてからは、メンタルも落ち込みやすくなって、悪循環だった。でも、やってよかったとは思っているんです。人間不信気味で、昔から新しい人間関係を作ることが苦手でした。でもAV女優時代には、親身に相談にのってくれる人、困っている時に助けてくれる人と知り合えたんです。それまでは、周りに信頼できる人なんて誰もいなくて。仕事上の付き合いだとしても嬉しかったですね。あと、それまで男性の性欲ってコントロールできないものだと思っていたのですが、できる人がこの世にいると気づけました。

――では、性行為についても今はトラウマはない?

義父や兄に性的な嫌がらせをされた時は、マンガやドラマで見るロマンチックな性行為とは何かが違っていて、幼いながらに違和感や気持ち悪さを感じていたんです。それからずっと、私にとって性行為って良いものでも悪いものでもないんです。恋人相手ならコミュニケーションとして必要だってことも分かるけど、私は男性の性欲を受け入れるだけ。性行為が自分の中で重要なことじゃなくて、やってもやらなくてもいいけど、どちらかといえば面倒くさい。トラウマというか、変なドライさが残ってしまったかもしれません。

■共感する女性、驚く男性に差「身近にいるかもしれない被害者や加害者に気づいて」

――ご自身の気持ちを整理するためにエッセイマンガを描いたとのことでしたが、作品を描くことで、ご家族への気持ちは何か変化しましたか。

義父に対しては、他人なので恨みも怒りもなくて、“無”ですね。兄に対しては、怒りや恨みがないわけではないですが、今こうして大人になって振り返ってみると、兄は義父にずっと暴力や暴言を受けていたので、自分がもし同じ状況だったら普通ではいられなかったのかもしれない、どうしようもなかったのだろうなと。擁護するわけじゃないけれど、完全には責められないと思うようになりました。でももう何年も連絡とってないですし、やっぱりされたことは許せないです。

――当時のことを思い出して作品を描く作業は辛くなかったですか。

マンガを描くという作業の中で、当時のことを思い出したり、義父や兄の気持ちはどうだったのかまでを考えることになって。その時の記憶って、主観的に見たら憎悪的だったんですけど、はじめて当時を客観的に捉えられたんです。でもそれと同時に、長らく胸に閉じ込めていた思いを掘り返してその時の自分に戻る感じがしたり、自分がもしあの時誰かに知らせていたら…義父から兄を助けられていたら…という後悔も沸いてきて、辛かったですね。

――そこまでして作品を描くのは、やはり“復讐心”?

私って、AV女優という特殊な仕事を選んだだけの、ごく普通な人間なんです。何の才能があるわけでもないですが、性被害って大なり小なり本当にありふれていて、自分の友人、知人にも、性的虐待を受けた人、性に対して恐怖がある人ってたくさんいるんですよね。だから、私の過去の話を通して、身近に被害者や加害者がいるかもしれないと思うきっかけになったらいいなと思っています。

――昨春には単行本も発売されましたが、実際の反響はいかがですか。

自分が思ったよりも、反響が大きくてびっくりしています。連載を始めてからは、女性からのDMが増えて。自分も被害者だったとか、共感して泣いてしまったとか、たくさんのメッセージをもらって。やっぱり同じようなことで苦しんでいる女性が、思った以上にたくさんいることを知りましたね。反面、男性からは「こんなことがあるなんて」という驚きの感想を送ってくれる人が多くて、男女差が大きいことが分かったのは興味深かったですね。

――程度の差はあっても、性被害を受けたことのある女性は多い。でも、男性にとっては一部の加害者を除いて、想像を絶する別世界のような話なのかもしれないですね。改めて、野々原さんの作品が多くの人の気づきに繋がることを祈ります。今後描きたい作品、やっていきたいことなどありますか。

自分の半生を描いてしまった今、これ以上面白い作品を描けるのか不安ですが(笑)、元々ほのぼの系やラブコメが好きなので、これからは漫画をひたすら描いていきたいです。あとはセルフコントロールが苦手な人間なので、健康に生きていけたらいいのかなと思っています(笑)。
(取材・文=ミクニシオリ)

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